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95話 確認しに行く

 朝、ディーに昼用の軽食を持たせて送り出し、晩御飯の下ごしらえをしてから、ディーに持たせたのと同じ軽食を袋に詰めていざ出陣。



 例の小屋に出て、光学迷彩で姿を隠し、空を飛ぶ。


 昨日の村の上空で速度を落として飛んだら、下で村の人たちが早速湯船を作っていた。

 っていうか、足湯らしきものは既に作られていて、井戸から溢れるお湯を引き込んで、椅子に座ったおばあちゃん達が、のほほんと足をお湯に付けている。

 もしかして昨日あれから作ったんだろうか…。

 凄いバイタリティだなぁ。

 その勢いで、温泉施設も作ってくれるかなぁ。

 もしできたら、ディーと一緒に入りにこよう、うん。



 村の上空を通り過ぎ、その先に続く街道沿いに飛ぶ。

 あんまり低い高度だと顔に虫が当たるから、少々上空を。




 地道に舞空ぶくう…あ、いや、空を飛んで、街道沿いにイストーラに向かう。

 途中関所のような場所もあった気がするが、上空では関係が無い。


 とにかく急いで楓のところに行かなくちゃ。


 逸る気持ちを抑えながら飛んでいると、遠くに王都らしきものが見えてきた。

 大きなお城もあるし、まず間違いないだろう。




 しかし、ですね。


 王都? 王都なのに、なにこの活気の無さ。

 確かに小さな国だから、都の規模もイフェストニアに比べて小さいけれども。

 喪中のごとき暗さ。

 ……まさか、本当に喪中だったりしないよね?

 国中で喪中とかって、やっぱり王様が死……!? い、いやいやいや! 数日前まで元気だったし!


 え、えぇと、あの一角、お城近くの少し高くなった地域にところどころ黒こげがあるんですけど…?

 火事でもあったんだろうか?

 いや、良く見れば焼けてるのは建物の一部だったり、局地的な感じで。

 局地的って…変な火災ですね。


 上空から火災跡を発見して、少々野次馬根性を出していると、王都の外れで巨大な炎の柱が上がって、驚いて墜落するところでしたよ!


 空に向かって渦を巻き立ち上がる炎は、明らかに自然のものではなくて。

 禍々しくも見えるその炎に、ぶわっと鳥肌が立った。



 何かがおきている?

 イストーラに何かが起きていて、だから、楓のところに行けなくて…?

 炎の柱が上がる何か?

 街中が喪中な感じなのも?


 胸がドキドキする。



 とにかく、お城へ行こう、あそこに行けば楓が居るはず、王様だって居るはず。


 光学迷彩は解かないで、上空からお城へ入る。



 お城の中はなんだかガランとしていた。

 最低限の人数の人間だけが仕事をしている感じ。


 お城の至る所にも黒い小火ぼやらしき焦げた跡が残っている。

 なぜこんな所で焦げ跡が?

 それにしても、こんなのもほったらかしなんて……掃除する余裕も無いんだろうか。


 とりあえず、目に付いた火事の跡を魔法で綺麗にしながら、城の中を姿を消したまま宙を飛んで移動する。



 人が来たら天井近くまで飛んで気配を消し、通り過ぎたらまた少し下にさがって城の奥へと向かう。


 王様はやっぱり城の奥の方に居るでしょう?

 …多分。



 うむ、大体ビンゴ?

 目の前にはそれっぽい扉、そしてその前には2人の聖騎士が…。

 廊下の角からこっそり観察してます。

 先程、不用意に近づいたら、気配を察知されて危うく見つかるところでしたから。

 流石王様付きの聖騎士です……あぁ、もうっ。


 

 どうやってあそこに行こう。

 ドアはきっと無理だろうし。

 うぬぬぬ……あ、そうだ。


 廊下の突き当たりにあるバルコニーをそっと開き外に出る。

 そして外から王様の部屋を目指す。

 ふふーん。

 窓の下にも聖騎士の人が立ってはいるが、ばれませんとも。

 王様の部屋のバルコニーに降り立ち、窓から中をうかがう。


 あ、居た。

 ホッと胸を撫で下ろす、とりあえず王様の喪中ではなかったみたいだ。



 王様は大きな机に座って、書類に目を通している。

 机上はあまり散らかってない。

 どっかの誰かに見習って欲しいな…。


 光学迷彩を解いて、ガラス戸をノックする。


 びくっと王様の肩が揺れ、それからこっちを見て、目が大きくなった。

 そんなに驚かなくても……。


 王様は大股でベランダまで来るとガラス戸の鍵を外して中に入れてくれた。


「手紙は、届かなかったのか?」

「手紙?」

 首を傾げると、王様は渋い顔をする。

「ああそうか、イフェストニア王宛てだから、お主は見ておらぬよな。 ならば、何処まで知っておる? カディを止めに参ったのか?」

 楓を止める?

 更に首を傾げるわたしに王様も首を傾げる。

「いえ、楓も学校があるだろうから、いつ向うに帰るのかなと思って。 確認しに来ようとしたら、イストーラにドアが繋がらなかったので、何かあったのかと思って飛んできました。 お城の下の街も活気が無いから、もしかして王様に何かあったのかもと思ったんだけど、お元気そうでほっとしました」

 そう言うと、王様に軽くため息をつかれて疲れたように首を振られた。



 …えぇと? なんですか? その残念そうな顔は。

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