表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

59/66

第58話 開戦

 僕は、従者たちと別れスラム街の中を歩いていた。あの路地を曲がれば、少し開けた場所がある。そこに、あいつがいるはずだ。


 路地の切れ目に到着し、一度足を止める。

 あいつと相対すれば、戦いは避けられないだろう。でも、僕がやらないといけないことだ。


「……行こう」


 僕は、もう一度深呼吸してから、足を一歩踏み出した。


 路地の先には、赤い髪のポニーテールの男が待ち構えていた。鞘に入れた刀を肩にのせ、トントンと叩いている。そして、僕の顔を見てニヤリと微笑んだ。


「やぁやぁ、やっと来たでござるか。スキル無し」


「時間通りのはずですが?」


 スラム街の広場で、マーダスと相対する。周りには誰もいない。ディセたちに頼んで住民たちには避難してもらっていた。

 だから、これから僕たちが争っても巻き添えは防げるはずだ。


「それにしても、まんまと釣られて、ここまで来てくれるとは、ありがたいことです。罠だとは考えなかったんですか?」


 僕は、あえて挑発するような言葉を発する。どうせ戦いは避けられないのだから覚悟を決めろ、そう自分に言い聞かせていた。


 僕とあいつの距離はまだ数メートル離れている。あいつの間合いの外から、警戒を解かないようにして、相手の回答を待つ。


「これのことでござるか?」


 マーダスが手紙を取り出す。そこには、〈果し状〉と書かれていた。


「先週、愚妹がこれを持ってきたでござる。そなたからの決闘の申し出だと言って」


「そうです。わざわざ倒されに来てくれて、ありがとうございます」


「ははは!これは面白い!拙者がそなたなんぞに負けるとでも?」


「すぐにわかります」


「では、さっそくやろうか」


 マーダスは言いながら刀を鞘から抜き、鞘を腰に差し込む。すると、音も立てず、手紙はいつのまにかバラバラになっていた。パラパラと手紙だったものが宙に舞う。


「……」


「剣筋も見えなくて驚いたようでござるな?そんな調子で拙者と戦えるのでござるか?」


 図星だった。僕の目では、あいつの剣筋は追い切れなかった。

 しかし、動揺はない。今の実力では、勝てないなんて分かりきっていたからだ。


「僕が勝ったら、ギフト授与式には何も言わずに欠席してください」


「拙者が勝ったら、そなたを斬り刻んだ後、そなたの大事な者たちも斬り刻む。もちろん、拙者の愚妹も返していただく。邪魔をするならピアーチェスも斬る」


 マーダスが邪悪な笑顔を向けながら、僕の覚悟を後押しするようなことを言ってくる。


「そんなことはさせません」


「だが、果し状には、好きにしろと書いてあったでござろう?」


「おまえが勝てたらな。マーダス・ボルケルノ」


「あまり調子に乗るなよ。ジュナリュシア・キーブレス」


 ニヤついた顔が暗くなるのを合図に僕は駆け出した。

 スラム街の中の用意していた1つ目の家に入り、眠っている騎士の腕に触れ、彼の技能を奪った。身体が軽く、早くなる。そして、彼の剣を手に取った。

 建物から出る。


 ガキン!マーダスの刀が音もなく迫っていたが、難なく察知し、それを弾き返した。僕は身体をひるがえして、軽いステップを踏みながらマーダスと距離を取る。


 ニヤついていたマーダスは、僕の動きを見て、笑うのをやめた。


「なんだ?その構えは?」


 僕は2本の短剣を逆手に構え、腰を低く落としていたのだ。


「ふぅー……それが自慢の剣筋ですか?」


「……付け焼き刃で拙者に勝てるとでも?」


「やればわかる」


「……舐めるなよ」


 怒りにも似た暗い声を出したあと、マーダスが一直線に斬り込んできた。速い。でも、今はあいつの剣が手に取るように見える。


 左上段からの剣戟、僕はそれを左の短剣で受け止め、それと同時に右の剣であいつの首元を狙った。


「くっ!?」


 マーダスが後ろに飛びのき、距離をとる。あいつの首元からは赤い血が流れていた。浅かった。仕留め切れてはいない。


「……なんだおまえは……」


 マーダスは自分の首元を触り、出血していることを確認した後、恨めしい声を出す。


「おまえの妹の友達だ。クソやろう」


「……面白い」


 そして、また剣戟が始まる。

 僕は全てを受け止めることができていた。しかし、さっきの一撃以降、マーダスには一太刀も入れれていない。あいつも僕の攻撃に慣れてきたのか、薄ら笑いを浮かべるようになってきた。


 くそっ!この人の剣技じゃもうダメか!


「カリン!」


 ボフッ。僕が合図をすると、煙玉が投げ込まれる。その隙をついて、僕は次の家へと向かった。

 2軒目の建物に入り、双剣を地面に放り投げ、次の武器を手にする。それから、寝ている女騎士の手に触れた。


 路地に戻る。路地の数メートル先で、マーダスがこちらを見て立っていた。刀の刃がついていない方で、肩をトントンと叩きながらニヤニヤと笑っている。


「逃げたわけではなかったでござるか」


「逃げるわけあるか」


「で?そのレイピアはなんでござるか?」


 僕が武器を持ち替えていることが気になるようだ。


「……」


 しかし、無視して僕はレイピアを正面に構える。半身をマーダスの方に向けて、左手は後ろに、それから左足で思い切り地面を蹴った。


 キンッ!僕のレイピアを柄で受け止め、驚いた顔を見せるマーダス。やはり、急な剣筋の変化には対応が遅れるようだ。その隙をついて、僕は全力でレイピアを叩き込んだ。


 キンッ!キンッ!キンッ!何度も何度も突き出す。マーダスはそれらの攻撃を受け流しはするが、何発かはカスっていた。そして――


 ずぶり。レイピアの芯が、マーダスの左手の掌を捕らえる。剣の3分の1ほどが貫通していた。


 よし!これで左手は使い物にならな――


「捕まえたでござる……」


「っ!?」


 罠だった。

 ズバッ。下段からの切り上げで僕の右腕を斬る。大量に出血して、たまらずレイピアを離した。

「面白かった!」


「ヒロイン可愛い!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたしますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ