7 夢心地
目を覚ますと、やはりそこは草原だった。
いつの間にか日は南にあった。霧も晴れて快晴だ。
僕は違和感を覚えた。
汗をかいていない。
いつもよりも太陽の位置が下にある。
9月中旬だが、まだまだ30度を超える日が続き、真っ昼間に少しでも外に出ようものなら汗だくになるはずだ。
ここは、もしかしたら日本ではないのかもしれない。
だとしても、僕にはどうでも良いことだ。
今の僕にはこの過ごしやすさがありがたい。
さて、何をしようか。
僕はむくりと起き上がる。
少し息が上がる。
うん、ちょっと疲れたしこのままでいよう。
僕は特に何もしないことにした。
そよそよとふく風が気持ちいい。
木々や草の清々しい空気に癒される。
ここは山の中腹にあるようで、四方を山に囲まれていた。
目の前にある山の同じく中腹くらいの草原に白い米粒のようなものが現れる。時折聞こえる鳴き声から羊の群れと分かる。よくみれば羊の群れに少年と犬いた。牧草を食べさせるために連れてきたのだろう。
生業だろう。とはいえ、小さいうちから仕事なんて大変だ。
いや、僕だってあのくらいの年は毎日学校行って大変だった。拘束時間だって長かった。
そうこう考えていると、背後から羊の鳴き声がした。
振り返るのもだるくて気にせずいると、生臭い獣の匂いがした。
羊が草を噛み潰す音がごく間近でする。うでに生暖かい風、鼻息だろうーがあたる。
僕は身動ぎもせず、ただ座っていた。
ぬっと、しわくちゃの顔が現れる。
何かを喋っている。英語に似ていると思うも、知っている単語はない。
僕が瞬きをしたのを見て、爺さんはまた何かを言いう。僕の反応がないのを見てか、僕の傍を離れ、羊を引き連れて行く。
この爺さんも羊飼いらしい。
僕はそれを振り返ることもなく、ただ座っていた。