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第四部 金髪の奇行種

 「次の星は、ゴールデン・バームクーヘン、ゴールデン、バームクーヘンです。停車時間は2時間です。」

 「2時間て、短くない?」

 「下りなくてもいいんじゃない?」

 汽車は惑星ゴールデン・バームクーヘンに向かって降下し始めた。車窓から駅が見えたが、そのすぐそばにあったものが目をひいた。

 「何あれ? バームクーヘンみたいなのが見えるよ。」

 「星の名前のまんまじゃない?」

 「お菓子の家のたぐいかな?」

 汽車が高度を下げるにつれ、そのバームクーヘンのようなものの中に四角い枠があるのが見えてきた。

 「あれ、スタジアムみたいだよ。サッカーか何かの。」

 「まあ、今見たところ、ゲームもしてないし、お客さんもいないみたいだから、わたしたちが見に行くことはなさそうね。」

 一行はこのまま発車まで車内にとどまろうかと考えていたが、一つ大きな問題が発生していた。ナツメの具合が悪いのだ。どんな時でも、特に停車などの場合に一番騒ぐはずのキャラがぐったりして静かなのだ。みんな意外な出来事に気が気でなくなった。

 「にいちゃん、風邪でもひいたの?」

 フィグがナツメの額に手を当ててみた。

 「微熱があるみたいね。」

 「兄貴が具合が悪いなんて初めて見るよ。」

 「ああ、なんでもない。」

 「医者に診てもらわなくていいの?」

 いろはの言葉を聞いてオキタが駅近くの病院を検索してみたが、待ち時間だけでも3時間だったので行くこともないと判断した。

 「病院はどこもいっぱいのようです。列車の中で療養した方がいいでしょう。」

 「でもわたしは勝たねばならない。わたしは銀河を手に入れるのだ。亡き友との約束なのだ。」

 「どうしたんだ? 何言ってるんだ? 銀河を手に入れるってなんだよ。亡き友って誰だよ?」

 「兄貴、死んだ友達なんていないだろ?」

 「にいちゃん、熱でうなされてるの?」

 「あの男は、わたし以外の者に負けることは許されない。わたしはあの男に勝たねばならぬ。」

 そう言ってナツメはフラフラと立ちあがり、荷物を持って列車を降りる準備を始めた。

 「おい、何やってるんだよ? 降りるつもりか?」

 「あの男が戦場で待っている。オキタ、急いでここに書いてあるものを手に入れてくれるか? 決戦開始まで間に合わせてくれ。みんなはどうする? わたしは一人でも戦う。」

 「みんなで押さえつけて寝かしたほうがよくないか? 頭いっちまってるぜ。」

 「このゴールデン・バームクーヘンの命運がかかった戦いなのだ。逃げることは負けることよりも忌避すべき悪だ。」

 みんなはすっかり呆気にとられてしまった。ナツメはフラフラしながら今にも汽車を降りようとしている。

 「ねえ、ロカトにいちゃん、どうしたらいいと思う?」

 「う~ん。あのセリフ回し、どこかで聞いたような読んだような・・・」

 いろははナツメの行動に意味があるのかどうか確かめたくなり、オキタにナツメの頼んだものを確認してみようと思った。

 「オキタ、ナツメは一体何を頼んだのかメモを見せてくれる?」

 「メモは商品番号と数だけでした。すぐに来ると思ったのでとりあえずそのままオーダーしました。一応何なのか確認しようとしましたが、画像は出てこなかったんですよ。」

 「どういうことなの? でも、品物はオキタのところにワープ配送されるんだよね。え、ちょっと待って、この世界でも超空間配達のサービスが使えるわけ?」

 「そうなんですよ。驚きました。と、それより、ちょっと確認してみますね。」

 オキタはタブレットの発注履歴を見て驚いた。

 「あれあれ、受取人の名前が匿名なんですが、説明がドイツ語なんですよ。」

 「なんなのそれ。それでもオキタのところに届くの?」

 「いえ、匿名なので隠されてますが、恐らくナツメ君に届くんじゃないでしょうか。」

 みんながタブレットに気を取られている間に、ナツメはすでに汽車を降りてしまっていた。

 「しまった。どこいったんだ?」

 「まだそんなに遠くに行ってないはずだよ。」

 みんなは急いで汽車を降りたが、不思議なことにナツメの姿はどこにも見当たらなかった。

 「そんなはずはないわ。目の届くところにいるはずよ。テレポートでもしたのかしら?」

 「おーい、ナツメ、どこいったんだ?」

 アルファが声を張り上げたので、立ち止まったり驚いたりしてアルファの方を見る人がいたが、ナツメの返事はなかった。

 すると突然、サイレンが駅の構内に鳴り響き、緊急の館内放送が流れ始めた。

 『緊急警報! 緊急警報! 不自由同盟軍が襲来! ゴールデン・バームクーヘン軍はただちに応戦準備に向かってください!」

 「なんだ? 戦争が始まるのか? こんな時にナツメの奴!」

 手分けして探そうにも見知らぬ土地で時間もないし、しかもナツメの頭がどうかしてるきたら、一体どうすればいいのか?

 「ナツメはタブレットを持っていってない?」

 いろはの言葉を聞いて、急いでオキタはタブレットのGPSを確認した。

 「さすがはいろはさん。よかった。ここでも使えます。これがわたしたちのいるところです。ナツメ君はと・・・ああ、ここです。ん~、汽車から見たバームクーヘンのような建物に向かってるようですよ。追いかけましょう。」

 オキタの呼びかけに応じ、みんなはナツメのポイントまで駆け出した。ナツメはゆっくり歩いていたのですぐに追いつくと思われたが、おかしなことが起こった。

 「え、もう見えていてもおかしくないんですが・・・」

 ナツメを示す光点のすぐ後ろにいるはずなのに、ナツメの姿が見えない。大勢の人がサイレンと警報を聞いて慌ててはいるが、人の流れはそれなりにまばらでスムーズだ。すぐ目の前にナツメが見えるはずなのだ。

 「どうなってるんだ? あいつは透明人間にでもなったのか?」

 オキタはもう一度タブレットの画面を見つめた。この歩くスピードと自分たちからの位置関係に該当する人物がいないかどうか。すると、目の前に見事な金髪の青年が荷物を抱えた軍人とともに歩いているのが見えた。軍人のために頭しか見えなかった。

 「みなさん、金髪の青年がナツメ君の光点の示していますよ。」

 「なんだって?」

 アルファが走ってその金髪の青年に追いつき、前に回って顔を見てすぐ戻ってきた。

 「肌が真っ白で目が真っ青の男だったよ。声をかけてみる? 服は違ったよ。」

 「とりあえず、ついて行ってみましょう。タブレットは彼を示していますし、それ以外に手がかりはないですし。荷物を持っている軍人とトラブルになっては困るので、今は様子を見るだけにしましょう。」

 一行は金髪の青年たちのあとをついていった。そして上空から見たバームクーヘンのような建物に到着した。そこはスポーツのスタジアムに違いなかった。しかし、大勢の軍人がいて入場制限がかけられていて、限られた人間しか入れないようだった。金髪の青年は入場門に躊躇なく進んでいったが、そこにいた軍人は最敬礼の形で青年を迎えた。軍人は黒を基調として銀の装飾をあしらった美しい服を着ていた。

 「閣下、到着をお持ちしておりました。敵はすでに布陣を敷いております。」

 「うむ、こちらも準備はできている。勝利する準備がな。」

 「ハッ! ジーク・カイザー!」

 「なんなんだ?」

 「どうする? ついていくにも、銃殺される可能性が高くない?」

 みんながどうするか考えていると、突然軍人たちに取り囲まれてしまった。

 「え、え?」

 驚いて硬直してしまった一行に対し、軍人たちは先ほどの青年に対するのと同じように最敬礼で話しかけてきた。

 「あなたがたが今回のミッションの精鋭ですね。こちらです。」

 何が何だかわからないまま、一行は原人たちに連れられてスタジアムに入って行った。連れていかれた先は、選手の控室だった。ドアを開けるとそこには先ほどの金髪の青年が立っていた。彼は軍人と同じ黒を基調として銀の装飾をあしらった軍服を着ていたが、下は半パンだった。

 みんなは笑っていいものかどうか判断に苦しんだ。その青年はみんなに声をかけた。声はナツメのものだが、先ほどと同じように口調はナツメっぽくなかった。

 「よし、勝利の布陣がそろったな。我々は銀河統一のための最終決戦に臨むのだ。今日こそは不自由同盟軍を完膚なきまでに叩きのめし、我がゴールデン・バームクーヘンに栄光をもたらすのだ。このカール・ハインツ・フォン・ローエングラムはここに勝利を宣言する。勝利はすでに確定している。このうえはそれを完全なものにせねばならぬ。」

 「やっぱり兄貴だな。」

 「え? なんでそうなるの?」

 「兄貴はいつもシャアのものまねばかりするけどね。あれだけセリフ真似するの、兄貴しかいないよ。でも、名前、なんか変だね。なんか混じってるよ。下半身も変だし。」

 みんなの考えがまとまらないまま、カール・ハインツ・フォン・ローエングラムは側近に命じてみんなに服らしきものを配った。

 「それを身にまとうのだ。我が帝国軍人の誇りだ。急げ、開戦まであと30分だ。」

 「何言ってんだ。てめえは自分が誰かわかって言ってるのか?」

 「わたしほど自分が誰であるかを知っている者はいない。そしてこの90分で銀河の運命が決まるのだ。心してかかれ。」

 ロカトがナツメの性格を考慮してアルファに告げた。

 「アルファさん、ここはそのまま流れに乗るしかないと思いますよ。90分で答えが出ると思います。なんでああなっちゃたのか、さっぱりわかりませんけど。でも、実は俺、この状況面白いと思っちゃってるんですよ。」

 「まあ、この変な世界、首突っこんでとことん突き進むしかないかもね。」

 前の二つの星が排泄ネタだったので、今回の硬派な展開はみんな歓迎モードと言えた。が、あの短パンで笑いを誘っているようにも見えた。

 全員が着替えを済ませたが、なぜ短パンなのか、その理由がわかった。銀河の命運がかかった戦いだと言っていたが、その決着をサッカーでつけるのだった。汽車でナツメがオキタに注文を頼んだのはこれだったらしい。

 「この展開はナツメが突っこんで一人で笑っているものなのに、あいつがあれでは収拾つかないぞ。」

 「俺とフィグとで何とかしますよ。」

 「いや、そんな真面目に取り組むものじゃないと思うが。」

 「それにしても、練習も作戦もなしにいきなりサッカーの試合なの?」

 「相手は見限り屋ンだ。」

 「え、今何と?」

 「不自由同盟軍のキャプテンで、見限り屋ンという名前だ。」

 「ミラクル・ヤンじゃなくて、見限り屋ン? だしゃれが苦しい上になんか裏切り者って感じだけど?」

 「今日こそは奴の思い通りにはさせん。」

 「何か作戦は?」

 「各個撃破だ。」

 「いや、意味わかんないし。」

 「我々が敵より圧倒的に有利な態勢にあるからだ。わが軍は敵に対し、兵力の集中と機動性の両点において優位に立っている。これを勝利の条件と言わずして何と呼ぶか!」

 「いやいや、相手のこと、何にも知らないし。サッカーなんていきなりできないし。」

 「明日には君たちはその目で実績を確認することになるだろう。」

 「いや、明日じゃ間に合わないし。」

 「もうすぐ、宇宙は我々のものになる。」

 ナツメが好きそうなやり取りが続いていたが、ついにキック・オフの時間が来てしまった。

 ピッチに立ったメンバーは、ゴールキーパーがオキタ、ロカトがディフェンス、アルファいろはフィグで三角形の中盤を形成し、カール・ハインツ・フォン・ローエングラムがトップ下に入った。フットサルのような感じになった。

 対する不自由同盟のメンバーなんて誰も知る由もなかったが、一人だけ思いっきり外れているのがいた。もはや笑いを全部持っていきそうな男だった。みんな『こいつが屋だな(見限り屋の屋が名前らしかった)』と思った。見限り屋ンは何とゴールマウスの上にあぐらをかいていたのだ。

 「なんだあれ? ゴール守る気ないじゃん。何か得体が知れないけど。」

 そしてついに銀河帝国軍のキックオフで運命の一戦が始まった。

 カール・ハインツ・フォン・ローエングラムはボールを持つと、いきなりシュートの体勢となった。

 「くらえ! ヒルダ―・ショット!」

 『バシッ!』

 なんと開始数秒で放たれたシュートは、ごくごく当たり前といった感じでゴールに吸い込まれた。

 『ピー! ゴーーール!帝国軍に1点が入った!』

 「そうか! ヒルダ―・ショットだ!」

 「ロカト兄ちゃん、知ってるの?」

 「ああ、100パーセントせいこうするシュートだよ。でも・・・」

 「でも?」

 「たぶん、一回きりだと思う・・・」

 「なんでせいこうをひらがなで書いてんだよ!」

 アルファがあえて突っ込みを入れた。

 「何で一回きりなの?」

 「一発で決めちゃったから・・・」

 「二回目はないの?」

 「恐らくね。」

 ロカトの予想通り、カール・ハインツ・フォン・ローエングラムはそれからベンチに引っこんで寝転んでしまい、すっかり病気が悪化したようだった。

 「そうか、汽車の中でぐったりしてたのはそういうことだったのか。やっぱり兄貴だ。」

 「1点だけ取ってさようならとは、試合前の態度はなんだったんだよ!」

 アルファがブーブー言ったが、もはや上の空だった。

 見限り屋ンはゴールマウスの上からピッチ上の選手に指示を飛ばしていたが、なにせゴールががら空きだったので、進撃の巨人の星で鍛えられたロカトとフィグ、運動神経のいいアルファといろはのシュートはかなりの確率で決めることができた。

 しかし、所詮は素人集団だった。普通にぼろ負け状態となっていた。負けず嫌いのアルファといろははひたすら悔しがっていた。

 「これ、負けたらどうなるんだろ。銀河の命運とか言ってたけど。」

 「ただのサッカーの試合だろ。内容には納得いかないけどな。本人寝てるし。」

 試合は不自由同盟軍ペースで進み、帝国軍の勝利はあり得ないものと思われた。そしていよいよ審判が時計を見始め、ホイッスルと思われた瞬間、何と相手チームの監督が試合放棄してしまった! 結果、帝国軍の不戦勝となったのだった。

 「何だそれ?」

 「もしかして、ヒルダ―・ショット場外乱闘バージョンってことかな?」

 そのとおりだった。不自由同盟軍は外交圧力に屈し、ピッチの試合が決まってしまったのだった。

 「結局わけのわからんネタで試合が決まったってことかよ。」

 「それよりも、時間がないわ。もうすぐ列車の発車時刻よ。」

 「ナツメはどうするんだ?」

 「どうせ寝てるから、あのまま連れ去って行こう。」

 そこへとてもきれいな女性がみんなの前に現れた。

 「もしかしてヒルダさん?」

 ロカトは『もしや』と思って聞いてみた。

 「え、そうです。わたしのことをご存じなんですか?」

 「ま、まあ、詳しく話している時間はないんですけども。」

 そこへフラフラしながらカール・ハインツ・フォン・ローエングラムが歩いてきた。

 「ああ、ふろ入らないんか?」

 「ど、どうしたんですか? それに、名前を微妙に間違えてますよ。」

 「ヒルダさん、この人、カール・ハインツ・フォン・ローエングラムじゃないんですよ。俺たちも信じられないんですけど、彼は俺の兄でナツメというんですよ。」

 「そうなんですか。名前も微妙に違いますもんね。カール・ハインツ・フォン・ローエングラムだなんて。本物はそのうち帰って来ると思います。あの汽車がやって来て、なんか変だなとは思ったんです。もう、『ヒルダ―・ショット』なんて変なシュート打ったりして。どうしたら元の世界に戻せるんでしょう? 本物の皇帝は帰って来るんでしょう?」

 「とにかくナツメを元に戻すのが第一歩かな。それにはあんたのような美人がうってつけだね。しかも結婚するんでしょ?」

 「え? え?」

 「あ、まだ時系列は後だったかな。」

 「歴史の先走りはダメなんじゃないの?」

 「もう、話の腰が折れてるじゃないの。それでアルファ、どうしたらいいというわけ?」

 「そう、ヒルダさん、ちょっと。」

 と言ってアルファはヒルダに耳打ちした。

 「ええ? そんなこと言うんですか。彼が本物だったらわたし、一生顔を合わせられませんよ。」

 「時間がないのよ。頼むよ。」

 みんなの焦りを感じてヒルダはカール・ハインツ・フォン・ローエングラムに向かってこう言った。

 「あ、あなたのパンツ、洗わせてください!」

 「何を言ってるんだ、ヒルダ、どうしたんだ?」

 「なにー! なぜまともな態度なんだー? まさか本物なのかー?」

 「アルファさん、ちょっと違うんじゃ・・・?」

 「どう違うのさ?」

 「こんな時に兄ちゃんがいればなあ。」

 「あのいかれた発想が必要だってのか?」

 今度はロカトがヒルダに耳打ちした。

 「そ、そんなー。」

 「お願いします!」

 ヒルダは仕方なくロカトの言った言葉を口にした。

 「あ、あの、わたしのパンツ、洗ってくださいますか・・・ひどい、こんなこと言わなきゃならないなんて・・・」

 するとカール・ハインツ・フォン・ローエングラムは何も言わず、回れ右してロッカールームへ消えていった。

 「なんだ? どこいったんだ?」

 しばらくしてカール・ハインツ・フォン・ローエングラムが帰ってきた。手に何か持っている。彼はヒルダの前に来ると、その持ってきたものを示して言った。

 「これが足りないよ。」

 そしてそれをヒルダにセットした! それはかつらと眼鏡だった。

 「ムッシュ・ナカノにならないと完成じゃないぞ。じゃあ、もう一度。」

 ヒルダはさっきの言葉を恥ずかしくて泣きながらくり返した。すると、『ポンッ』という音とともに煙が出てカール・ハインツ・フォン・ローエングラムはナツメの姿になった。

 「あれ、どうなってるんだ? あ、今プロポーズだった?」

 「い、いえ、気のせいです。全部ウソです。」

 なんとかヒルダはそう言った。

 「急がなきゃ。もう発車まで時間がないよ。」

 「ヒルダ―・ショットなら一発だよ。」

 「だまれ!」

 マグマのような怒りをこめてナツメはヒルダに蹴られてしまった。

 「あいたたたた、なんでこうなるの?」

 とにもかくにも一行はロッカールームに駆け戻って荷物をかき集め、走って汽車に戻った。駅に着いたときにはすでに発車のベルが鳴っており、滑り込みセーフで発車に間に合った。

 「ハー、ハー、今日はいっぱい走ったね。」

 「まったくだよ。」

 「一体全体、ナツメ、一体どういうつもりだったんだ?」

 「ぼくもよく分からないよ。なんで変身しちゃったのやら。夢とも現実ともつかなかったよ。すっかりなりきってたけどね。自分は皇帝なんだって。そういえば、駅に着く前、例の金のうんこが熱くなってきたんだよ。そこで夢と現実がごちゃ混ぜになった感じがしたかな。」

 「にいちゃん、また賢者の石が発動したんじゃないかな?」

 「え? どんなふうに?」

 「結構あの星、危ないことが起こりそうだったのかも。にいちゃんのふざけた発想を必要としてたんじゃないかな。特にあの女の人、平和に物事を解決したいと願ってたんじゃないかな。そんなときにわたしたちがあの星に引き寄せられたんだと思うよ。」

 「でも、最後に蹴られて痛かったよー。」

 「グーパンでなくてよかったな。おい、これ書いてるやつ、今回の話は蹴りりれられても反論できないぞ。」

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