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第33話 双子をメイドとして迎え入れた日

-翌朝-


 朝日が出て、明るくなったころ、風邪を引いていたCが目を覚まし、「おねえちゃん……」と声を出す。


「C!よかった!」


 Dがその子を抱きしめる。


「その人……だぁれ?」


「この人が助けてくれたの!」


「そう……なの?」


「ううん、そんな大したことはしてないよ。僕はジュナ、よろしくね」


「ジュナ……さん……こんにちは……」


 その子は、体調が良くないだろうに、しっかりと挨拶を返してくれる。


「うん、こんにちは。まだしんどそうだから、お薬飲もうか」


 そう言って、またポーションを飲ませて寝転ばせる。

 それを見て安心したようで、DがCの隣にコロンと寝転んだ。そして、すぐに寝息を立て始める。昨晩、Dはずっと心配そうな顔でCの看病を続け、一睡もしなかった。その反動だろう。


「おねえちゃん……ごめんなさい……Cのせいで……」


 すやすやと眠るDを見て、今度はCが泣きそうな顔をする。


「あのさ、キミたちって、ここで育ったの?あ、苦しかったらしゃべらなくて、寝てていいからね?」


「……ううん。あのね、CとDは、奴隷だったの……でも、Cがすぐに風邪を引くから、この前捨てられて……おねえちゃんが……がんばって、がんばって……Cのこと助けてくれて……いつもおねえちゃんが……おねえちゃん……う、う……」


 Cがポロポロと泣き出してしまう。


「ごめんね、辛いこと聞いて。もう、大丈夫だから」


 僕はCの頭をそっと撫でた。それから、2人を守るようにそばに腰掛け、Dの頭も撫でてあげる。頑張ったんだね、そう思いながら彼女たちのことを労った。

 すると、Cは泣き止んでくれて、ゆっくりと目を閉じる。


「あったかい……おねえちゃん……すぅ、すぅ……」


 Cも眠ったようだ。

 僕は、2人の女の子の寝顔を見ながら考える。こんな、ひどい環境で、妹を必死に守ろうと頑張った女の子、自分が苦しいのに姉を思って涙を流す女の子。

 僕には、この2人を放っておくなんて、もう、できなくなっていた。



 さらに翌朝、Cの体調がある程度良くなり、立てるようになってから、僕は一旦家に戻ることにした。


「いかないで!」


 僕が小屋から出ようとすると、Cに腕を掴まれる。


「C!ダメでしょ!ごめんなさい!」


 お姉さんのDが、Cをなだめようとする。


「大丈夫、すぐ戻ってくるから」


「ほんとに?」


「うん、ほんとだよ、待っててくれる?」


 僕はCの頭を撫でて、諭すように言う。


「うん……待ってる……帰ってきてね?」


「ありがとう。Dもここにいてね」


「はい……わかり、ました……」



 僕は一旦自宅に戻り、食料と2人の服を持って家を出た。1時間もしないうちにスラム街のDとCの家に戻ってくる。


「おまたせ」


「あ!おかえり!」

「おかえりなさい、でしょ!」


「あ!おかえりなさい!」


「ただいま。お腹すいたよね、これどうぞ」


 僕は、昨日渡したフランスパンじゃなく、ハムや野菜を挟んだサンドイッチが詰まったバスケットを渡してあげる。


「すごい!いいの!?」

「こんな……高そう……」


 目をキラキラさせるCと、申し訳なさそうなD。


「2人に食べて欲しいな。2人のために僕が作ったんだ」


「いただきます!」

「じゃ、じゃあ……ありがとう、ございます……」


「おいしー!」

「すごく……美味しいです……ぐすっ……」


 僕は2人がお腹いっぱいになるまで、しばらく待つことにした。



「お腹いっぱいになったかな?」


「うん!ごちそーさま!」

「ごちそうさまでした。美味しかったです」


「そっか良かった。ところで、2人にお願いしたいことがあるんだけどいいかな?」


「なぁに?Cができることならなんでもするよ!」

「が、がんばります……」


 無邪気なCと少し警戒しているD、一体なにをお願いされるのか、怖いようだ。


「2人には、僕の家でメイドとして働いて欲しいんだ」


「めいど?」

「それは……なにをすれば……」


「たとえばお掃除とか、お料理とかかな」


「お料理……できません……」

「Cもできない……おねえちゃんが、怒られるのはやだな……」


 僕の提案を聞いて、自分たちには能力がないとしょんぼりとする2人。でも、そんなこと、僕にとってはどうでもよかった。


「大丈夫、僕が教えるから。今はできなくっても問題ないよ。もちろん、上手くできなくっても絶対に怒ったりしない」


 怯えた表情を見せる2人に怒らないことを約束する。もしかすると、奴隷商に怒鳴られた経験があるのかも、と察したからだ。


「ほんとに?」


「うん、怒ったりしないよ」


「ならがんばる!」

「Dも……がんばります!」


「良かった。ありがとう、助かるよ。今、うちにはメイドさんが1人もいなくてね。探してたところなんだ」


 本当の目的は国取りのための人材集めだったが、まぁメイドが欲しかったというのもホントだし、女の子2人を雇うならメイドという仕事はちょうどいいと思う。


「じゃあ、さっそくうちに引っ越してもらってもいいかな?」


「引っ越し?ですか?」


「うん、2人にはうちの家に住み込みで働いてもらいたい。ちゃんと2人にも部屋を用意する。どうかな?」


「Cはいいよ!」

「Dは……」


 なんだか、Dの表情が硬かった。なにか懸念がありそうだ


「このお家が好きだったかな?」


「ううん……ぜんぜん……Cと同じ場所……ですか?」


 同じ場所で働けるのか、という意味だろう。そうか、離れ離れにされることを懸念してるんだな。


「もちろん、2人とも同じ家の中で働けるよ。部屋も同じ部屋にしてもいい」


「なら……はい、お、お願いします!」

「あ!お願いします!」


 Dがぺこりと頭を下げたら、Cもそれを真似して頭を下げた。


「よし、決まりだね。なにか、この家にあるもので、持ってくものはあるかな?」


「えっと……これ……」


 Dが僕の上着を持ち上げる。


「それだけでいいの?」


「はい……」


「Cもなにもないよ!」


「わかった。じゃあ2人ともこの服に着替えてくれるかな?僕は外で待ってるから」


 そう言って、2人に用意していた服を渡し、僕は小屋の外に出た。


 しばらくしたら、着替え終わった2人が小屋から出てくる。


「おまたせ!あ、しました!」

「着替えました……」


「お、いい感じだね」


 小さい女の子用ではないのでぶかぶかではあるが、ロングスカートのメイド服を着た2人がそこにいた。


「2人ともかわいいよ」


「かわいい?ほんとに?」

「かわいい……Dが……」


「うん、さっそく僕の家に行こうか。その格好だと目立つしね」


 僕たちは、空が明るいうちに移動を開始した。


 後ろから、

「かわいいって!おねえちゃん!」

「そ、そうね……」

 なんて会話が聞こえてくる


 スラム街を歩いて行くと、なんでここにメイドが?と稀有な目を向けられるが、早足で通り過ぎて無事に門の前まで来ることが出来た。そこまで来たら、僕もいつもの服に着替えて城下町に入る。そして、そのまま王城の中に入った。


 門番は僕を見ると腫れ物を扱うように無視し、後ろのメイド2人のこともスキル無し王子の付き人だと勘違いしてスルーされる。


「ふぅ……」


 僕はひっそりと息を吐いた。もしかしたら、メイド2人の身分確認とかしてくるかもと懸念があったからだ。杞憂だったようで、自宅まで無事に到着することができた。玄関を開けて2人を迎え入れる。


「ようこそ我が家へ」


「すごーい!おっきなお家!ここに住んでいいの!?」


「うん、今日からここで一緒に暮らそう」


「わぁーい!おねえちゃん!すごいね!」


「……あの」


「なぁに?」


「あなたは……ジュナさんは一体?」


「あ、そっか言ってなかったっけ。改めて自己紹介するね。僕はジュナリュシア・キーブレス、キーブレス王国の第十七王子だよ。今日から2人には僕付けの専属メイドになってもらう。よろしくね」


「王子様だったの!?すごーい!!」

「王子……様……」


「あのさ、2人のDとCって名前って、ご両親から付けてもらったものじゃないよね?」


 僕はずっと気になっていたことを質問する。


「はい……奴隷商に……親は知りません……」


「うん、わかった。じゃあさ、よかったら、僕が2人の名前を付けたいんだけど、いいかな?」


「なまえ……くれるんですか?」

「Cもなまえ欲しい!」


「うん、それじゃあ……僕は第十七王子だから、十七のディセットからとって、ディセとセッテ、っていうのはどうかな?」



 こうして、ディセとセッテがうちのメイドになってくれたのだった。

「面白かった!」


「ヒロイン可愛い!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ったら


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