第4話 第五王女ピアーチェス・キーブレス
さっきまで読んでいた本で勉強した結果、〈このままだと僕はヤバい。いつ殺されるかわからない状況だ〉ということがわかった。
歴史書の中には、《スキル無し》の王族が生まれたなんて話は一切出てこない。つまり、歴史的に見ても、僕はイレギュラーな存在なのだろう。だから、悪い処分が決まる前に、なんとかして有用な存在だと思わせ、時間を稼ぐ必要がある。僕が力をつけるまで、多くの時間が必要だ。どうにか、どうにかしなければならない。
「でも、何も思いつかないんだよなぁ……」
僕は、溜息をつきながら背中をそらした。空を見上げる。
「あなた、スキル無しの十七王子ですわね?」
「はい?」
空を見ていたら、青空をふさぐように女の子の顔が目の前にあらわれ、声をかけられた。スキル無しの僕なんかに話しかけてくる人なんてあれからいなくって、ビックリする。
「わたくしの質問に答えなさい。このスキル無し」
姿勢を戻し振り返ると、そこには金髪縦ロールの意地悪そうな美少女が立っていた。スキル鑑定式のときのは違い、豪華さが数ランク落ちたドレスを身に纏っている。でも、それでも十分可愛かった。
「あー……えっとEランクの、ピャーなんとか王女……」
「なっ!?わたくしはピアーチェス・キーブレス!誇り高きキーブレス王国の第五王女ですわ!無礼ですわよ!このスキル無し!」
美少女にキッと睨まれる。
「あー、なんかすみません、Eランクさん」
ペコリ、怒っているので適当に頭を下げておいた。
「キー!なんなんですの!あなた!わたくしをバカにして!死罪に致しますわよ!」
「いや、あなたにそんな力ないですよね。Eランクですし」
「腹が立つ子どもですわ!」
「キミも子どもじゃん」
「クソガキですわ!」
「こっちのセリフです。はぁ……あの、本読んでるのでどっか行ってくれませんか?集中したいので」
僕はキーキー言っている縦ロールを無視して読書を再開した。こんな縦ロールに構ってる時間はない。僕はこれからどうやって生きていくか考えなければいけないのだ。
「……何を読んでるんですの?」
ムスッとした顔で、ピャーなんとかさんが隣に腰掛けてくる。
「なんなんですか……歴史書ですけど?」
僕は嫌そうにしながらも、一応答えてあげることにした。子どもの相手くらいしてあげるか、という心持ちだ。
「スキル無しが歴史のお勉強なんてして、どうする気ですの?無駄ですわ……どうせ国外追放か……悪くすれば……」
さっきまで威勢が良かったのに、だんだんと落ち込んでいく縦ロール。
「悪くすれば、処刑ですか?」
「……ええ」
「でしょうね。だから勉強して、処刑されない方法を考えているんです」
「そんなことしても……無駄ですわ……」
「無駄かどうかは僕が決めます。それに、ダメそうなら国外逃亡でもして生き延びますから。他人に殺されるなんて、命を奪われるなんて、まっぴらごめんだ」
「そう……ですか……あなたはスキル無しのくせに勇気がありますのね……それに比べて、わたくしは……」
「なんですか?さっきから。ピャーなんとかさんはスキルがあるんだから恵まれてると思って下さいよ。僕なんてスキル無しなんですから」
「わたくしが、恵まれてるですって?」
「だってそうでしょ?僕はスキル無しなんだから」
「……ふふ。そう……そうかもしれませんわね……あなた、面白いですわ」
「そうですかね」
「……わたくし!ピアーチェスと申しますの!」
「はぁ、そうですか」
「ピアーチェスお姉様と呼ぶことをお許しいたしますわ!スキル無し!」
「え?呼びませんけど?どっか行ってください」
「なっ!?こ、この!生意気ですわー!腹違いとはいえ実の姉に向かって!」
「はいはい」
その日から、僕はこのピアーチェスとかいう金髪縦ロール美少女につきまとわれることになる。
♢
バン!
「スキル無し!わたくしが来てあげましたわよ!」
「呼んでません。帰ってください」
「キー!」
♢
「スキル無し!わたくしにも歴史を教えてくださってもよろしくってよ!」
「いやですよ。めんどくさい。本は貸してあげるので勝手に読んでください」
「なんですって!このわたくしに自分で読めなんて!無礼者!」
♢
「ジュナ!あなた!そろそろわたくしをお姉様とお呼びなさいな!」
「いやですよ、ピャーなんとかさん」
「キー!今日という今日は許しませんわ!あ!お待ちなさい!わたくしにかけっこで勝とうなんて100年早いですわー!」
♢
「ピャーねぇ、重い」
「レディにそんなこと言ったらモテませんわよ。ほら、早く続きを読んでくださいまし」
「だから、自分で読んでくださいよ。あと、縦ロールが顔に当たってウザいです」
「ウザい!?ウザいですって!?この!ジュナのくせに!」
♢♦♢
ピアーチェス第五王女に付きまとわれるようになって、1年以上が過ぎた。僕たちはまだ王城の敷地内で生かされている。
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