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17話 立場2

「遅かったな」


 どーん


 魔王様が仁王立ち…じゃなくて、隊長が不機嫌を丸出しで、足を組んでベッドに座っていた。

 で、わたしが部屋に入ってドアを閉めると同時に、冒頭の台詞です。

「下にジェイさんが居たので、お茶を一杯いただいてました」

 別に悪いことしてないし!

 なのに、隊長の前に立たされるのは、なぜでしょう?


 小学校のときにいたずらをして、先生にしかられたときを彷彿させます。


「あまり、他の人間と親しくするな」

 えー?

 どうしてですか、と口を挟む前に、隊長が更に口を開く。

「私以外と、あまり話すな」

 なんでー?

 だって、隊長とうまく会話できないし、ジェイさんの方が話しやすいです。

「私の前以外で魔法を使うな」

 どうしてー?

 

「……不満があるようだな」

 ありまくりですよ!

 ハイ!先生!

 の要領で、手を挙げる。

「…なんだ」

「なんで、他の人と親しくしちゃダメなんですか!」

 むっとして聞けば、ため息を吐かれる。

 ……イヤな人ですね。


「リオウは、自分の立場をわかっているのか?」

 おぅ、さらっと名前(本当は違うけど)で呼ばれた!

 ちょっと、照れますねぇ。

 でも、会話の内容は痛い。

「…わかってます、…捕虜、でしょ?」

 さっき下で再確認したばかりです。

「そうだ。 リオウは敵の魔術師だ、だから、魔法を無効化した上でこうして連行している」

 ”敵”の辺りに引っかかりを覚えて、素直に頷けない。

 それに、連行されてるっていう雰囲気でもない。

「だから、やたらに他の人間に接触させるわけにはいかない。 わかったか?」

 納得はできないが、頷いておく。

「じゃぁ、隊長以外と話したらダメっていうのはどうしてですか? ジェイさんとはいいの?」

「”隊長”ではないだろう」

 今、問題にするのはそこですか!

 しかしながら、隊長はふざけて言っているわけじゃなくて、真面目に、名前で呼ぶことを催促しているオーラを発しているのを感じたので、面倒くさいので、言い直す。

「ディー」

「そうだ。 基本的にはジェイともあまり話すな」

「どうして! 横暴ですっ」

 思わず噛み付くわたしに、刺すような視線を送る。

 ひぃっ!

 思わず謝ってしまいそうになるのを、何とか耐える。


「…従者は、男がなるものだ。 体形はごまかせても、声は怪しまれかねん」

 隊長はそう言うと、わたしの腕を引っ張って、組むのをやめた足の上に、ぽんと乗せる。

「この程度(の体格)なら、従者見習いで通る」

 そういって、腕をわたしの腰に回し、頭の上に顎を乗せた。

 …小さくはないよ、普通サイズの女子高生だよ、隊長達が大きすぎるんだよ。

「オンナだってばれちゃうから、声を出すなってことですか?」

「そういうことだ」

 なるほど、それなら、理解できる。

 っていうか、やっぱり隊長はわたしが女だって知ってたわけですね。

 とゆうか! いまだ気づいていないジェイさんがダメダメだと思います。

 まぁ、それはどうでもいいや。

 男ってことにしておかないと、いろいろ問題もあるんだろうし。

 ジェイさんには折を見て話せばいいや。




「魔法を使ったらダメっていうのはどうしてですか?」

 確かに、操駆とか、他の魔術師の人と全然違うみたいだけど、やっぱりそれがまずいのかなぁ。

「魔法を使う従者など居ない」

「……なるほど」

 簡単な理由ですね。


「………」

「………」

 で、いつになったら、離してくれるんだろう。

 汗とか結構かいちゃってるし、お風呂とか入りたいなぁ。

 どっかに銭湯とかないかなぁ…あ、でもお金持ってないから入れないか。


 あれ? お金?


「そういえば、宿代とか、ご飯代とか、ずっと出してもらってますよね?」

「そうだな」

 頭上でうなずかれる。

「ご迷惑ではないんでしょうか…」

「気にするな」

 そうは言うけど、おんぶに抱っこって情けない気が。

 でも、わたしにできることって何だろう。

 魔法? 魔法くらいしか特技ないよね?

 でも立派な特技だよね!

 うん!

 顔を上げて隊長を見上げる。

「あのですね、わたしお金を持ってないのですが」

「知っている」

 そうですか、知ってましたか。

「こうやって、寝床も食事も用意してもらって、凄くありがたいです」

「…そうか」

 わたしが何を言い出すのか、隊長は戸惑っているようだが、わたしの決意を聞いてもらおう。




「だから、わたし、せめて体でお返しします!!」



「ぐっ…!!」

 わたしが決意を宣言すると同時に、隊長は何かが詰まったようにげほげほとむせた。

「だ、大丈夫ですか?」

「…大丈夫だ。 それで、カラダで、と言ったな…」

 腰に回っていた手に力が入り、ぎゅうっと抱き寄せられる。

「はい!」

 元気に返事をすると、こめかみや頬にキスをされた。

 え? な、何? 何かのおまじないですか?

 ちょっとまってください! 決意表明終わってないです!


「あのですね! だから! わたし! 精一杯、従者のお仕事をさせていただきますね!!」


「……な、に?」

「まだまだ未熟者で、至らないところばかりですが、頑張って従者…見習い? しますから!」

 宣言終了!!

 誇らしく、隊長を見上げる。

 わたしがこんな風に、積極的になにかをしようとするなんて、実は初めてだから。

 宣言もしちゃったし、頑張るぞ!!


「……そうか。 頑張れ」

「はいっ!」




 隊長の疲れたようなエールを受けて、わたしは元気に返事をした。

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