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建前と本心(レン視点)

遅れました。申し訳ございません

俺には記憶が無い。いや、無いのではなく忘れたという方が正しいのだろう。

気がついたら何も分からなくなっていた。

いつの間にか、シーウェストにいて、周りに本来存在するはずの、家族がいない。


最初の方は、誰も信じれなかった。いつも孤独だった。そんな俺を救ってくれたのが、聖女様だ。

俺に、新たな世界を見せてくれた人。

孤独だった俺に友達をつくってくれた人。

光で照らしてくれた人。

そのときの聖女様は、偶然テレストシーラへ来ていた大聖女様だった。


聖女様に出会ったことで、俺には生きる意味が初めて見つかったんだ。

この人が、ずっと輝いていられるようにしたい。涙を流さず、ずっと笑っていられるようにしてあげたいと思ったのを覚えている。


そのために、俺は聖女をどんな形でも、守れる人になると誓った。


そこから、少しでも強くなるために都市警備部隊に無理矢理入ったのはよかったが…


「なんだ……あいつは」

「主、疲れてる〜?」

「過去一な」


レンがどっと疲れたような顔をして、倒れ込む。

急遽出現した魔物の、討伐現場で出会ったアリー・サイレント、とかいう信じられないくらいイカれてるやつ。


「討伐命令も受けていない魔物を勝手に倒した罰なのか?」

「どんまい」

「今日より疲れた日なんてないぞ」

「日頃の行いが悪いんだよ〜」


俺の気も知らず、あくびをするウィンドを見て段々とイラついてくる。俺とウィンドは主従関係だが、ウィンドが俺を敬ってくることはない。俺の言うことに、子どものように無邪気に悪気なく(?)返してくる。


「まさか主が一番、嫌いな貴族と関わるとはね〜」

「一応プラマイゼロの関係だ。こっちも頼み事したしな」


あいつ自体に利用価値があるかは別として、公爵家長女としての利用価値はあるだろう。

レンの表情を見て、何を考えているのか悟ったウィンドが、顔をひきつらせる。


「うわぁ…アリー可哀想…」

「察するな、ウィンド。お前も俺の性格は知ってんだろ」

「主って性格悪いね〜」

「まぁな。」


ウィンドにそう言われても、性格を変える気はさらさらない。

基本的に、俺はこの町と自分の大切な人を守れるのならそれで良い。そのために必要なことは、とことん利用する。それが、どんな結果を招いても…


「契約だからな。家出の手伝いはしてやる。だが、それで終わりだ。」

「ふーん、そっか〜」

「ああ。」


自分探しに付き合えと言ったのは、建前にしか過ぎない。本当の目的は、あいつが持っている情報。公爵家の情報でも、貴族の情報でも、どんな情報でもいい。

アッドレッドで、有利に動くための情報だ。

(自分の事になんか、興味ねぇしな。)

そう考えつつも、レンの脳裏にはアリーの言葉が過ぎっていた。


「平民は自由…か。ウィンド、」

「なに〜?主〜」

「貴族って苦しいと思うか?」

「えっ、いきなりなに…」

「気になっただけだ。分かんねぇなら、いい」


妙に気になった。アリーが言っていた言葉が……。

平民は、別に楽では無い。起きたら、労働。夢の中でも労働。みたいな生活だ。貴族みたいな豪華で派手な生活とは程遠い。そんな生活を送っている存在が、自由…?理解出来ず、頭を悩ませる。


「うーん、でも貴族も自由とは言えないよね〜。」

「それはそうだが…」

「アリーにも事情があるんじゃない?主も記憶喪失だし、王族も呪いかかってるしさ〜」

「そうだったな。」


それもそうか、とウィンドの言葉にレンが納得する。誰にも事情はあるだろう。ただ…


「何なんだろうな、あいつ」

「ん〜、?」

「あいつの……いや、やっぱいい」

「ええ〜教えてよ〜」


ウィンドの言うことを無視して、魔道具に、都市警備部隊の連絡が入っていないか確かめる。部隊の中で、魔術が使えるのが俺だけだからなのか、魔物が現れたとき、倒すのはほとんど俺だ。


「ウィンド、行くぞ。連絡が入っている。魔物が出現した」

「は〜?また〜?最近多くて疲れた」

「確かに、最近多いよな。王都にいる聖女様は、大丈夫だろうか」

「まあ、あそこは巫女騎士いるし〜大丈夫でしょ」

「ああ。俺はとにかく、魔物を倒し続ける」


レンがウィンドにそう言ってから、無詠唱で魔法を発現する。 その頃、王都は…



「大聖女様が予言を授かったぞ」

「おお、ついに!」

「大聖女様!創造神は一体、なんて言っておられるのですか!?」


人々の、大聖女様!と彼女を崇める歓声が起こる。


大聖女 リュミエール


彼女は、史上最年少で聖女の地位へと登りつめた天才だ。彼女は今日、予言を授かった。創造神アミューラから。


「創造神様はおっしゃいました。光と、悪…この二つが同時に生まれると。悪の正体はまだ分かりません。ですが、光の正体について私は思うことがありました。」


リュミエールの言葉を人々が真剣に聞いている。

数千年振りの、予言だからだ。


「この光とは、私の跡を継ぐ者。大聖女の素質を持つ者がいます。そして、この光と悪で争いが巻き起こる……。」


この言葉に、人々の間で動揺が走った。


「争いを集結する者…聖女よりも尊い存在がこの世に産み落とされたようです。神の子の存在が」


これが、リュミエールが授かった予言だった。近いうちに、争いが起きる。それを止める者が現れる、と。

この予言は果たして真実なのだろうか。神の偽りの予言となるのか、それはまだ、定かではない。

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