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第36話 第六王子と第七王女

「ナナリア殿、それであなた様のギフト授与相手は決まったのですかな?」


「黙れ下郎!ナナリア様に気安く話しかけるな!」


 僕とピャーねぇは、植栽の裏から頭だけを出して、揉め事の様子を盗み見ていた。なんだか、偉い人の従者同士が声を荒げて言い合っている。


「まぁまぁ、クオーレ、そんなに怒らなくてもいいではありませんか。わたくしは大丈夫ですよ」


「ふっ、ナナリア、キミは従者の躾も十分にできないようだね」


「あらあら、そんな意地悪なこと言わないでくださいませ、ヘキサシスお兄様」


 従者の様子と違い、渦中にいる2人はずいぶんと余裕そうだ。


「……ピャーねぇ、あれは?」


「メガネをかけて手袋をしてる紳士気取りの方がヘキサシス第六王子で、車椅子に座ってる赤目の方がナナリア第七王女ですわね」


「なるほど」


 揉め事の中心には、この2人がいて、その周りに何人かの従者が立っていた。

 ナナリア王女の方には従者らしき人が2人、ヘキサシス王子の方には8人ほど従っていて、形勢は王子の方が有利に見えた。


 なのに、ナナリア王女は物腰が柔らかく、ニコニコしながら場を収めようとしている。対するヘキサシス王子の方は、人数が多いからなのか偉そうだ。


「そういうヘキサシスお兄様のお相手は決まったのでしょうか?よろしければ、教えていただけませんか?」


 ナナリア王女が両手を合わせて、お願いします、みたいなかわいらしいポーズをとった。


「ああ、もちろんいいとも。素晴らしい人材を見つけてきたからね。マーダス、前へ」


「拙者でござるか?めんどうでござるな……」


 ござるだって?なんだその語尾は?

 僕が眉をひそめていると、袴のようなものをはいた赤髪の男が前に出た。腰まで伸びる赤い髪をポニーテールにまとめていて、前髪はパッツン、腰には刀をさしている。うちの国では珍しい服装だ。たしか異国では、侍とか呼ばれる格好だったはずだ。


「彼は、マーダス・ボルケルノ。ボルケルノ家の長男だ」


「あらあら、あの有名なボルケルノ家の方でしたか。はじめまして、わたくし第七王女のナナリア・キーブレスと申します」


「あ、これはご丁寧に、どうもでござる」


「随分余裕そうじゃないか、ナナリア。昨年、彼の弟はAランクの炎魔法を授かった。ボルケルノ家は、高ランクの炎魔法を発現する一族として名が通っている。もちろん、キミも知っているだろう?マーダスは、その一族の長男だ」


 マーダスという侍男を紹介したヘキサシス王子は、とんでもないドヤ顔でニヤニヤしながらナナリア王女のことを見下していた。さっきからメガネをくいくいと触っていて、なんだか鬱陶しいやつだ。


「あらあら、それはとっても期待できますわね。ヘキサシスお兄様がギフトキーを使ったら、もしかしたらSランクが発現するかもしれませんわね」


「そうだろうね、このAランクの私がマーダスに与えてやれば、それも夢じゃないかもしれいね」


 僕は、『はぁ……またAランク王子か……』と嫌気がさす。


「そうですか。頑張ってくださいまし、それではわたくしはこれで」


 ナナリア王女が目配せすると、従者の1人が車椅子を押してその場を去ろうとする。さすがにドヤ顔メガネの相手を続けるのは疲れたのだろうか。


「待て待て、私の要件はまだ終わってないよ、ナナリア」


「……なんでしょう?」


「先ほども私の従者が聞いただろ?キミの授与相手は決まっているのかな?それを教えてもらいにわざわざ来てやったんだ」


「それは秘密ですわ。乙女に秘密はつきものでしてよ。うふふ」


「そうか。あくまで言わないと……まぁいいさ。今度の授与式、私との圧倒的な差を見せられて恥をかかないといいね?ナナリア?」


「わたくし、ギフトの授与は勝ち負けじゃないと思っていますので大丈夫です。ヘキサシスお兄様とは考え方が違うようですね?」


「なんだと?」


「なにか?」


 ニコニコしていたナナリア王女が、そろそろめんどうだな、と思ったのか、鋭い目つきに変わる。緊迫した空気になり、従者たちがそれぞれの武器をいつでも抜けるように意識したのがわかった。


 そこに「ヘキサシス殿、よろしいか?」と侍男が割り込んでくる。


「ん?なにかな?マーダス」


「貴殿は、この御人を敵として処分したいのでござろうか?でしたら、ぜひ拙者に斬らせていただきたい」


 そう言いながら腰の刀に手をかけるマーダス。


「なっ!?貴様!」


 先ほどもクオーレと呼ばれたナナリアの従者が腰の剣を抜き両手で構えた。ナナリア王女の車椅子を引いていた従者もナイフを持って王女の前に立つ。


「獲物が3匹も……これは斬りがいがあるでござるな……」


 暗い笑みを浮かべるマーダス。静かに、緊迫した空気が漂う。


「は……ははは!マーダス!き!キミは面白い冗談をいうね!そんな!王女を斬るだなんて!そんなことあるわけないだろう!?すまなかったね!ナナリア!私はこれで行くよ!あー!ギフト授与式が楽しみだなー!」


 緊迫した空気の中、ヘキサシスが冷や汗をかきながら大声でまくしたてて踵を返した。やつはどんどん離れていく。


「おろ?ヘキサシス殿は意外と小心者でござったか……つまらぬことだ。では、拙者もこれで。おい、いくぞ」


「は、はい……」


 マーダスは残念そうな顔をしたあと、飄々とした態度に戻り、ヘキサシスの後ろに続く。そして、マーダスの後ろに控えていた気弱そうな少女もおどおどしながら、その後ろについていった。


「はぁ……とりあえず大丈夫そうか……」


「危なかったですわね……」


「うん……」


 僕の方はというと、ピャーねぇが飛び出していかないように押さえておくのに必死だった。あんな刃傷沙汰になりそうな場所にピャーねぇを参戦させるわけにはいかない。それなのに、何度も飛び出していこうとするこのお姉様には困ったものだ。そんなピャーねぇは、揉め事が終わった後、マーダスが去っていった方向をジッと見つめている。


「先ほどの、ボルケルノ家の方……ちょっと気になりますわ、追いますわよ」


「え?なんで?」


「いいから!いきますわよ!」


「わ、わかったけど……」


 危なそうなやつだったから、あんまり近づきたくない。そう思ったがピャーねぇは言っても聞かない顔をしていた。だから、手を引かれるままついて行こうとする。しかし、その場を離れようとしたとき、なにか視線のようなものを感じる。視線の先を見ると、第七王女ナナリアとその従者2人が僕たちのことを見ていた。


 やばい!バレた!……いや、別に悪いことはしてないけど。なんで、彼女たちは僕たちを見ている?

 そして、ナナリア王女は僕と目が合うとニッコリと微笑んだ。

 ゾクリ、なんだか、その赤い目に全てを見通されてるような気がして、寒気が走る。


「いきますわよ!ジュナ!」


「あー、うん!」


 僕は、彼女の赤い目から逃げるようにその場を後にした。

「面白かった!」


「ヒロイン可愛い!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ったら


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