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第25話 双子メイドにスキルの授与を

「ごきげんようですわー!」


 お昼を過ぎたころ、ピャーねぇが上機嫌でうちを訪ねてきた。飛んで火に入るなんとやらだ。


「いらっしゃい、ピャーねぇ」


「いらっしゃいませ、ピアーチェス様」


「ごきげんよう、ジュナ、ディセ!あら?セッテはどこかしら?」


「セッテは姉さんのためにお菓子を作ってくれてるよ」


「そうなんですの!楽しみですわー!」


「できあがるまで、紅茶などいかがでしょう?」


「お願いしますわ!」


 ポフッ。僕が座っているソファに勢いよく腰掛けてくるピャーねぇ。僕に寄り添うようにくっつくので、ぴったりと肩が当たっていた。


「ディセとセッテはホントにいい子ですわ!どこにこんないいメイドが埋もれていたのでしょう。わたくしが先に見つけていれば、うちで雇っていましたのに!」


「はは、それは困るな。2人は僕の大切なメイドだから」


「とったりしませんわよ!あ、紅茶ありがとうですわ」


「いえいえ」


 コポコポと音を鳴らしながら、ディセがピャーねぇのカップに紅茶を入れてくれる。


「でも、ディセがわたくしのところに来たいって言ったら大歓迎ですわよ!」


「ふふ、嬉しいお言葉ですが、ディセはジュナ様のものですので」


「忠誠心もあって素晴らしいですわ!」


「ピャ!ピャー様!お菓子が!でで!出来上がりました!」


 僕たちを談笑を続けていると、セッテが目をぐるぐるさせながらお菓子を運んでくる。しかし、明らかにいつもと様子が違う。これは……こんな調子だと、さすがのピャーねぇにも警戒されるんじゃ?


「チョコですのね!美味しそうですわー!」


 ……大丈夫のようだ。


 セッテがあわあわと持ってきた銀のお盆の上には、一口サイズの可愛らしいチョコが並んでおり、それぞれ飾り付けが違っていた。どこぞの高級チョコレートのようだ。

 それを見たピャーねぇは、目を輝かせながら手を合わせて、早く食べたそうにウズウズしている。


「どれがオススメかしら?」


「えっと!えっと!」


「セッテが選んでくれたのを食べますわ!食べさせてくださいまし!」


「わわ!わかりました!」


「あーん、ですわー」


「あーん」


 セッテがチョコを一つずつ手に取って、ピャーねぇの口に運ぶ。


「もぐもぐ……とっても甘くて!とっても美味しいですわー!」


 ピャーねぇは、ほっぺに片手を当ててご機嫌だ。


「ディセの紅茶にもよくあいますわー!」


 こうして、ピャーねぇは、セッテのチョコを食べ続け……


「ひっく!あら?どうしたのかひら?ひゃっ!くりが……」


 チョコを5つほど食べたあたりから、ピャーねぇの様子がおかしくなる。


「あら?ありゃ?じゅながたくさんいましゅわー?ぴゃらだいす、でしゅわね?」


 呂律も、言ってることも、よくわからなくなってきた。よし、セッテ特製のリキュール入りチョコレートが効いてきたようだ。ピャーねぇが酔っているうちに目的のことを済ませてしまおう。


「ピャーねぇ、ピャーねぇ」


「なんでしゅのー?」


「チョコおいしかった?」


「あい、おいしかったぁーですのー」


「紅茶も美味しかったよね?」


「あうー、しょーですわねー」


「じゃあさ、ディセとセッテにご褒美をくれないかな?」


「ごほーびー?もちろんいいでしゅわー」


「じゃあ、ディセから」


「ぴ、ピアーチェス様、ディセにピアーチェス様のギフトキーの力を、スキルをお授けください!」


「んにゃ?それはー??だ、だめですわー……ギフト授与式じゃないにょに……」


 む、まだ理性があるようだ、もう一押し。


「ピャーねぇピャーねぇ、ピャーねぇはディセとセッテが大好きだよね?」


「もちろんですわー」


「ディセが泣いちゃうよ?」


「え、えーん、えーん?」


 めちゃくちゃ下手な泣きまねをするディセ。


「……それは!だめですわー、ひっく!」


「じゃあ、練習のつもりで、ちょいちょいとギフトキーを、ね?これはあれだよ、おままごとだよ。だから、大丈夫、大丈夫」


「そうですのー?ならー、うぃっ!ディセ、あなたにスキルを授けます……わー……」


 よしっ!僕は密かにガッツポーズをとる。

 ピャーねぇは眠たそうな目をしながら、身体を左右に揺らして詠唱を行い、ディセに対してギフトキーを使ってくれる。


 ディセの前にキラキラと光が集まって、銀色の鍵が現れた。それをカチリとディセの胸に差し込んでくれる。よし、この調子だ。


「ほら、次はセッテだよ」


「ピャー様、お願いします」


「おまかせになってー、ふふ……セッテのお菓子は最高ですわー」


「あう……」


 あきらかに申し訳なさそうにするセッテ。自分のお菓子を食べて酔っぱらっているピャーねぇを見て、罪悪感を覚えているようだ。


 なんかごめん……僕の提案のせいで……と思う。セッテには、あとで謝っておこう。

 ただ、このリキュールチョコ作戦のおかげで、ディセとセッテ、2人にスキルを授けてもらうことができた。

 セッテにも銀の鍵が顕現したので、2人はBランク相当のスキルを手に入れたことになる。


「くぅ〜、すやすや……」


 ギフトキーを使い終えたピャーねぇは眠ってしまっていた。

 それを僕たち3人はなんとも言えない顔で見つめ、影からあらわれたカリンは冷ややかな目で見つめていた。


「ご主人様」


「なに……かな?」


「ご主人様は、私に、催眠スキルを奪ってきては?と提案されて怒りましたよね?」


「……はい」


「泥酔させて、騙すようにギフトキーを使わせるのと何が違うのでしょうか?」


「うぐっ!?」


 ガクッ。僕は膝から崩れ落ちる。罪悪感に押し潰されたのだ。


「ジュナ様!?」

「ジュナ様!?」


 ディセとセッテが僕の肩を両側から支えてくれる。


「カリン、催眠とは少し違うよ……姉さんの意志をむりやり変えてるわけじゃないし……違う……違うと、思いたい」


「そうですか?ふむ、そう言われてみればそうかもしれませんね?それにしても、ご主人様をわからせるのは本当に最高ですね。ゾクゾクします」


 カリンが自分の身体を抱いて、僕のことをニンマリと見ていた。

 なんて従者なんだ……


 でも、たしかにカリンの言う通り、詐欺まがいの方法でピャーねぇにギフトキーを使わせるのは罪悪感がすごい。この方法は最終手段ということにして、これからは別の方法を考えなくてはな、と思う僕であった。

「面白かった!」


「ヒロイン可愛い!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ったら


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