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第19話 虹色の鍵

「続きまして!第五王女ピアーチェス様より!ギフトを授けていただきます!セーレン・ブーケ殿!前へ!」


 隣で泣きじゃくるアズーのことを心配そうにしていたセーレンさんが名前を呼ばれ立ち上がる。ゆっくりと祭壇に向かい、階段をのぼる。青い篝火に照らされた彼の表情には、覚悟のようなものが見てとれた。


 これから、自分もEランクのスキルを授与されるかもしれない。さっき、隣で泣いていた男と同じことになるかもしれない。しかし、それでも、このチャンスを逃すなんてことは絶対にしない。

 城下町で語った彼の志は、その表情から嘘ではなかったのだと、僕には感じ取れた。


 セーレンさんが祭壇の中心あたりで膝をつくと、ピャーねぇがゆっくりと立ち上がり、階段を降りはじめる。


 まわりの貴族どもは、見た目だけがいいEランクがどうのこうのと、好き放題言っている。僕はそんな雑音を聞かないようにして、2人の姿に集中した。


 祭壇に到着するピアーチェス第五王女。中央まで歩いていき、目の前の男に語りかけた。


「セーレン・ブーケ殿」


「はっ!」


「この度は、わたくしの呼びかけに応えていただき、ありがとうございます」


「私の方こそ!このような機会を与えてくださり!身に余る光栄です!」


「ありがとうございます。それでは、ギフトの授与をはじめます」


 ピャーねぇが両手を前にかざす。目をつむって、一呼吸おいてから、祈るような詠唱がはじまった。


「……我、ピアーチェス・キーブレスは、キーブレス王国の名の下に、汝に祝福を授けよう。汝の培ってきた才、育ててきた才、それを超えるものを与えよう。この新たな才が、汝と、そして汝の大切な者たちに祝福あらんことを、切に願う。目覚めよ、何にも代え難い才覚よ。祝福の鍵、《ギフト・キー》」


 ピャーねぇの優しい祝詞が終わると、彼女の両手から、とても大きな光が溢れ出した。祭壇の上を埋め尽くすような大きな光だった。


 今日見たどの光よりも大きい。第四王子よりも、第二王子よりも、大きな光の筋がキラキラと輝き続ける。


「これは……」

「そんなバカな……」

 会場内のざわつきが聞こえてくる。


 当然だろう、彼女はEランクのはずだ。大きな光を発している当人すら、目を見開いて驚いた顔をしていた。

 でも、それよりも、『なんて美しい光なんだ』そう思って、目を奪われている人間の方が多いように感じた。


 神秘的な光景だったと思う。光が収束していく。そして、ピャーねぇの両手の間には、虹色の美しい鍵が顕現していた。その鍵を大切なものを扱うように、そっと、両手で握りしめる。


「それでは……授与させていただきます。セーレンさん、あなたに祝福を」


 カチリ。鍵を差し込まれたセーレンさんから、透き通るような音がなり、彼の身体が緑色の光を発して、すぐに消える。


「……」


「鑑定をお願いできるかしら」


「……は、はっ!ただちに!」


 ピーねぇに声をかけられるまで硬直していた司会の爺さんがあわてて2人に近づき、水晶をかざす。


「セーレン・ブーケ殿のスキルは!スキルは……Sランクの!治癒魔法なり!」


「おぉぉぉ……」

 司会の宣言に、会場から驚きの声があがる。


 祭壇にいるピャーねぇとセーレンさんは、頑張って平静を装おうとしているが、笑顔が溢れ出しそうな表情だった。

 ピャーねぇの方は、合わせた両手を握りしめている。ガッツポーズを取りたいのを我慢してるのかな、と思うと微笑ましかった。


「それでは、お二人とも、席にお戻りください」


 司会に促されて、ピーねぇとセーレンさんが席に戻ろうとする。しかしそこに、


「ふ、ふふ!ふざけるな!なにがSランクだ!何かの間違いだ!!」


 クワトゥル第四王子が立ち上がり、ピーねぇのことを指差してきた。


「クワトゥル様!神聖なギフト授与式の最中ですぞ!」


「うるさい黙れ!鑑定士風情が!おまえ!おまえがピアーチェスと結託して嘘のスキルを報告したんだな!この!国家反逆罪だ!そいつを捕らえよ!」


 大声でまくし立てるクワトゥル。しかし、衛兵たちは困り顔でお互いの顔を見合って、動くことはなかった。


「なっ!?私は国王陛下よりこの式典を任されております!誓って嘘の報告など致しません!儀式を汚す発言ですぞ!取り消されよ!」


「うるさいうるさい!そもそも!EランクのピアーチェスがSランクのスキルを授与できるはずがないんだ!なにか!なにか不正があったはずだ!誰か!誰か動かぬか!ブラウ!アズー!そやつらを捕らえよ!」


 声をかけられた取り巻きたちも、先ほどの失態があったからか、前に出ることはない。しかし、


「たしかに、EランクがSランクを授与できるはずがない……」

「なにか不正があったのなら、それこそ極刑なのでは?」


 そんな声が会場から聞こえてくる。何人かの貴族がクワトゥルに同調するようなことを言い出したのだ。

 それを聞いたものたちの声はどんどんと大きくなっていく。自分の味方がいるとわかり、ニヤけ顔になるクワトゥル。


「Sランクの治癒魔法というのなら!証拠を見せてみろ!」


「お兄様!いい加減になさってください!ギフト授与式は我が国の大切な行事!そのような醜態をさらすべきではありません!」


「黙れ!Eランク!おまえは私の物になっていればいいのだ!私の命令だけ聞いていろ!バカ女が!」


「なっ!?」


 はぁ……やっぱりすんなり終わらないか……

 ここまで大騒ぎになるとは思っていなかったが、クワトゥルのやつが文句を言い出すのは予想していた。

 だから僕は、覚悟を決めて、1階への階段に向かうことにした。

「面白かった!」


「ヒロイン可愛い!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ったら


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