第21話 帰ってきた日常
バン!玄関の扉が勢いよく開く音が聞こえてくる。
「ジュナ!ジュナはいますの!?」
予想はしていたけど、僕のねぇさんだ。大きな声で僕を呼んでいる。
ただ、思ったよりも来るのが遅かった。今はもうギフト授与式が終わってから数時間経っており、空はすっかり暗くなっていた。
「はぁーい、いますよー」
なんで遅くなったんだろ?閉式後の挨拶周りとかで忙しかったのかな?と考えながらソファから立ち上がる。玄関まで迎えにいこうとリビングの扉を開けたところ、バタバタと走ってきたピャーねぇとぶつかりそうになってしまった。
「おっと」
「ジュナ!あなた!腕は本当に大丈夫ですのね!?」
ピャーねぇは、後ろにのけぞる僕の左腕をガシっと掴み、ペタペタと触りながら心配そうに尋ねてくれる。
「うん、全然大丈夫だよ。この通り」
僕は、左手を上げてグーパーグーパーと動かしてみせた。欠損した腕はすっかりと元通りであった。
「ホントですのね!?」
「うん、痛くも痒くもないよ。Sランクの治癒魔法ってすごいんだね」
「なんで!そんな他人事みたいに言えますの!あんな無茶をして!血が!血がピューって!出てましたのよ!ジュナの顔もどんどん青くなっていきますし!わたくし!心配で心配で!」
「わ、わかった。わかったから、ピャーねぇ。落ち着いて」
僕は両手を前に出して、ドードーと抑えようとする。でも、そんな僕のことを苦しそうな顔で必死に心配してくれるピャーねぇ。
「これが落ち着いてなんていられますか!あんなこと!2度としないと約束してくださいまし!」
「うん、わかった。2度と……いや……」
安請け合いで肯定しようと思った。でも、それはウソになるんじゃないかと気づいて首を振る。
「ジュナ?」
「ごめん、ピャーねぇ。それは約束できない」
「なんでですの!」
「僕は、ピャーねぇを守るためなら、これからも無茶をすると思う。だから、2度とやらない、っていう約束はできないんだ。ごめん」
言いながら、ぺこりと頭を下げた。
「ジュナ……そんな……そんなにわたくしのことを……」
顔を上げると、ピャーねぇは自分の身体を抱くようにして、片手で口を抑えていた。目はウルウルとしていて、頬は赤く染まっている。
「ジュナ!わたくし!あなたが誰よりも愛おしいですわ!」
バッと飛びつかれ、そのまま抱きしめられる。そんな姉さんを受け止めて、僕も背中に腕を回した。
「僕も、僕にとっても姉さんは特別な人だよ」
「ああ、なんて可愛い子なんでしょう……わたくし、結婚するならジュナがいいですわ……」
「……結婚?……ピャーねぇ?」
「あっ!わたくし何を言ってるのかしら!そ、そそ!そんなことよりも!わたくしの今日の勇姿について語り明かしませんこと!?なんと言ってもSランクのスキルを授与したのでしてよ!Eランクでこんな快挙はじめてのはずですわ!わたくし!お祝いしてほしーですの!」
指を空に掲げてクルクルとさせながら、目を泳がせて、まくし立てるピャーねぇ。照れ隠しなのかな?と思い、笑顔になってしまう。
「ふふ……そうだよね、そういうと思って、セッテ」
「はい!ピャー様のために、お祝いのケーキをご用意してあります!」
「ディセ」
「ディセはディナーをご用意致しました!」
「2人とも大好きですわー!」
満面の笑みを浮かべるピャーねぇが台所に吸い込まれるのを見て、僕は我慢できなくなってクスクスと笑う。そんな僕に、どこから現れたのか、カリンが声をかけてきた。
「ご主人様」
「うん、牢の鍵の手配、任せた」
「かしこまりました」
すっと、姿を消すカリン。そう、僕にはまだやることがある。
「面白かった!」
「ヒロイン可愛い!」
「今後どうなるのっ……!」
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