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第10話 セーレン・ブーケ

 僕とピャーねぇは、セーレンさんの後をつけていく。彼は食事の買い出しに向かったようで、何種類かの野菜と肉類を買ってから、宿に戻ろうとした。

 そこで、セーレンさんは、膝が悪そうなお婆さんに遭遇する。そんなお婆さんに声をかけるセーレン氏、荷物を持ってあげて、ゆっくりとその人についていった。


「いいですわー!彼すごくいいですわー!」


 隣のピャーねぇのテンションはアゲアゲだ。

 しかし、ひねくれものの僕の方はというと、『なんだあいつ?いい人すぎて逆にうさんくせぇ』なんて思ってしまう。


 さらには、セーレンさんがおばあさんを送り届けたあと、彼は怪我をしている子猫に遭遇、またしてもポーションを使って治してあげる。


 姉さんは目をキラキラさせているが、僕のテンションはどんどん落ちていく。『いい人過ぎて草、怪しすぎるンゴ』というひねくれ根性が強くなってしまったのだ。


 宿への帰り道、広場に差し掛かったところで、「あの方にしますわー!ちょっとお話してきますの!」とかピャーねぇが言い始める。


「待ってください、ピャーねぇ」


 走り出そうとする姉の手首を握ってステイさせる。


「なんですのー?」


「胡散臭いので僕があいつの本性を暴いてきます」


「どういうことですの?」


「ピャーねぇはここにいて」


「わ、わかりましたわ」


 そして、僕だけがセーレンさんに近づいた。


「すみません。そこのあなた、セーレン・ブーケ様ですよね?」


「え?あ、はい、そうです。どこかでお会いしたでしょうか?」


「いえ、初めてお目にかかりました。私、サクリ北部を治めるファズ子爵の使用人を務めております」


「あぁ、たしかギフト授与候補の。これはご丁寧に」


 野菜などが入った紙袋を持ったまま、ペコリと腰を折るセーレン。


「それでですね。セーレン様にはお願いがあって参りました」


「お願い?なんでしょうか?」


「もし、あなたがギフト授与者に選ばれた場合、辞退していただきたいのです」


「な!?それは!?」


「大きな声を出さないでください。ファズ様は、ご子息にどうしてもスキルを得てほしいようでしてね。もちろん謝礼は差し上げます。前金としてこちらを……」


 僕は袋に入った金貨をちらつかせて見せてやる。


「ゴクリ……」セーレンさんはそれを喉を鳴らして見ていた。


『ほらな、こんなもんだよ、人間なんて』ゲスな僕は、心の中でニンマリとする。イイ人そうにしてたからって騙されないんだからね!


 しかし、すぐに首を振るセーレンさん。


「いえ……お断りいたします」


 ……あれ?


「ギフトの授与とは大変名誉なことです。それに、私になにか、領民のためになるようなスキルが発現するのならば、この機会、絶対にものにしたい。私は自分の領地の領民たちを代表してここに来たんです。ですので、お断り致します」


「な、なんだと……ぐぬぬぬ……」


「お引き取りを」


 僕が悔しそうにしていると、


「ジュナ!あなた悪趣味でしてよ!」


 後ろから我慢できなくなったピャーねぇが声をかけてきた。


「セーレンさん!あなたとってもいいですわー!ぜひ!私のギフトキーでスキルを授けたいですの!」


「え?え?ま、まさか!?ピアーチェス様!?」


 セーレンさんが狼狽し、膝をつこうとするが、


「目立つのでそういうことはやめてください」

 すぐにツッコんでおく。


「はっ!もしや、あなた様はジュナリュシア王子でしょうか?」


「スキル無しも有名になったものですね。少し人目のないところに行きましょうか」


「はっ!なんなりと!」



 僕たちは、町の中を流れる大きな川まで歩いてきた。川にかかる石畳みの橋を渡っていく。馬車がすれ違えるほどの大きい橋を歩き、中腹までやってきた。


「このあたりでいいでしょう。姉上、どうぞお話ください」


「セーレンさん!わたくし!あなたに決めましたわー!」


 そんな、ペットじゃないんだから、と思うが黙っておく。


「え?それは……先ほどもおっしゃっておられましたが、まさか私にギフトキーを?」


「ええ!ええ!わたくし!あなたのような人柄の人こそスキルを持つべきだと思いますの!」


「それは……大変光栄です!ピアーチェス第五王女様!」


 バッと膝をつく、セーレンさん。


「くるしゅうないですわー!おーほっほっほっ!」


「悪役令嬢みたいですよ、ピャーねえ」


「あら?そうかしら?とにかく!わたくし、あなたに決めましたの!素敵なスキルが発現するといいですわね!」


「はっ!ありがたき幸せ!」


「あ……でも……」


 なにかを思い出したように、急にシュンとするピャーねぇ。


「わたくし、スキルランクがEランクですの……ですから、あなたに才能があっても……よくてCランクのスキルしか……」


「そのようなこと!ピアーチェス様がお気になさることではありません!たとえEランクのスキルを授かったとしても!これは大変な栄誉だと考えます!」


 暗い顔をするピャーねぇに、力強くフォローを入れてくれるセーレンさん。


「そうですの?」


「はっ!地方貴族の三男である私にとっては、またとない機会!大変光栄なことです!」


「そうですか!それでは1ヶ月後!頼みましたわよ!」


「はっ!」


「では!帰りますわよ!ジュナ!ついていらっしゃい!」


 僕は、「おーほっほっほっ!」と高笑いしながら歩いていくピャーねぇを追おうとして、ピタリと足を止める。ピャーねぇに対して誠意を見せてくれた男に、謝らないといけない、と思ったからだ。


「セーレンさん」


「はっ!」


「さっきは試すようなことをして、すみませんでした」


「いえ!ジュナリュシア様にもお考えがあってのことでしょう!」


「僕は姉上を守りたかった。だから、悪い奴は遠ざけたいと思ったんです。すみません」


「ジュナリュシア様は、お優しいのですね」


「はは、いえ、僕は自分勝手な人間ですよ。1ヶ月後、授与式では姉上のこと、お願い致します」


「もったいなきお言葉!精一杯務めさせていただきます!」


「では、失礼します」


 僕は橋を渡ったところで僕のことを待っているピャーねぇのもとへと急いだ。


〈ついていらっしゃい〉そう言ったわりに、しっかりと僕のことを待っている彼女の姿は、とても可愛らしく僕の目に映っていた。

「面白かった!」


「ヒロイン可愛い!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ったら


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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


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