プロローグ 回る回るよ木馬は回る
「あ~!あった、あった!回転木馬だ!ナツメ、こっち、こっち。早く~!」
「分かってるよ。そんなに焦らなくても。」
「何言ってるの。自分の方が焦ってるくせに。」
二人は有名なテーマ・パーク、バイオレット・スパーガーデンに来ていた。アルファは念願のアトラクションの回転木馬を見つけ、乗り場に向かって走り出していた。
「二名様ですね。」
係員がチケットを確認し、二人はホワイトベースの姿をした乗り物に乗り込んだ。
「お、艦橋が再現されているぞ。」
「じゃあ、ボクはブライトさんの所に坐るかな。アルファはミライさんがいい?セイラさんがいい?フラウ・ボゥはここじゃないよな。」
「何グダグダ言ってんのよ。あんたの望みはそんなんじゃないでしょ。さっさと服脱いでよ。」
「え~!?ここですんの?すぐに一周しちゃうよ。」
「ふん、どーせ、あっという間じゃないの。坊やだからさァ。」
「何語尾上げてんの~・・・って、ほんとにいいの?」
ナツメは大喜びでアルファに近づいた途端・・・
『ドッカーン!!』
キャノン砲がホワイトベースを貫いた。
・・・・・「あいたたたた・・・」
ナツメはベッドから転げ落ちて目を覚ました。
「くっそー!!マ・クベの奴、人の恋路を邪魔しやがって。ぜってー許さねえ。ってボクはベッドじゃなくて布団で寝てたはずだけど。話の都合上、ベッドでないとオチがつかないってわけ?」
非常に目覚め悪くナツメは体を起こした。何気に窓から外を見ると、オキタがこちらに向かって歩いてくるのが見えた。ナツメは窓からオキタに呼びかけた。
「お~い、オキタ、うちに用事かな?」
オキタが手を振って答える。
「あなたに渡したいものがあります。そちらに行きますね。」
ナツメはオキタを家に迎え入れ、要件を聞き始めた。
「ヒミコ様からターントリプルナインの切符と、バイオレット・スパーガーデンのフリーチケットを預かってきました。」
「ヒミコ様、本当に用意してくれたんだ。」
「そうです。ナツメ君の弟くんと妹さんの分もあります。アルファさん、いろはさんも一緒にどうぞ。テルーさんは行かないそうです。」
「テルーは行かないの?なんでだろ?」
「何でも、ナツメ君の冗談についていく自信がないそうです。」
「いろいろ突っ込まれるの嫌なんだろうな・・・まあ、でも今回はテルーのネタ引き出すの難しそうだね。オキタの奥さんと子供たちも一緒に行くんだよね?」
「彼女たちは先に行ってるんですよ。なんでも早く行かないと『ひとりでプリキュア・ショー』が終わってしまうというので。」
「ひとりでプリキュア?よくスポンサーが許可したね。おもちゃの売り上げめっちゃ少なそうだよ。」
ナツメは弟のロカトと妹のフィグを呼んだ。
「お~い、ロカト、フィグ、あのバイオレット・スパーガーデンに行けることになったぞ。」
「ほんと、いやっほ~い!俺は『がんばれ五右衛門風呂』に入るぞ~。」
「なんか渋いの選択したね。」
「わたしはお化け屋敷がいいな。『めぞん残酷』。」
「なんか名前が不気味だね。どんな管理人さんなんだろ?声がナウシカだから、でっかい虫もいるかもね。」
「兄貴は何がいいんだい?」
「ボクは『ジョジョの奇妙な事件簿』かな。」
「何それ?もしかして刑事コロンボが好きなスタンド使いが事件解決するの?宿帳にQ太郎って書かなきゃね。テーマ・パークでスタンド再現できるの?」
「なんかね、子供の姿になって蘭ちゃんと風呂入って・・・いやいや、麻酔中毒のおじさんを使って事件解決するアトラクションだよ。」
「そうだね、今まで何百回麻酔打たれてるんだろうね。」
三人の話が盛り上がっているところへ、オキタがスパーガーデンのパンフレットを見せてくれた。
「はい、これを見ておくといいですよ。いろいろ用意もあるでしょう。出発は二日後です。朝六時に99番ホームで会いましょう。」
そう伝言してオキタは帰って行った。
ロカトが思い出したようにナツメに尋ねる。
「そう言えば兄貴、アルファさんと結婚したんじゃなかったっけ?」
「そのはずなんだけどな~。なんか、なかったことにされてるような・・・パート2を始めるにあたってリセットされてしまったような・・・生殺しだよ。」
「にいちゃん、スパーガーデンでデートしたら?」
「そうだね、そのつもり。回転木馬に乗るぞ!」
三人は明後日のバカンスに心を躍らせた。