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従者のお仕事【書籍化】  作者: こる.


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19話 身体洗浄

 畳み終わった洗濯物を、魔法で消臭した袋の中に入れる。

 これで隊長の服(と、ついでにジェイさんの服も入ってた)はオッケーだけど、わたしの服も洗濯したいなぁ。

 でも、今着ている1着しかない(もと着ていた服は、後々厄介の種になりそうだということで、焼却処分された…orz もったいない!)

 だけど! この服も、隊長の服と似たり寄ったりの汗臭さなのよ!

 髪の毛もゴアゴアだし、お風呂に入りたい!!

 でも、宿屋にはお風呂ついてない!

 お風呂の概念が薄い、旅人はせいぜい濡れタオルで体を拭くぐらいだということを聞いたとき、がっくりきましたヨ。

 しかしです、それに準じるなんて女子高生ではありえませんし。


 ごそごそと、自分の袋を開けて、中から雨避けのごわごわした布を取り出し、タライを床に置く。


 まずはお湯を調達。

 操駆を行い、タライの上に手を掲げ。

「”お湯、設定温度39度”」

 お湯がタライに溜まる。

 手をつけると、丁度いい温度ですヨ。


「本当に、規格外だな」

 呆れたような隊長の声は無視する。

 もうすっかり暗いので、さっさと終わらせて眠りたいです。

 室内にはランプの明かりだけだから、余計に眠気を誘われる。

「ちょっと、カーテン閉めますね」

「カーテン?」

「この服、洗ったりとか・・したいので、閉めます、ランプは貸してください」

 隊長の返事は聞かないで、布を床に置いて操駆し、腰に刺してある折れたナイフで指先を傷つけてその手を布にあてる。

「”カーテン”」

 とは名ばかりです。

 イメージしたのは隊長のベッドからこっち側全体を覆い込む感じ。

 足元までもカバーして、ベッドにも水が飛ばないように覆う。

 手を布につけたまま、靴を脱いで素足で布に触れておく。

 まかり間違って接点が無くなったら、一変に小さくなってしまうので要注意!

 どうやって天井から釣り下がっているのかとかは、良くわからないが、まぁOK。

 注意しながら急いで服を脱ぎ、腰にまいていた長めの布をタライに浸し、それでカラダを洗おうとして、ハタと止まる。

 そうだよね、わたしには魔法があるじゃない!

 

 考えて、タライの中に片足だけ入る。

 あぁ、お湯がキモチイイ。

 操駆して。

「”全身洗浄”」

 汚れ成分がお湯に流れ落ちるのをイメージ。

 

 ザァッ


「う、わぁっ…」

 お湯ごとイメージしちゃったから…ずぶ濡れ…。

 あーぁ、お湯もタライから溢れちゃったし。

 防水力を強化してある布を引き込んでなかったら、下から苦情くるところだったよ。

 大急ぎで、魔法で水を気化する。


「大丈夫かっ!!」

 カーテンの端から、隊長が慌てて入ってきた。


「……」

「…な、な、なっ!!!!」

 言語中枢がパニクッたが、乙女回路の判断で胸を隠し、隊長を凝視。


 隊長は、無言でわたしを一瞥いちべつ後、なにやら小さく頷いて、カーテンの向こうに戻っていった。


「た、た、隊長のえっちー!!!!」

 ランプの明かりしかないって言っても、見えるでしょ!? 見えたでしょう!!

 もうっ! もうっ!!


 大急ぎで洗濯して、乾燥・プレスして、ずぶぬれの自分も乾かして、服を着る。

 タライの水を気化させてその中に乗る。

 わたしと接点が無くなった雨避け布が元の大きさに戻る。

 それを畳んで袋に詰める。

 タライはベッドの横に立てかけておく。


 もう当分、隊長とは口を利かないことにした。


 ベッドに座る隊長を視界に入れないようにしながら、ベッドにもぐりこむ。

 また今日も、服のまま就寝だけど、パジャマなんか無いし…あ、そうか、これも魔法で変えちゃえばいいのか!


 上半身を起こして操駆し、枕元に置いていたナイフを抜いて指に…。

 ナイフを持つ手を掴まれる。

「…邪魔しないでください」

 口を利かないって決意したのに!

「一度目は見逃すが、二度目は無理だ。 もう傷つけるのはやめろ」

 隊長にナイフを取り上げられた。

「別に、自殺、とかじゃないんだからいいじゃないですか!」

「駄目だ」

 隊長はナイフを鞘に戻し、わたしのベッドに座るとわたしの左手を取り、先ほど巨大カーテンを作るのにつけた中指の傷を見つける。

 もう血も止まってるし、触るとほんのちょっと痛いだけ。

 そこをそっと撫でる。

 チリッと痛みが走った気がして、反射で手を引こうとしたけど、隊長の手が強くて。

「…今度は、何をしたかったんだ?」

「……っ」


 パジャマを着たかった、って言ったら笑われるだろうか。

 …っていうか、呆れられること請け合いだよね。

 調子に乗ってた…よね。


 しゅるしゅると威勢がしぼんでゆく。


「…ご、ごめんなさい…」

 子供みたいに調子に乗って、ごめんなさい。

 情けなくって、緩みそうになる涙腺を、気合で押しとどめる。

「…謝らなくていい。 言ってみろ、何をしたかったんだ?」

 頬に手を掛けられ、顔を上げさせられる。

 合った目は、思いのほか優しかった。

 だから、ぽろっと、寝巻きパジャマを作るつもりだったと言ったら、拳骨げんこつを脳天に落とされた。


「いったーいっ!! ちゃんと反省してるのにーっ!」

「馬鹿か! たかがそれだけの為に、体に傷をつけるな!」

「だから、ごめんって言った!」

「二度とくだらないことに魔法を使うな!」

「くだらないって何ですか!」



 どんっどんっ!!


 足を踏み鳴らす音で上の階からクレームが来て、口をつぐむ。

 水を差され冷静になり、ふたりそそくさとそれぞれの布団にもぐりこんだ。

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