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情報屋shrineの人助け  作者: 目黄葉
第一章
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南家事件【後編】


 絆音(いと)は階段を上がり、目の前にあった部屋から調べることにした。


(子供部屋か、確か一人息子で名前は、南瑠衣(みなみるい)くん。九歳で小学四年生、もうすぐ小学五年生か。特に変わったところは見当たらない、が…)

 その部屋は小学校高学年の男の子らしい部屋があった。一人用のベッドと勉強机、そしておもちゃ箱。

 絆音はなるべく物を動かさないように子供部屋を調べきり、部屋を後にした。


 そして次は向かいにあったトイレと思わしきところを確認した上でその横の扉を開けた。

(ここは水まわり)

 ここも絆音は子供部屋と同じくあまり物を動かさないように調べ、最後の部屋へ。


(子供部屋、水回りときて予想はしていたけど寝室だよね)

 その部屋も絆音はあっさり調べ終え、下の階に降り、先ほども話した佐久間という警官に話しかけた。なぜなら絆音は少なからず佐久間をよく思っているのだ。少なくとも門あたりにいたあの警官よりは。


「あの、お忙しい中申し訳ありません。今お時間ありますか?少しで構いませんので」

「はい。少しでしたら」

 佐久間は絆音の予想通り承諾をしてくれた。まぁ、そういうところも絆音が佐久間に話しかけた理由ではある。

「ありがとうございます。少々確認したいことがありまして」

 絆音は相も変わらず淡々と抑揚のない声で佐久間に問う。

「なんでしょうか」

「まず、夫婦関係はどうだったのでしょう?」

「どう、とは?」

「悪い方の噂などありましたか?」

「あー…それ、はですね、捜査が始ったばかりで同僚からの報告もまだ、なので、申し訳ありませんがお答えすることは難しいかと」

  佐久間は少し言葉をつまらせてからこう言った。

「そうですか、いえ、ありがとうございます。次に、部屋が荒らされていた、ということでしたが何か盗まれたものなどはありますか?」

「それはですね、貴重品は無事でしたが、南正治さんのスマートフォンが無くなっているそうで」

「スマートフォン、ですか。それともう現場を見ても?」

「おそらく構わないと思います。ってこちらこそ先ほどの時間に伝えることを失念しておりましてお時間をかけさせてしまい申し訳なく…」

「いえいえ水本さんが私をよく思わないのは当然のことですのでお気になさらず」


「っ!」

 佐久間は核心を疲れたかのように固まった。


「それでは、ありがとうございました」

 絆音は軽く頭を下げて佐久間の横を通り現場へ向かった。

「なんで、全部わかってるみたいに…」

 という佐久間の呟きは聞こえないふりをして。


  *  *  *


 絆音は少し電話をしてから事件現場であるLDKに足を踏み入れた。流石に遺体はなかったがドラマやアニメとかでよく見る殺人現場…とかではなく泣いている女性を必死に(なだ)める水本の姿があった。

 絆音はそれを気にせず現場を調べはじめた。水本は宥めるのに必死なためもちろん気づいていない。


「ここも特に怪しいところはない、か」

 調べ終えたところで水本に話しかけられた。なお女性は今は佐久間に宥められている。


「なあ?何かわかったか?」

「いえ。特に怪しいところは何も」

(あの一点以外は)

 そう返すと水本はそれ見たことかとばかりに鼻で笑い。

「んじゃあ帰ってもいいぞ。白木さんには俺から言っとくから」

「やはりあなたも、白木さんに振り回されて?」

「……あんたもなのか?」

 絆音と水本は無言で握手をした。謎の絆が生まれたのは言うまでもない。


「いえ、話を戻しますとあちらの女性は南綾さんですよね?」

「あぁ」

「ではその方に話を聞いてもいいですか?何もなければその時こそすぐさま帰りますので」

 そこから水本は少し悩むそぶりを見せたがすぐに

「まあ、いいぞ」

 と返した。

「ご傷心のところ申し訳ありません。津城絆音と申します。二、三聞きたいことがあるのですがよろしいですか?」

「わかり、ました」

 綾は戸惑いながらも答えてくれるようだ。


「まず一つ目。南正治さんにお食事を出したとのことですがそれは何でしたか?」

「なぜ、そのようなことを?」

「これも犯人確保のためです」

 そう返したことにより質問の意図についてはこれ以上問いかけてくることはなかった。

「えっと、昨夜のポトフのあまりと冷凍ご飯ですけれど」

「食材を新しく入れたりは?」

「しましたよ。じゃがいもと、にんじん、あとウインナーを新しく入れました」

 綾はだんだん饒舌(じょうぜつ)に絆音の質問に答えるようになっていた。

(やっぱり)

「ありがとうございました」

 と言って絆音は綾の元を離れ水本がいる方へ歩いて行った。


「おい。黙って聞いてたが今の質問、事件となんか関係あるのか?」

「もちろんです。………水本さん」

「なんだ?」



「犯人が誰かわかりました」



「な!?」

 水本は思わず大声を出した。

「今この場で言っても構いませんか?」

「まあ、構わんが…」

「では、遠慮なく」

 そして絆音は綾の元へ戻り座っている綾に目線を合わせこう言った。と言っても小さ…身長が低いほうなためあまり変わりはしないが。


「犯人はあなたですね。南正治(みなみまさはる)さんの奥さんであり第一発見者である南綾さん」


「…はい?」

「おい。津城。なぜそうなる?この部屋の状況を見る限り強盗に入られた以外、考えられないんだが」

「そう見せかけることが犯人の狙いだと私は考えます。まず、朝起きてきた正治さんに食事を用意すると言って食事の用意をします。そして、その食事にある薬と毒物を混入させたのです」

「そんなの確証も何も」

「一旦私の話を聞いてくださいませんか水本さん、佐久間さんそして、南綾さん」


 絆音は白木の言葉を遮り言った。氷のように固まっている顔が真剣さを帯びたことにより彼女は凄みを増した。

 その顔に気押されたのかはわからないが絆音が先ほどの言葉を聞いた後は水本、佐久間、綾は絆音の言葉を待っているように見えた。


「薬は即効性のある強力な睡眠薬、そしてもう一つはじゃがいもです」

「じゃがいも?……っ!まさか!?」

「おそらくそれであっていると思いますよ。水本さん。さて、綾さん、“じゃがいもの芽には毒がある”そんな常識知らないとは言わせませんよ」

「もしかしたら芽が出ていないように見えて、いれてしまっただけかもしれないじゃない!」

 綾は必死に言い返した。

「そう言うと言うことは“じゃがいもの芽には毒がある“ということは知っていたようですね」

 綾は顔をしかめた。

「じゃがいもに含まれる毒のソラニンはそんな一つや二つ入れただけでは死にません。五十キロの方の場合は一、二キロのソラニンが必要です。また、ソラニンは熱に強く、加熱調理をしたとしてもなくなりませんよ」


「そもそも、殴られていたことはどう説明するのよ!?」

 綾が絆音に必死に言い返した時だった。絆音のスマホから着信音が鳴ったのは。

「はい。津城です。…はい…………はい、なるほど。ありがとうございます」

「何よ?」


 絆音は綾を真っ直ぐと見てこう、言った。

「南正治さんのご遺体から睡眠薬の成分とソラニンが検出されました」


「なっ!?」

「ソラニンは食べてから三十分から一時間ほどで症状が出始めます。ご遺体からそれらが検出されたと言うことは、貴女の料理に混入していたと言う紛れもない事実です。これでも言い逃れしますか?」

「さっきの質問に答えなさいよ!」


「あなたの先ほどの問いに関しては……旦那さんが眠りにつく頃合いを見計らい、頭部を鈍器のようなもので殴った、のでは?」

「待て待て、鈍器なんてどこにあるんだ?強盗の場合は持ち出したとか考えられるが……」

 ちょっと待てと言わんばかりに会話に参加した水本は混乱しているようだ。


「その通りですよ。…ところで水本さん、この部屋から無くなったものは何でしたか?」

「被害者のスマートフォンだったが…」

「スマホ……あっ!まさか、そのスマートフォンが鈍器だった…とか、で、しょうか?」

 佐久間はだんだん声が小さくなっていった。


「佐久間さん。意見を言っていただきありがとうございます。私も、そう睨んでいます」

「のスマホが凶器?だったとしてそれが、何になるのよ。強盗が運び出したのかもしれないじゃない!」


「では、綾さん。今この場で南正治さんへ電話をかけてくださいませんか?」


「え…」

「何かできない理由でも?」

「それ、は」

 綾は何かを言おうとしたようだったが言葉が出ていないようだ。その隙に絆音はこう言った。

「では水本さん、南正治さんへ電話をかけていただけますか?」

「あぁ。わかった」

 水本は自身の携帯を取り出し、綾から聞いたであろう正治の電話番号へ電話をかけた。


 着信音は鳴らなかった。


 その代わりにバイブ音が部屋の中から聞こえた。

「っ!これは…!佐久間!手分けして探すぞ!」

「はい!」

 その結果……

「水本さん!正治さんのものと思われるスマートフォンを見つけました!」

 その言葉を聞いた瞬間、綾は崩れ落ち唇を噛んだ。そして一言、口の隙間から絞り出した。


「仕方、なかったのよ」

「人を殺すことが仕方なかった?」

 絆音は目を細めた。


「息子の教育方針で喧嘩になって、私は瑠衣の将来を思って!」

「そこには息子さんの意思はあったんですか?」

「あるに決まってるじゃない!」

「ならなんで!息子さんは自分の部屋にあるはずのおもちゃで遊んだ形跡がないんですか?」

 絆音にしては珍しく声を張り上げた。

「私はすべての部屋を調べました。もちろん、子供部屋も。そこには一見すると普通の小学生の部屋に見えましたが、私が見たおもちゃには遊ばれた形跡が少ししか見当たりませんでした。それと対照的に勉強机だけは長年使われた形跡がありました」


 絆音は少し震えている声で語りかけるように言った。

「教えてください。あのおもちゃは使われているんですか?」


 綾は少しためらったがため息を一つして発言した。

「使ってない。いいえ、使()()()()()()()に決まっているでしょう。あのバカ夫が私の目を盗んであの子に買ってきたものなのに、使わせるわけないじゃない」


「その代わりに勉強をやらせている、と?」

「やらせているなんて人聞きの悪いことを言わないでくれるかしら」

「私は今日、捜査にかなり遅れてきたのですが、色々あなたたち夫婦のことを調べてきました」

「な、何よ。というかあなた警察なわけ?」

「いいえ」

 絆音は誤魔化すことはしなかった。


「はぁ!?どういうことよ!?それでズカズカ捜査に首突っ込んで?あんたさえいなければ、警察どもを騙せたっていうのに!」

「話を戻しますと、あなた方が夫婦のメッセージアプリの履歴を調べた結果、あなた達離婚しそうになっているじゃないんですか?」

「そうよ。でもそれは!あの夫が不倫をしたからで!」

「そうじゃありませんよね?不倫をしたのはあなたでしょう?」

 絆音は(まく)し立てる。

「違う!」


不倫(それ)の証拠はあります。ですがそれで揉めて親権が正治さんになりそうになったら彼を殺すんですね?」

「それは!そもそもあいつが!」

 絆音が静かにだが、綾に聞こえる声で綾の言葉を遮りこう、言った。


「あなた、自分の息子のためだとかなんとか言ってますが、自分のことしか考えていないじゃないですか」

「はあ??どういうことよ?」

「あなたは捕まります。そうなった場合息子さんは否が応でも“犯罪者の子供”というレッテルを貼られる。もしかしたら仲のいい友達と離れてしまうかもしれない。そんなこと一瞬でも考えましたか?」

「あ…」

 綾の顔から血の気が消えていった。

自分の子供のこと(そんなこと)も考えられない人に子供に勉強を教える、ましてや母親なんて務まるわけがない」

 綾は今になって自分のしたことの大きさに気付いたのか一言も喋らなくなった。


「水本さん。逮捕を」

「あ、あぁ」


「それと、息子さんに最大限配慮してくださいね」


「わかっている。もちろん気をつけている。この事件も、この先に起きる事件にも」

 その言葉を聞き絆音は南家を後にした。


(とりあえず、あの警官調()()()()()

 やるべきことを胸に宿して。








 



 第二話見ていただきありがとうございます!次の話からは物語が進みますので楽しみにしていただけると嬉しいです!

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