12 B
Bは体に布を巻き付け、服のようにしていた。
肌は少々黒ずんでいる。
僕はBを無言で見た。
声を出すのが億劫なのと、特に何も言うことがなかったからなのだが、Bはたじろいでいた。
「……悪かったよ。だけど、どうして良いかわからなかったんだ」
Bも、謝ることがあるんだな。
僕みたいな奴にも謝れるのか。
案外悪い奴ではなかったのかもしれない。
それにしても、Bは何に関して謝っているのか。
Bが僕に謝るようなことがあったか。
首をかしげていると、Bが地団駄をふんだ。
「あーー!だから、巻き込んで悪かった、ってことだよ!それに、こっちに来てからも、悪かったよ」
僕は、まじまじとBを見た。
薄汚れているが、目に淀みがなく、生気がある。
「望みは叶ったのか?」
思ったことが口からこぼれ出た。
久々に出した声のため、掠れて不明瞭だったが、Bには伝わったらしい。
少し驚き、そしてはにかんだように笑んだ。
「結構、ハードゲームだけど、悪くないよ」
それは良かった。
僕は頷いた。学校にいた時にあった陰鬱な雰囲気はもうない。
肌はほんのりと日に焼け、肌艶も悪くない。日々何かしら活動しているのだろう。健康的だ。
「そういう小林はどうなんだよ。こっちきてどうしてた?」
「何も」
Bか友達に気軽に話すような感じで言うのでつい返事をしてしまう。
「町には行っただろ?」
僕は首を横に振る。
「山は下りただろ?」
僕は首を横に振る。
「あー、すぐそこの小屋あたりまでは行ったよな?」
僕は首を横に振った。
Bは頭を押さえる。
「なんだ?つまりはまさか、ずっとこの周辺にいたと?」
僕は頷いた。
「おっまえ、それ、人生絶対損してるから!」
Bの剣幕に僕は首を傾げた。




