第53話 助けを求めて
僕は王城の敷地内から出て、城下町を走っていた。正門近くにある馬屋が見えてくる。あたりは真っ暗で、店主らしき人物が看板を持って店じまいをしているのが見えた。そんなのお構いなしに店の中に駆けこむ。
「はぁはぁ!すみません!」
「な、なんだいあんた……」
僕は全力で走ってきた勢いのまま、馬屋の店主に話しかける。
「馬を二頭!今すぐ売ってください!」
「い、今すぐ?それは無理ってもんだよ。鞍の準備も、蹄だって、」
「お金ならいくらでも出します!」
僕は金貨の入った袋を取り出し、中身を見せながら、机の上に乱暴に置く。
「……レンタル用の馬だったら用意できるが、でも、それを売るわけには……」
「3日以内に返します!」
「じゃ、じゃあ書類を……」
「すみません!時間がなくて!この金貨すべてお渡ししますので!」
机の袋を持って、店主に押し付ける。
「こ、こんなに貰うわけには……」
「いいから!人の命がかかってるんだ!急いで!」
「わ、わかった……」
僕の勢いに負けた店主が急いで馬を二頭用意してくれた。一頭にまたがり、もう一頭の手綱を握る。もう一頭は、帰ってくるときのセーレンさんのための馬だ。
「ありがとうございました!絶対返しに来ますので!」
「あっ、ほんとに行っちまいやがった……こんなに……さすがに悪いことした気分だな……」
正門から出て、二頭の馬と一緒に全速力で目的地へと向かう。クリオ南部のトレア、大河のほとりに建築されたその町は、キーブレス王国首都から馬車で3日、早馬なら1日中走り続ければ着くはずだ。
「ごめん!大変だろうけど頑張って!」
僕は猛スピードで走る馬たちに声をかけて草原の中を走り続けた。
♢
夜が明け、また夜がやってくる。馬たちの速度もだいぶ落ちてきてしまった。
「ごめん!もうちょっとだから!がんばって!頼む!」
馬たちに必死にお願いして、なんとか一日と経たず、トレアの町が見えてきた。大きな川だ。そこに寄り添うように細長いトレアの町が見える。
簡素な門をくぐり、何人か住民がいるのを見つけて、僕は大声を出した。
「セーレン・ブーケ殿は!どこにおられるか!私は第五王女ピアーチェス・キーブレスの使いの者!セーレン・ブーケ殿はいずこに!」
住民たちは、なんだなんだ?と不思議そうな顔をしている。
「セーレン・ブーケ殿!誰か教えてくれ!これは王女からの勅命である!」
「あの……セーレン様でしたら、この時間は教会かと……」
若い女性がおずおずと教えてくれた。
「ありがとう!その教会とはどこでしょう!」
「あちらです……」
僕は指をさされた方に向かって馬を走らせた。
「セーレンさん!」
見つけた。教会の前で、シスターや子どもたちに笑顔を向けている緑髪の男、セーレン・ブーケだ。
「ジュナリュシア様?」
僕を見て不思議そうな顔をするセーレンさん。彼の前に馬を走らせ、馬上から降りる。
ガクッ、一日中馬に乗っていたことで膝にきていたようで、よろけてしまう。
「ジュナリュシア様!」
すぐにセーレンさんが肩を貸してくれた。
「どうしたのですか!そのようなご様子で!」
僕の焦った表情と、それに汗だくだったからなのか、緊急事態だとすぐに理解してくれた。
「すぐに一緒に来てください!僕の!大切な人たちが!姉さんも危険な状態なんです!」
「っ!?承知しました!シスターアマンダ!私が留守にすることをみなに伝えてください!」
コクリ。年配のシスターが頷くのを確認してから、「ヒール!」セーレンさんが僕に治癒魔法を使ってくれた。さっきまでの疲労が嘘のように消え失せる。
「すぐに出発します!」
「はっ!」
僕とセーレンさんはそれぞれ馬に跨った。そして、馬たちにもヒールをかけてもらう。
お願いだ、間に合ってくれ。
「面白かった!」
「ヒロイン可愛い!」
「今後どうなるのっ……!」
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