第45話 赤目の王女
僕は、カリンと離れて、自宅への帰路についていた。この辺りは、王子、王女たちの居住地だ。悪目立ちしないようにさっさと帰ろうと思う。
しかし、そう思っていたら、この前見た王女と出くわしてしまう。従者が2人、そのうちの1人に車いすを押され、金髪赤目のロングヘアーの女性が前からやってきた。第七王女ナナリア・キーブレスだ。
「……」
僕は、あまりジロジロ見ないように意識して、すれ違うときに会釈だけしようと決めて、そのまま歩き続けた。速度は変えない、さっと通り過ぎよう。
しかし、距離が近づいてくると、ナナリア第七王女の方が片手を上げて車椅子を停車させた。なんだ?
「ご機嫌よう、ジュナリュシア王子」
「……ご機嫌よう」
相手が止まったのだ。さすがに素通りするのは失礼だと思い、僕も脚を止める。まさか話しかけてくるなんて思わなくて、警戒心を強く持った。
「お散歩ですか?」
「え?あー、はい、そうですね」
なにを聞いてくるのかと身構えていたが、世間話のようで気が抜ける。この前見たときは、あの赤い目になにか不気味なものを感じたが、物腰柔らかくて、穏やかそうな少女に見えた。
「うふふ、わたくしも従者の2人とお散歩でしたのよ。こちらがクオーレ、こちらがゼーレです。お見知りおきを」
コク。
コクリ。
紹介された2人が会釈をする。
「あ、これはどうもご丁寧に、ジュナリュシア・キーブレスです。一応、第十七王子ということになっています」
僕も2人につられて会釈を返す。
「うふふ、やはりジュナリュシア王子は他の王子とは違いますね」
「そうでしょうか?」
「はい。従者に頭を下げる方なんて、見たことがありません」
「あー、それは僕がスキル無しだからですかね。権力とか持ってないので」
「うふふ、面白いお方……もしよろしければ、今度お茶などいかがでしょう?」
なにが面白かったのかは不明だが、気に入られてしまった。なんだか怖い。ナナリア王女は笑っているのに、どこか底が知れないものを感じた。
そういえば、キーブレス王家は金髪でグリーンの瞳が基本なのに、この人は赤目だ。僕と同じように差別はされなかったのだろうか?と思い当たる。
「うふふ、そんなに見つめられては照れてしまいますわ」
瞳を観察していたのがバレてしまったようだ。
「あ、えっと、失礼しました。あー……お茶会については、また機会があれば……」
僕はなんと答えたものかと悩みながら、適当な返事をしてしまう。
「そうですか。では、また改めてお誘いいたします」
あ、了承したと取られてしまったようだ。うーん……まぁ、害はなさそうだしいいか。
ナナリア王女は、他の王子たちとは違って偉そうにはしていないし、今のところ好印象だ。もしかしたら、僕たちの仲間になってくれるかも。そう、楽観的に考えて、会釈をしてから彼女と別れることにした。
振り返るのもおかしいので、まっすぐ自宅に向けて歩いていく。そんな僕の後姿を見て、
「……うふふ、本当に面白い」
クスリと笑う彼女の表情を、僕が気づくことなんてできるわけがなかった。
「面白かった!」
「ヒロイン可愛い!」
「今後どうなるのっ……!」
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