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情報屋shrineの人助け  作者: 目黄葉
第一章
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南家事件【前編】


      「犯人は、あなたですね」

                     

 まだまだ息が白く、人の体に突き刺さるほどの寒さのニ月、東京都心から少し離れたところにある住宅街で、人が殺された、ということ以外は普通のLDKに津城絆音(つしろいと)の淡々と抑揚のない声が響いた。


 絆音はこんなことを言っているが探偵でも、もちろん警察でもない。


 ならなんの仕事をしているかと言うと…いや今はどうしてこんな状況に陥ったかを説明しよう。


 それは今日の朝九時を少しすぎたころの出来事、絆音のスマホから無機質な電話のコール音がなった。

 絆音はそれを聞きベッドから身を起こし眠い目を擦り電話の相手を見て、出るか迷った末いつまでも相手が切る気配がないため出ることにした。その間約二十秒以上、コール数で表すと少なくとも六コールは待たせている。


「はい、もしもし津城で」

〈おい!いつも言ってるが早く出てくれよ!俺からの電話がどれだけ重要かわかってるよな?!〉

 四十代後半あたりの男の怒声が絆音の鼓膜を震わせた。

「すみません。白木さん、ですが前テレビで人は大抵六コールくらい待つと切」

〈そういう言い訳はいい。で?本当はなんで六コール以上させたんだ?〉

 淡々と抑揚のない声で言い訳を言う絆音を慣れたようにあしらい、白木と呼ばれた男は呆れを滲ませ聞いた。

 それに対して絆音はそれはもう簡潔に、ひと言で返した。

「寝てました」

〈やっぱりか…じゃあ最初からそれを言え。いや、そんなことより本題に〉

「嫌です」

 絆音は食い気味に白木の言葉を遮った。

〈なんでだ?〉

「私は今日休みます。依頼を受けても今日はしません、と申告したはず、なのですが?」

 絆音は淡々と抑揚のない声を少しだけだが不満を含ませ言った。

〈あぁ、もちろん知っている。申告を受けたのは俺だからな〉

「ではなぜ、仕事の連絡を?まさか…また爆破予告でも届きました?」

 絆音はこれでも全力で話を逸らそうと頑張っているのだが抵抗虚しく話を進められてしまった。

〈いや、今回は普通の事件だ〉

「普通の事件とはなんでしょう?まあ、それはいいとしてそれを手伝ってほしいと?」

〈あぁ、そこまでわかっているのなら話が早い。強盗殺人の疑いがある事件なんだが捜査現場に顔出して犯人捕まえてきてくれ。そこの担当者には連絡しておくから頼んだぞ⭐︎〉

「あの私はまだ了承す」

 ブツッ


 そこから絆音はため息を一つつき、小さく呟いた。

「切られた……今日は家でゴロゴロするはずだったのに…あとおじさんの星はいらないですよ」

 ということがあり絆音は殺人事件に自ら首を突っこんたのではなく、突っ込まされることになるのだった。


  *  *  *


 警視庁の廊下を誰がみてもわかるほど苛ついて歩いている男がいた。その男の名前は水本誠一(みずもとせいいち)という三十代後半あたりの男だった。


 水本が苛ついている原因は何を隠そう白木という名の彼の元上司だった。


 数分前…水本は事件現場に向かう途中だったのだが、突然白木から電話がかかってきた。水本は一瞬出るか迷った───白木は少し苦手なタイプだからだ───が、一応は元上司なので電話には出た。


 その元上司は数年前にどこかに異動になってそれから何も音沙汰がなかったのだが普通に電話が来たことに水本は”なぜ今、このタイミングなのか”という疑問を抱いた。


「もしもし。水本です」

〈よかった…こっちは六コール以上されなかった〉

「久しぶりに連絡がきたと思えばなんの話で?」

〈いや、こっちの話だ。それで本題に入るがお前これから現場だよな?〉

「はい、そうですけど」

〈その現場って九時ぐらいに“買い物から帰ってきたら夫が倒れている。息がないみたい。部屋も荒らされている。”って通報があったやつだよな?〉

「はい」

〈んじゃあその事件に協力者派遣するからよろしくな〜〉

「はい?!今なんて?」

 水本は耳を疑った。そんなことはアニメや漫画ではあるもののそれは二次元の話であって現実にはありえないからだ。

 また、水本はなぜ白木が今、このタイミングで電話をかけてきたのか、などという疑問は吹っ飛んでいた。


〈だから、その現場に協力者を派遣す〉

「聞こえてます!」

〈そうなのか?んじゃもういいな!ってことでよろしくな⭐︎〉

「そういうことじゃな」

 ブツッ

(切りやがって…!あんのっお気楽上司……!)

 水本は携帯を憎たらしげに見つめながら愚痴を口に出すのを我慢し、携帯を持つ手に怒りのまま力を加えた。


 それもそのはず、たとえ協力者を派遣するとしてもそれは捜査一課水本班の班長である水本にとって“お前では解決できない”と言われているようなものだ。それ即ち…侮辱。

 水本がまだ見ぬ協力者のことをよく思わないのは必然のことであった。


 水本が事件現場である南家についたのはそれから車で三十分ほどたった時だった。

 家の中に入り先に捜査を始めていた部下に話を聞こうとしていたときだった。


「なんで!なんであの人が!こんなことになるのなら、一緒に行けばよかったのに!」


 という女性の大きめのヒステリックな泣き声が聞こえてきたので水本はそちらへ向かった。

 その女性はLDKのDの部分に当たるダイニングの椅子に座っていた。それを水本の部下が(なだ)めようとしているがうまくいっていないのは明らかだ。


「失礼」

 水本は部下にアイコンタクトをし捜査に戻らせながらその女性に話を聞いた。

「第一発見者で被害者の奥様である南綾(みなみあや)さんで間違いはありませんね?」

「はい。そうです…貴方は?」

 綾はズビッと鼻をならしながら水本に問い返した。

「この事件の責任者を務めさせていただきます。水本です」

 そう言いながら水本は警察手帳を綾に見せた。

「心を痛めていらっしゃる中大変申し訳ないのですが、被害者の南正治(みなみまさはる)さんを見つけた時の状況と最後に会った時のことを教えていただけますか?」


 綾はこくりと一つ頷き話し始めた。

 そしてそれをまとめるとこうなる。

 綾は息子の瑠衣を送り出し、スーパーへ買い物へ行こうとしていた。だが、今日は休みの夫、正治が起きてきたので食事を出し、それから家へ帰ってきたらこの有様だったと。


「最後に正治さんを見たとき何か気になる動きなどしていませんでしたか?」

「いえ…特には。申し訳ないのですが少々一人にさせていただいても?」

「わかりました。それではまたお話を聞きに来るかもしれませんが、ご了承ください」

「はい…」


 そこから水本は綾の元を離れ部下にわかっていることを聞いた。

「佐久間!わかったこと、教えてくれ」

「はい!まず、被害者の正治さんですが、詳しいことはもう少し調べねばなりませんが、頭部を強く打って亡くなった、撲殺の可能性が高いということで」

「撲殺か」

 水本は目を細めどういう経緯でそうなったのかに思考を巡らせた。

「部屋の様子も見て察するに空き巣に入られ、その後空き巣と揉み合いになりなんらかの理由で頭を強く打ったことにより死亡した…ということでしょうか?」

「状況からみてそうなるな…ってことでこの近所の店や家に防犯カメラが設置されていないか、そしてあるのであれば見せてもらえないかを確認してきてくれ」

「承知しました!そのように手配しておきます」


 そこからまた初動捜査をしていたりしていると十時半に差し掛かった。水本が協力者のことなど頭から抜けていた頃のこと、ソイツは、現れた。

 水本は部下の佐久間から、外に協力者を名乗る人が来ていることを知り、協力者のことを思い出した。いや、水本の心情を考えると思い出してしまったが正しいかもしれない。


「それで?どうします?」

「悪い。実は協力者来るって言ってたんだがすっかり伝えるのを忘れていてな」

「え!?協力者ですか?なんででしょう?もうすることなんて、特にないのでは?」

「だから、俺から話してくる」

「わ、わかりました」

 水本は憂鬱な気持ちで、外に出た。そしてその協力者を見て目を見張った。イメージと全く違う人が来たからだ。

 そこにいたのは、猫のように大きい目、腰ほどまでのびているカラスの羽のように黒い髪、水本の身長よりも明らかに低い身長、言葉を選ばずに言うと明らかに中高生に見え、その顔がこの季節のせいか氷のように固まっている無表情な女子だったからだ。


「だから今この家には入れないんだって……というかお嬢さん今日学校は?」

「ですから、私は協力者としてこの家に来ました。何も言われていないのでしたら上司を出してください。そして何度も言いますが私は学生ではなく、れっきとした社会人です」

 童顔な無表情な女子は淡々と抑揚のない声でそう返した。

 そして水本は先ほどのこの女子の社会人だという一言に驚きつつそれを顔に出さぬように気をつけながらその女子に話しかけた。

「あー。俺がその上司、なんだが、ちょっと話いいか?」

「はい」

 そうして水本は南家の裏で協力者と話をすることになった。


  *  *  * 


 さて、絆音はというと、無表情の氷の下で少し苛ついていた。なぜなら、規制線の前で待機していた警官に止まられたり、その警官にお嬢さん、お嬢さんと連呼されたからである。


(あの警官絶対調()()()

「ところであなたのことはなんと呼べば?」

「俺は、水本誠一だ。好きに呼べ」

「では、水本さんと呼ばせていただきます」

「おお、あなたのことはなんて呼べばいいんだ?」

「私は、津城絆音です。お見知り置きを。では私は何をすれば良いのでしょうか?犯人を捕まえてきてくれ、と頼まれたのですが」

「俺は知らん。協力者が来るということしか伝えられてないからな。それと、もう初動捜査が始まっているからあんたが、できることは少ないと思うぜ」


 絆音はまた白木に怒りを覚えたがそれをグッと飲み込みこう答えた。


「なるほど…では初動捜査の邪魔は致しませんので家の中を調べても?」

「邪魔はするなよ」

「もちろんです」

 そう言って水本は南家に入ろうと絆音に背を向けた。そして絆音はその背中に向かって何かを思い出したかのようにこう、聞いた。


「…いえ、申し訳ないのですが、少しの間部下を一人貸していただけませんか?捜査情報を聞くだけですので」

「わかったわかった。それだけだぞ」

 そして水本は南家へ入って行った。

「はい」

 そこから絆音は長い髪を衛生帽子に包み、マスクと手袋をつけて南家へ入った。

 そして一番近くにいた警官に捜査情報を聞いた。佐久間と言うらしい。


「撲殺?その傷は確認されているんですか?」

「はい。左側頭部に傷が確認されています。そして多くは出血していなかったもののそこそこの血の量が流れたと推察されています」

「なるほど…事件現場はまだ立ち入るのは難しいですか?」

「そう、ですね。まだ難しいかと……」

「では、上の階は立ち入ってもよろしいですか?」

「はい。もうニ階の捜査はあらかた終わりましたのでいいですよ」

「それでは、お時間とらせてしまい申し訳ございません。お話ありがとうございました」

「はい。こちらこそ」


 こうして絆音はあまり気乗りはしないものの南家の事件を解決すべく二階へ(おもむ)いたのだった。









 第一話目読んでいただきありがとうございます!

 初投稿のものになるので至らぬ点が多いとは思いますが、温かい目で見ていただけると嬉しいです。

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