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令嬢と家出娘

作者: 御伽人

 

  『令嬢と家出娘』  


私は退屈していた。令嬢みたいな立場だ。セレブとかお嬢様とか言う言葉よりも、令嬢って言う響きの方が私は好んでいる。

18才になり、学校は、一旦は、卒業する事になった。大学はエスカレート式で進学できる。私は、恋に飽きていた。

 綺麗な人だと言われる。中身はそうじゃないのにね。いつも、つまらないデートをして、ただ夢中になれればいい。ただ身体に熱を伝えあい、醒めていくのを繰り返ししている。

 「屋敷」の近くに「死人」がいた。危うく車で轢いてしまう所だった。一人の少女が豆を食べながら、倒れている。寝ているようだ。

 とりあえず車庫入れしてから、少女を助けに行った。救急車を呼ぼうと思ったら、自力で起きた。

「あなたは?」

「鳩山佳奈子です。わざわざすみません」

「家の病院があるから、そこで診察してもらおうか?」

「いえ。お腹がすき過ぎて、最後にあったのが、この豆で」

間抜けな奴だなと思いながらも、久しぶりに面白くなりそうだ。

「黒豆をさずけよう。私の部屋で飯でも食べたら?腹減っているんでしょう?ステーキを食べさせてあげるよ」

「いえ。そこまで迷惑はかけられませんから」

「大丈夫。とにかく話を聞こう。もう少しで轢きそうになったからさ」

「それはすみません」

ようやく、シャワーを浴びさせていた。とにかく、私と背格好が割りと合うため、新着のブランド服を着せてやる事にした。私はスーパーとかの服でもいいんだけど、彼氏が買ってくれる。

「わあ、ありがとー」

何とか言ったりはするが。煙草を吸ったりする。執事が吸う煙草を一服吸わしてもらう。一応未成年だという事が決まりごとだ。その割には、一人で動いている時、煙草を吸っている。学校に話を通して駐車場を借りている。

 私はそんな日々から抜け出したいなと思っている。

 少女は服を着せると中々いい顔をしている。アイドルみたいな奴だなって思った。

「どうだい。私の服は?」

「凄い滑らかです」

「あげてやるよ。どうせ服もあまり持ってきていないんだろう?」

「そうですけど……明らかにブランド物ですよね」

「貢いでくれただけ。彼氏のプレゼントだよ」

「彼氏いるんですね」

「どういう意味だ」

「いや。男っぽい話の仕方をするので。綺麗な人ですけど、男が逆に近寄りがたいかなと思って。ホテルの一室みたいですね」

「そうか?まあ、ひねくれているから。素直なのは、一人で漫画読んでいる時だけだよ」

そして、私の「恋人」からステーキとパンを持ってきた。

「チップはないけど」

「あはは。失礼します」

そう言って、「恋人」を追い立てて、ドアを閉めた。鍵は私と「恋人」だけが持っていた。

「早く食べなよ。豆よりは美味しいと思うよ」

「本当にいいんですか?」

「私はお腹一杯だから。Marilyn Manson でもかけようかな」

「あ、私、知っています。身内にファンがいますから」

「そうなの?初めて書いた英単語がMarilyn Manson だったから」

「変わっていますね」

「まあ、歴代の彼氏には秘密にしているから。見た目に合わせた振る舞いをする事が大切だからね」

「でも、大人ですね。まるで私の姉のような感じの人だと思って」

「私が、君の姉みたいだって。一遍会ってみたい」

「……実は姉を探しているんですよ」

「そうなの。私の姉は盗聴が趣味だから、電話番号分かる?」

「え?いえ。そこまでは。厚かましい私でも頼めません」

「いいんだって。姉も暇だし。盗聴できたら、居場所を掴めるんじゃないかな」

「手がかりはここら辺に住んでいるだけです」

「鳩山何て人?」

「佳奈と言います」

「分かった。しばらくは、学校は休みでしょう?」

「ええ。そうですけど」

「ここで暮らしな。多分、この先こんな暮らしはできないわよ」

「それは、本音はありがたいですけど」

「私の姉に頼んですぐに見つかると思うよ。三日あれば割れると思う」

そして、三日間の共同生活は始まった。場所はある程度は特定していて、姉は

「楽勝」

と言っていた。「恋人」の車で片っ端に盗聴している。その前にまともに探せるけど、私は暇つぶしをしたかった。

でも、まあ、世間話を聞いて、私も一人暮らしでもしてみようかななんて思った。60を過ぎた恋人が、絶対私をこの「屋敷」に住まわすのだろうけど。

 車でドライブしようか。そう言って、車で高速を走ったり、一緒に服をスーパーで買いに行ったり。そして、最高級の寿司屋に行ったりしながら、ドライブを一日目していた。大分緊張がほぐれたようだ。まだ彼氏はいないらしい。

「その内できるよ。久しぶりにスーパーで服買えた。すぐに捨てられそうだけど」

そう言って、煙草を吸いながら、ずっと走っていた。そして、家に帰り、そして、風呂や歯を綺麗にしてから、違う部屋を用意して寝た。

 そして、朝から手打ちのうどんを食べた。香川で一番美味しい店を買い取って、料理を作ってもらう事になった。どうやら、父親が、うどんが好きらしい。朝と夜を食べている。私に似てひねくれた一面があるが、上手く仕事では隠しているらしい。

 娘の婿が跡継ぎに指名していて、しばらくは、仕事上の跡継ぎを任せられるまでになったらしい。「恋人」がそう言っていた。

「私は結婚しないよ」

「世間体が」

「まあ、結婚してもいいけどさ」

家出少女は、友人と言う事にしている。アイドルになればいいのにとまた思った。

 少女は部屋を見てため息をついている。

「美味しいうどんですね」

「まあ、父親が好むくらいだからね」

「部屋も私の家より広いですよ」

「一応『ご令嬢』の家だからね」

そう言って、イチゴのショートケーキをうどんの後に出した。一切れ食べてみなよ。

「美味い。最高でした」

そう言って食後にしばらく私たちは会話をした。二人では弄んでしまうくらいだと思う。我ながら広い部屋だ。

「姉さんにあえたら、どうするの?」

「……きっと、家族とはそりが合わないから、きっと大学生活を終えたら、通訳になるために、海外に行くと思うんです。もう葬式にも出ないつもりなんだと思います。だから、せめて一言言っておきたくて。『頑張って』と」

「そっか。告げれるといいね」

「はい」

そうして、盗聴するまでも無く、アパートを見つけ出した。送り迎えしようと思い、エンジンを停めて、二人の再会を果たすことができた少女のために、煙草を吸っている事にした。姉は「私が見つけたようなものだから」そう言っていた。私は素直な振りをして、感謝してみた。「それはどーも」と。

「じゃあ、ここで待っている」

「分かりました。行ってきます」

そして、私の姉は傍受しているが、私は、飽きずに Mansonの曲を聴いている。きっと、「死人」はまた大人になり、この別れも命が消えていくのと同じように儚く思い出になるのだろう。

 そして、携帯にメールが入った。

「もう明日で帰ります。姉と会いませんか?」

「いいよ」

そう言って、車のエンジンを停めた。初めてアパートの室内に入る事になった。

引越しの準備は終わったようだ。要らないものが全く無い入居前の部屋みたいだ。そして、少女を大人にしたような女が立っていた。

「初めまして。鳩山佳奈と言います。わざわざ泊めてもらい感謝しています」

「別に大した事じゃないですが。まあ、楽しめましたよ。日常から離れた場所にお邪魔できて光栄です」

相変わらず、ふざけた事を言ってみた。同じような性格らしい。

「こちらこそ光栄です。『ご令嬢』」

そうして、インスタントコーヒーを飲みながら、三人で話をしていた。そして、後は二人に任して、車に戻った。

 そして、家出少女の姉を、空港まで見送りをする事にした。今日がフライトの夜らしい。間に合って良かった。私もまだ甘ったるい部分があるもんだなと思った。

 そして、空港には車で送ってやった。夕方で彼氏は先にフライトしたようだ。事情でも話していたのだろうか。

「元気でね」いつか会えるだろう。そんな微かな期待の言葉をかけていた。その為に家出したのだから。

「ありがとう。すみません。ちょーしに乗って車で送ってもらって。本音は助かりましたけど」

「まあ、間に合って良かったと思っていますけど……妹さんも目的を果たしたし、良かったんじゃないですか」

そう言って二人で見送った。まるで「長女」を見送るように。

 そして、家に帰った。

「私も今日で帰ります。姉から旅費を貰えましたので」

「そう。淋しいね。まあ、楽しい学校生活を送りなよ」

「はい」

そして、ブランドの肉をステーキで食べて、そして、二人で夜更けまで話していた。気の効いた台詞はいらない。メールの交換もしたけど、それを替えたら、アドレスを教えない。だから、来たければ、玄関まで来てくれればいい。客人として扱うだろうから。

 そして、始発の列車に間に合うように早めに出掛けた。

「何時でも来ればいいよ」

「ありがとうございました」

過去形だから、会う気はないだろうなと思った。お互い接点がなくなった。離れるのが必須だろうから、あえて引きとめはしないし、追いかけようとも思わない。

 そうして、駅まで見送った。

「ありがとうございました」

それが二人の最後の言葉になるだろうと思った。ブランド品の服はプレゼントしてやった。また彼氏が服を買ってくれそうだし。

 「妹」の姉さんに同じ空気を感じた。また明日から退屈するな。そんな気がした。


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