98話 決意と別れ
2人で黙々と南瓜プリンを食べています、現在2丼目(単位がおかしい)。
「美味しい! すっごく、美味しい!!」
まるで欠食児童のように、南瓜プリンを掻き込む楓を見て、あぁ、ディーやジェイさんと初めてご飯を食べたときのわたしもこんな感じだったのかなと、感慨深くなりました。
なるほど、これは…あれだ、沢山食べさせたくなるね!
「楓、他にもあるからね!」
一昨日大量に作った角煮をパンに挟んで出し。
冷蔵箱でよく冷やした果物ジュースを出し。
あれやこれやと楓の前を食料で埋める。
「流石にこんなには食べれないわよー」
やっと楓の笑顔が見れました。
居間に移動して、ゆったりとソファーに沈む。
「ホント、美味しかったわー。 イストーラはまだまだ物価とか安定してないし、農地の地力を上げる魔法は掛けたけど、今年の収穫には間に合わなかったから、来年まで食料はかつかつだし」
ため息をつく楓の顔は、さっきのように疲れきったものではなかった。
「なんとかこっちの…イフェストニアとの和平は結べそうだから、食料も融通してもらって餓死とかは回避できるといいんだけどね」
お、おぉう、凄く政治なお話ですね。
とりあえず、頷いておくけど、深い話はよくわかりませんよ!
「反政府勢力…というか、今まで甘い汁をすい続けてきたヤツラの粛清も一通り終わったし」
そう言ったときに、少し顔をしかめたけれど、もう涙は出なかった。
「ゴメンね、良子」
突然謝られてきょとんとしてしまう。
「本当なら私が残るべきなのに……」
小さく唇を噛む楓に笑顔を向ける。
「謝ることなんてないよ? わたしはイフェストニアに来れてよかったと思ってるから」
ディーにも逢えたしね、というセリフは恥ずかしいから言わないけど!
操駆して魔法を掛けた扉の前に2人で立つ。
「こっちに来たいときは、ウチの人間に伝言してね? 指定の日時に迎えにいくから」
「うん。 当分は受験勉強でいっぱいいっぱいだから来れないかも知れないけど」
最初の目標どおり、医学部を目指すんだって。
そして、人体の事を理解してから、こっちに来るんだって。
理解が深いほど効果的に治癒魔法を使えるとのこと。
以前わたしが”がんばれ白血球”で傷を治したことがあったけど、あれは薄皮一枚切れていただけだからだったようで……骨まで達するような、致命的な傷を負った場合や病巣等は詳しい人体の構造を理解していないと治療ができないらしい。
手に掛けた命と同じだけ、救いたいのだと言った。
「本当にありがとう。 良子も困ったことがあったら、すぐに連絡してね! 約束よ」
最後に一度しっかりと抱き合って、楓は扉を抜け、わたしはその扉を解除した。
☆妄想部☆
9月1日18時に今月の活動がUPされます
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