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20話 王都

お気に入り登録が100件達成しました。

とても、嬉しいです!


拙い作品ですが、今後も読んでいただけるよう、頑張ろうと思います。

これからも、よろしくお願いします。

 それから目的地まで3日、平和…(遠い目)…えぇと、うん、目的地には無事にたどり着くことができた。

 その間に、無知を呆れられながらも、細々とした身の回りのことを色々と教えてもらった。




 最初の日とかに襲ってきた敵が何なのか、とか。

 隊長たちは何をしにどこに向かっているのかとか。

 この世界の地図だとか。


 そういう、面倒なことは全部無視することに決めて、とにかく生活術を覚えました!

 結局のところ、大事なのはそこだよネー?

 魔法使えば、生活が大幅に楽になるし、向こうに居たときより快適に過ごせること請け合い。

 だって、電気代気にせずに、魔法で”エアコン”できるし!

 歩くのに疲れてきたら(凄く早い段階で疲れるんだけど)”重力半分”で、体の重さを半分にしてらくらく歩けちゃうし!

 将来的には、こっそり魔法を使ったクリーニング店でも開いて、地道で穏やかな生活を営めそうです。

 しかしながら現在は、衣食住で恩のある隊長の従者見習いとして、誠心誠意勤めさせていただいているところです。



 2階建て以上の建物がある町、こっちにきてから初めてみた!

 活気のある大きな町に、なんだかわくわくする。


 町の中は人が多すぎるので、馬を降りて引いて歩く。

「大きな町ですねぇ」

「まぁ、王都だしなぁ」

 感嘆の声を漏らしたら、ジェイさんが事も無げに言った。

 ほー! 王都ですか! そしたら、目の前にそびえるお城に王様が居るのですか!!

 もれなく、王子様やお姫様も居るわけですね!

 で、着々とそのお城に近づいている気がするのですが!

 ……もしかして、目的地はそこなんでしょうか。


 なんだか、お城って…平凡とか地道とかの対極にある気がするんですが……。





 ちょこーん…って。


 大きなお部屋に、色々と椅子もあるけれど。

 端っこの小さな丸イスにちんまりと座る。

 わたし以外誰も居ないの、隊長もジェイさんも報告があるからってわたしをとりあえずここに置いて行ってしまってから、既に1時間ばかり経っています。


 おなか、すいたなぁ…。


 外の夕日が目に染みます。

 昨日食べた、トマトと鶏肉の煮込み料理と、ポテトグラタンとポタージュスープが恋しいです。

 あぁ、ご飯の事を考えていたら、どこからかご飯の匂いが……。

 ふらふらと、ドアを開け、その隙間からするりと出る。

 匂いを追って、廊下を進む。

 途中人とすれ違ったけど、誰も咎めないから、このまま行ける所まで行こうと思う。

 


 たどり着いたのは厨房でした!


 厨房のドアの隙間から、じーっと中の様子を見守る。

 あぁ、あの大きな寸胴でスープを作ってるのかなぁ、何のスープなんだろう…。

 あの大量のお芋は…茹でてマッシュポテト? あ、違った、ポテトコロッケかぁ! 揚げたて凄くおいしそう!!

 メインはやっぱりお肉? ローストして大量に切り分けてる。 あ、あっちの鍋でソース? レモン色してるけど、どんな味なんだろう。

「ヨダレ出てるぞ、坊主」

「うひゃっ!!」

 頭上から声がして、慌てて口元を拭う。

 やばっ! 本当にヨダレがこぼれてた!! 恥ずかしいにも程があるっ!!

「わっはっは! いい匂いだろう! 城自慢の食堂だからな!」

 おじさん声大きいネ。

 振り返り、見上げたのは…いや、見上げるほどの大男。

 ごつくて厳つくて筋肉むっきむき。

 見るからに一般人じゃありません的な傷が頬とか腕にあるし。

「食堂?」

「おう、もうそろそろ、飯時だ、坊主も食いにきたんだろう?」

「…お金持ってないんです」

 だから、折角自慢の食堂なのに、堪能できない…。

 悲しくなってショボーンとしたら、大きな手で乱暴に頭を撫でられた。

「お前、誰かの従者なんだろう? そいつに払わせろ! なに、大丈夫だ、俺がちゃんと言ってやるから! ほら、行くぞ!」

 背中を押されて連れて行かれたのは、ドアのあった方の逆側で、あっちは厨房の入り口で食堂ではなかったらしい。

 大男さんは、二人分のトレーを持って、入り口の脇のテーブルを陣取った。


「ありがとうございます! いただきます!」

 両手を合わせてから、ナイフとフォークを持って、食事に挑む。

 あぁぁぁ!! おいしいっ!!

 なんだろうこのスープ! 酸味があって深いコクが…後味もおいしいっ!

 このお肉に掛かってるレモン色のソース、色に反して酸味は無く、辛い! こっちのポテトコロッケは向こうのとおんなじ! でも美味い!!

「いー食いっぷりだ!!」

 大男さんも、同じ勢いで食べてる。

「おいしいですっ!」

「おう! 美味いな!」

 うんうん頷いて、ひたすら食べる。

 お皿についていたソースも、パンで拭って綺麗に食べました!

「ごちそうさまでした」

 両手を合わせて、頭を下げて、大男さんと二人分のトレーを片付けて、お茶を持ってくる。

「どうぞ」

「おっ! すまねぇな」

 席に戻り、お茶を一口啜ってやっと人心地ついた。


「あ、そういえば、ご飯のお金を立て替えてもらったんですよね、申し訳ありません、後で必ずお支払いしますからっ」

 やっとそこ・・に気が回って、慌てる。

「気にすんなって、此処にいりゃ、お前の主人も来るだろうしよ。 そういや、お前の主人って誰なんだ? この城の奴なんだろ?」

 大男さんに聞かれて、少し首を傾げる。

 そういえば、隊長ってこの城の人なんだろうか…、まぁこの国の人ってことは間違いないけど…。

「すみません、わたし、従者見習いになってまだ数日のひよっこな者で、詳しいことはわからないのですが。 多分、こちらに勤めてるのだと思います」

「はぁ? お前、本当に従者か? 自分の主の勤め先もしらねぇって」

 明らかに小ばかにした感じに、萎縮してしまう。

「ご、ご主人様には、旅先で拾っていただいたので……」

「拾う!? 従者にするような人間を拾うだと? 一応聞くが、お前、主人の名前は知ってるんだろうな?」

 ドスのキいた小声で聞かれ、こくこくと頷く。

「はい、隊長…じゃなくてディーさんです」

 泣かない自分に拍手!!

 大男さんは眉間に皺を寄せてぶつぶつと呟く。

「ディー? 従者を持つような人間にディーなんての居たか…。 それに”隊長”…」

「あ!あの、すみません! ちゃんとした名前は”でゅしゅれい”様です」

「……デュシュレイ…」

「わたし、発音がうまくできないので、隊長から”ディー”と呼べと言われていてっ、あだっ!!」

 脳天に落とされた拳骨に、頭を抱える。

「しゃべりすぎだリオウ」

「た、隊長!」

 拳骨の主は隊長だった。

 あ、ジェイさんも一緒だ。

「どこに行ったかと思った! ちゃんと、待合室で待っとけよなぁ」

 ジェイさんに頭をぐりぐりと撫でられる。

「ご、ごめんなさい」

 だって遅いんだもん!

 おなかが空いたんだもん!

 ひもじくて泣きそうだったんだもん!!


 …などと、わたしがジェイさんに目で訴えている間に、隊長と大男さんの挨拶が済んだようだ。

 というか、普通に知り合い同士だったみたい。

 イスから降りて隊長の下へ行く。

「どうした?」

「あのね、ここのご飯のお金、こちらの方に立て替えて頂いたんです」

 だから、払ってくださいね?

 という意味を込めて、隊長の目をじっと見つめる。

 隊長は一瞬絶句したようだったが、素直に財布から小銭を取り出して、大男さんに払ってくれた。

「申し訳ありませんでした、ウチの者が」

「お前が、今更従者を連れるとは思わなかったな」

 大男さんがにやりと笑い、ちらりとわたしを見る。

「まだまだ未熟で、とても人前には出せませんので。 どうぞ、内密に願えますか、コーディ将軍」

 将軍! 将軍というと、軍隊の中のお偉いさんだね!

 どうりで、威風堂々としていると思いましたヨ。

 でも、そんなお偉いさんとは知り合いになりたくないので、わたしはこっそりと隊長の後ろのほうへ移動する。

 お偉いさん=有名人=非日常

「…まぁいいがよ。 で、おめぇの名前は何て言うんだ?」

 隠れたわたしを追いかけるように、ひょいっと覗き込んでくる。

 隊長の面子もあるので、ちゃんとした対応しなければと、ちょっと隊長の影から出て挨拶する。

「リオウと申します。 どうぞよろしくお願いいたします」

 きちっと頭を下げると、わたしの頭を握りつぶせそうな大きな手でぐりぐりと頭を撫でられる。

「ちゃんとしてんじゃねぇか。 リオウな? 珍しい名前だな、どこの国のモンだ?」

 日本です …とは言えないから、どうしようか?

 困って隊長を見上げるが、こっちを見てくれない。

 まったく! 頼りにならんです!

「でゅしゅれい様の下に来たときに故国くには捨てましたので、申し上げることはできません」

「ほう?」

 将軍の目が、剣呑に細められる。

 怖いけど、目を逸らしたら負けだ! ウチの近所に居たあの馬鹿犬にだって、睨み合いで勝ったことのあるわたしを舐めるなよ!

 だけど、隊長の立場もあるので、ガン飛ばすんじゃなくて、静かに見つめるだけにしておいた。

 やや暫くそうして睨みあっていたけど、突然将軍が笑い出した。

「デュシュレイ! お前、随分面白いモン拾ったなぁ!! こりゃぁ、良い!! 故郷くにまで捨てさせたんだ、最後までしっかり面倒みてやれよ」

 将軍は隊長の背中をばしばし叩くと、まだ仕事があるからとやっと行ってくれた。


「…あーぁ。 こりゃ、あれですね、将軍に気に入られちゃいましたね」

「言うな……全く頭が痛い」

 こそこそと話をする二人を見上げる。




 わ、わたしは悪くありませんっ!!

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