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速水翔太

速水翔太 25歳。小さい頃はモータースポーツの世界で神童と言われ、それなりにちやほやされてきた。車と対話をしながらサーッキットを駆け抜け、表彰台に上がるその瞬間が、何よりも嬉しかった。俺はこの世界でトップになる、トップになれると、本気で思っていた。


自信が慢心を呼んだのか、はたまた単に実力の問題か、俺はだんだんと表彰台に上がれなくなった。タイムが停滞し、同年代が速くなっていく中で自分だけ何も変わらず、順位は落ちていった。高校を卒業する頃には、夢を諦めるのには十分すぎるほどの才能のなさを感じていた。


高校を卒業した俺は、警察官になった。過去の経歴があったからだろうか。交番勤務を2年した後、俺は最年少で交通機動隊に配属された。


交通機動隊に配属された俺は、久々に車と向き合うことになった。だが、以前のように表彰台を目指してアクセルを踏むわけではない。スピードを追い求める若者たちを止めるために、彼らの前に立ちふさがるのが俺の仕事だった。


初めは違和感しかなかった。昔の俺を思い出すような目をした連中を相手にするのは、皮肉そのものだったからだ。それでも、覆面パトカーに乗り、任務をこなすたびに、自分がこの場所で役に立てている気がしてきた。運転技術は無駄じゃなかった。あの頃の経験も、意味のないものじゃなかった。そう思えるようになっていた。


「速水、やったな。今月も検挙数トップだ。」


いつも一緒に仕事をしている秋山先輩からそう言われるのが、少しだけ嬉しかった。俺の技術が現場で少しずつ認められてきた証拠だと思った。




交通機動隊に配属されて2年が経った頃だった。ある日、上司に呼び出され、俺と秋山先輩は警視庁本部にある会議室に足を運んだ。交通機動隊の拠点ではない、見たこともない部屋だった。壁は無機質で窓もなく、そこに座る人々の表情はどこか緊張感を帯びていた。


「秋山慎司君と速水翔太君だね?」 声をかけてきたのは、50代くらいの精悍な顔つきの男性だった。彼は自らが警察庁の人間であると明かした。


「君達の名前はよく耳にするよ。首都高での取り締まり、先月だけで20件以上の違反車両を検挙している。しかも、その大半がスピード違反。特に速水君のドライビングスキルと判断力には目を見張るものがある。」


男の言葉に、俺は素直に驚いた。こんな風に褒められることは滅多にない。


「ありがとうございます。」


俺の言葉など聞こえてないかのように、彼は話を続けた。


「近年、高速道路でのスピード違反者が増加しているのは知っているね。しかも"悪質"な。」


俺には心当たりがあった。数か月前から、パトカーの制止を振り切って、逃走する連中が増えていた。何人かは追いついてとっ捕まえたが、逃げられてしまったやつらも何人かいる。


「その様子だと、2人とも心当たりがあるようだね。そう。そこで我々は、そいつらに対抗するために新たな部隊を作ることにした。」


「新たな部隊......?」


先輩もよくわかっていないようだ。


男は少し笑みを浮かべた。 「正式には『特別交通機動隊』という名称だ。我々はXと呼んでいるがね。これまでのやり方では対応しきれない状況に立ち向かうため、選りすぐりのメンバーを集める。そして、君達にはそこで特別任務を担ってほしい。」


俺は驚きのあまり、言葉を失った。


「我々が……?」


「そうだ。速水君の運転技術と秋山君の判断力が必要なんだ。」

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