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第2話 全てを奪われた日

 スキル鑑定式が終わり、会場から出ると、コレットが馬車の前で待っていた。僕は、自分に起きた大問題に気づかずにコレットに駆け寄る。


「ただいま!」


「おかえりなさいませ!ジュナ王子!スキル鑑定の結果はどうでしたか!?王子でしたらAランクとかでしょうか!?」


 コレットが期待した目を向けてきた。でも、さっき言われた鑑定結果とは似ても似つかないので、気まずくなる。


「えっと……」


「どうかされましたか?」


「あのね……僕、《スキル無し》って言われて……」


「……え?」


 コレットが僕の言葉を聞いて固まってしまう。そして、どんどんと顔色が青くなっていく。


「そんな!?まさか!!」


 コレットがキョロキョロと回りを見る。僕もつられて周りを見ると、何人かの衛兵が僕たちのことを指差して何か話していた。そして、その後ろから10人以上の衛兵が速足で集まってくる。なにか、王城に侵入者でも出たかのような騒ぎようだ。


「っ!?ジュナ王子!すぐに馬車に!私が必ずお守りします!」


「え?え?」


 僕は痛いくらい強く抱きしめられた後、腕を引っ張られて、馬車に放り込まれた。そして、コレットは御者を待たずに自分で馬車を動かしだす。いつものようにのんびりとした速度じゃない。ガタガタと馬車が揺れ転びそうになる。コレットはどうしてあんなに焦っているのだろうか。馬車の窓から顔を出し、コレットに話しかけた。


「ねぇ!どうしたの!コレット!ねぇってば!」


「ジュナ王子!すぐにこの国から出ます!アナスタシア様をお連れ次第、すぐにです!」


「ええ?なんで!?」


 コレットの後姿はそれはもう必死で、僕は怖くなって何も言うことができなくなってしまった。



 屋敷につくと、コレットは玄関に僕を待たせて、すぐにお母様のもとへと走っていった。屋敷中がバタバタとあわただしくなって、いつものドレス姿ではないお母様が走ってくる。平民のような身分の低い者の服装だ。


「ジュナ!ああ!私の可愛いジュナ!」


「お母様!」


 なぜだかわからないが抱きしめられた。いつもの、いい匂いのお母様だ。でも、痛いくらい強く抱きしめられる。さっきのコレットみたいに。


「アナスタシア様!ジュナ王子!お早く!」


 コレットが玄関の扉をあけようと、駆けだしたとき、突如としてそいつらは現れた。


 バン!玄関が乱暴に開き、20名を超える衛兵が入ってくる。そして僕たちは囲まれた。


「なんですかあなたたちは!こちらは王妃と王子の屋敷ですよ!」


 コレットは激昂するが、衛兵たちは微動だにしない。そこに、金髪の若い男が姿を現した。


「ジュナリュシア王子はこちらにいるでしょうか?」


 金髪でエメラルドグリーンの目を持つ男だった。王族だ。


「いません!」


「使用人風情が!無礼であるぞ!」


 衛兵の1人がコレットを取り押さえ、地面へと叩きつける。


「コレット!?コレットになにするの!やめてよ!!」


 僕はすぐに駆け寄って、衛兵の腕に抱き着いた。僕の大好きな人に乱暴しないで欲しかった。


「なんだこいつは!」


 思い切り殴られる。地面に転がって、頭がクラクラした。頬っぺたがすごく痛い。


「ああ!ジュナ!無礼者!王家の者に手を出すなど!その者を捕えよ!」


 お母様が倒れている僕を抱き寄せ、見たこともない顔で怒りを露わにする。しかし、衛兵たちは誰も動かない。


「そちらがジュナリュシア王子ですね?こちらに引き渡していただきましょう」


 金髪の男がお母様と僕に近づき、手を差し出してくる。お母様はそれを払いのけた。


「ジュナは私の大切な宝物です!誰にも渡しません!」


「……アナスタシア王妃を国家反逆罪の罪で拘束せよ。これは勅命である」


「なっ!?」


 金髪男が指示を出すと、お母様と僕は引き離され、お母様が衛兵に連れていかれる。


「お母様!お母様!」


「ジュナ!ジュナ!大丈夫です!私が!必ずなんとかします!だから!」


「黙れ逆賊が!!」


 お母様の頬を衛兵が殴りつける。


「ああ!」


「お母様!!なんで!その人は王妃だぞ!やめろ!お母様!!」


「ジュナ!生きて!強く生きて!」


 お母様がどんどんと離れていく。玄関から引きずり出され、どんどん小さくなっていく。今離れたら、もう会えなくなる。そう感じて、すごく不安な気持ちになった。なんで僕は、お母様がこんなことに?僕が、僕が《スキル無し》だから?


 涙が出てきて、両手を前に出すが、衛兵に取り押さえられて動くことができない。大好きな人が連れていかれそうなのに、僕にはどうすることもできなかった。自分の無力さが心底イヤになる。


「ジュナリュシア王子も連行しろ。別の馬車でだ」


 金髪男がそう言うと、僕を取り押さえていた衛兵が僕を抱えて歩き出した。そこに、


「ジュナ王子!私がお守りします!」


 いつの間にか拘束を抜け出したコレットが短剣を構えてぶつかってきた。衛兵の脇腹に剣がささり悲鳴があがる。聞いたこともない怒りの声、すごく恐ろしい声だった。

 僕は乱暴に地面に放り投げられる。


「このクソ女!」


 刺された衛兵が剣を抜く。僕は叫びたくても、怖くて叫べなかった。右手を前に出す。


「ジュナ王子!逃げて!」


 ズシャ!僕に手を伸ばそうとしてくれたコレットが僕の目の前で背中を斬られた。


「え?」


 僕はそうとしか発せられない。顔にコレットの血が飛び散って付着する。それを両手で触って、目の前にもってくると、たしかに赤かった。コレットが地面に倒れている。


 赤い、赤い、血の海が広がっていく。コレットの髪の色よりも赤くて、その周りは灰色だ。何が起こっているのかわからなかった。


「そこのメイドも連行しろ」


 血まみれのコレットが衛兵たちによって運ばれていく。


「そいつはそのまま火葬場へ連れていけ。私の部下に処分させる」


「はっ!」


 コイツは、一体なにを言っている?コレット?お母様?

 えっと、今日は、帰ってきたら、コレットのシチューを食べるはずで……えっと……なんだっけ……えっと……


「……ジュナリュシア王子、キミのこれからの人生は過酷なものになる。だが――」


 金髪男が何かを言っていた。何を言っているのかはわからなかった。でも、コイツが、コイツのせいでコレットとお母様が傷ついたんだ。許せない。絶対、許したらダメだ。


 僕は、止まらない涙の中、そいつのことを睨み続けた。


 この日、僕は、僕の大切なものを全て奪われた。

「面白かった!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ったら


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