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 暑い日を選び、噴水のある裏庭にアルフォンスを呼び出したビアンカは、自分で服に泥を塗り、噴水の水を浴びてずぶ濡れになるとその場に座った。

 思った通り、噴水の前に座り込んだビアンカを見てアルフォンスが慌てて駆けて来て、ビアンカの手を優しく取ると立ち上がらせながら聞いてきた。


「こんな酷い事をするなんて許されるはずがない。誰にやられたのだ?」


「男爵令嬢の私なんかが婚約者のいるアルフォンス様と仲良くしたのがいけないんです。だから池に突き落とされても仕方ありません」


 肩を震わせて涙を流しながら答えるビアンカを呆れた顔で見ていた女生徒に預けたアルフォンスは、急いでエリーゼの所に来て怒鳴り始めた。


「エリーゼ!貴様はビアンカをいつも虐めているそうだが、水に突き落とすなどまるで悪魔だな。私はここに来る前に、裏庭の噴水の所でずぶ濡れになり、泣きながら震えているビアンカを見つけて助けて来たんだ。

今度こそ言い逃れは出来ないと思えよ。お前はビアンカを殺す気なのか!!」


 エリーゼと一緒にいた生徒達はアルフォンスの言葉に驚いたが、すぐにビアンカがまた何かやったのだろうと思った。


「アルフォンス様、そんな事はあり得ません」


「そうです。エリーゼ様は朝からずっと私達と一緒にいます。噴水の近くにも行っていません」


 生徒達の話を聞いてアルフォンスは何だかおかしいと思ったが、よく分からなかったので


「そう言う噂を聞いたのだ。お前は日頃の行いが悪いからそんな事を言われるようになるんだ!これからは気を付ける事だな」


 と言うと去って行った。


 エリーゼは庇ってくれた上にアルフォンスに意見までしてくれた友人達に心からお礼を言った。


 アルフォンスが、エリーゼを追及しに行ったら他の生徒にそんなはずはないと言われた話をするとビアンカは、


「やっぱり、男爵家の私なんかじゃあ駄目なんですね。エリーゼ様はミルバーン侯爵家の令嬢ですもの、皆も言いなりになるしかありません。私のような者がいくらほんとうの事を話しても誰も信じてはくれないのですね」


 と、悲しそうに泣いてみせる。すると可哀想にとビアンカを抱き寄せながらアルフォンスは言った。


「私は皆がなんと言おうがビアンカを信じる。必ずあの悪魔のような女とは縁を切り、ビアンカを妃にすると誓うよ」


 それを聞いたビアンカがニヤリと笑った事にアルフォンスは気付かなかった。



*****




 卒業まであと数日という日、ビアンカと幼馴染の子爵令嬢がこっそりとエリーゼに知らせに来てくれた。


「エリーゼ様、ビアンカが私の所に来て自慢気に教えてくれたのですが、アルフォンス様は卒業パーティーの場でエリーゼ様との婚約を破棄し、ビアンカとの婚約を発表するつもりです。

私は、親同士の関係で幼い頃はビアンカと会うことが多かったのですが、ビアンカには何度も痛い目に遭わされて来ました。大切にしていた物を奪われた事も1度や2度ではありません。だから分かるのです。

ビアンカは他人を陥れてでも欲しい物を手に入れるまでは諦めない恐ろしい人です。エリーゼ様、どうか気を付けてくださいね」



 その日、家に帰ったエリーゼが父の執務室に行き話があると言うと、父は嬉しそうな顔をして言った。

 

「エリーゼが話があるなんて珍しいな。まあ入って座りなさい」


 中に入り、少し固めのソファーに座ると、父の秘書も兼ねている執事のセバスが紅茶を淹れてくれた。

 エリーゼは紅茶をひとくち飲むと、アルフォンスがビアンカと親しくしている事を話した。

 すると父は言った。


「やっと話してくれたんだね。アルフォンス様とウォード男爵令嬢の事はしばらく前から報告を受けていたんだ。実はエリーゼがいつ言いに来てくれるのかと待っていたんだよ」


「お父様もご存知だったんですね」


「ああ、王宮や学園でのエリーゼの事は耳に入るようにしてあるからね。婚約してからずっとアルフォンス様のエリーゼに対する態度には納得いかなかったが、ウォード男爵令嬢との不貞はまた別で許す事はできないと思っている」


 エリーゼは、アルフォンスからはビアンカを虐める悪魔だと言われた事やその時に他の生徒に助けてもらった話をした。

 そして子爵令嬢から聞いた話をすると、父はうーんと考えながら言った。


「学園の卒業パーティーとはいえ、多くの貴族が集まる公の場でわざわざ婚約破棄を宣言するような馬鹿はいないとは思うが……まあ、アルフォンス様なら有り得る話という事か。

それよりもエリーゼがそんな屈辱を受ける事の方が心配だ」


「私は大丈夫です。アルフォンス様は、最初から私の事を酷く嫌っていました。だからこそ公の場で私を貶めようとして、どんな無茶を言ってくるか分かりません。もしもこの家にまで迷惑がかかるようなら、お父様、どうか私を見捨て、修道院にでも送ってください。私は何より家族が大事なのです。この家に何かあるくらいなら……」


 父はエリーゼに最後まで言わせず、少し怖い顔で言った。


「エリーゼ、あんな王子のために娘を見捨てるだなんて、私をそんな情けない父親にしたいのか? エリーゼを修道院へ送るくらいなら、この家を捨てても構わないと思っているくらいだ。私やレオナルドの事は心配しなくても良い。私はエリーゼの事を心配しているんだ。

エリーゼに非がない事は分かっているのだから、アルフォンス様が婚約破棄をする気ならそれを止める気もない。アルフォンス様から婚約破棄を告げられたら、エリーゼはその場で婚約破棄を受け入れてすぐに帰って来れば良い。心配しなくてもエリーゼに手出しはさせないよ。何があっても私はエリーゼの味方だ」


 父の言葉を聞いて、エリーゼは、これで何があっても大丈夫だと安心して執務室を後にした。

 

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