表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/108

2話 魔法の使い方

 多分、現在、早朝。

 空気がひんやりしていて、道脇の草には朝露が光っている。

 緑は、いままで目にしたことの無いほど、生き生きと茂っている。


「どこ、ここ?」


 ポツリと零すが、それに答える声は無い。

「委員長?」

 うん、多分委員長が仕掛け人。


「はぁぁぁぁ……」

 軽くめまいがするが、深呼吸してやり過ごす。


 多分だけど、委員長が仕掛け人だとしたら、きっと委員長が迎えにきてくれるだろう。

 手の中の袋に視線を落とす。

 迎えに来るつもりとか無いなら、こんな生きるために必要なモン渡さないだろう…多分。


 中を開くと、非文明的な、皮袋の水筒(獣のどこの部位を使ってるかは、追求しないほうが良いと思う)が2つで1リットルくらい、あと、麻の紐で束ねられてるビーフジャーキー……他乾物数種類。

 なんだかごつごつしてる布1枚、と、ナイフ…。

 ナイフ…ごつくて、実用主義な形状を見るに、これをリアルに活用せよと言われてる気がする。

 そして、本が1冊。

「『誰にでもできる簡易魔法書』へぇ、魔法が使えるんだー」

 ぺらぺらと中身をめくってみる。

 最初1ページに1この魔法が書かれていて、後半になると見開きで1つの魔法、ということは、1ページ目からやっていって、どんどん難しくなるってことか。

 でも、書いてあることはかなり簡単なので。

「えーと、虫除けの魔法? 利き手の手のひらを胸に当て、その後腕を伸ばし手のひらは上に向け、小指から順に指を握りこみ、虫除けスプレー(あるいは防虫剤)で虫がこなくなるのをイメージしながら”虫除け”ととなえる。」

 読みながらやってみた。

 ……特に変化はないみたいだ。

 まぁ早朝で、まだ虫が動き出す時間じゃないないから、もう少ししたら、ヤブ蚊とか出てきそうだし(なんせここは森の中だ)効果の程もわかるだろう。


「次は…」


 こうして、わたしは次々と魔法書に書いてあることを試してみた。


 火をつけるのは、小さな火だったら「ライター」を、大きな火だったら「火炎放射器」をイメージして唱えたり。

 水を出すのもお茶の子歳々ですよ、霧吹き状のものから消防車の放水、もしかしたらナイアガラの滝みたいなのも行けちゃいそうです。

 傷を治すなら「頑張れ白血球」で体内の白血球が頑張っている様子をイメージしてとか…ぶっちゃけ「AED(自動対外式除細動器)」もいける、イメージりょくさえあればなんとか!!

 




 そして、これが一番お気に入りなんだけど。


「ナイフを利き手に持ち、一度胸に当てたあと腕を伸ばし、刃に自らの血を与えて自らとの繋がりをつくる。 その後、(此処が超重要!)自分の欲しい刃物の形を想像しそのイメージをナイフに送る」

 刃物のイメージといえば…やっぱ日本刀かな。

 ぐっと目を細めて、ナイフを見ながら日本刀をイメージする。


「ほぁぁぁぁ!」

 右手には見事な日本刀が握られているわけですね。


 すごいな!魔法って!!

 ただ、この魔法書、実践部分しか書いてなくて、魔法の仕組みなんかは一切書かれてないんだけど、それってどうなの?

 まぁ、パソコンとかも作り方知らなくても使えるし…そういうもんなのかな。


 日本刀をひゅんひゅん振り回し、近くの草をきってみると、面白いくらいよく切れた。

 重さはナイフのままだから、見た目に反してかなり軽い。

 戻すときは、手から離せば勝手に元に戻る。


 便利といえば便利…いろいろ他のものに応用できそうだし、たとえば、お料理するときには「出刃包丁」とか?


 すっかり上りきった太陽を見上げ、いつまでもここで遊んでるわけにもいかないかと思い直す。

「あー、確か、イエ……なんってったっけ、委員長にどっかに行けって言われた気がするんだけど”イ”しか思い出せない…」

 魔法書の魔法で遊ぶので夢中になりすぎて、大事なことが頭から抜け落ちた…。


 まぁ、いいか。

 誰か次に会う人に聞いてみれば。






 その次の人が、とても聞けるような人達で無かったのは、わたしの日ごろの行いが悪かったからではない、と、思いたい。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ