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 フレドリックが馬を走らせて城に着くとマイケル達が待っていた。


 マイケルから話を聞いたフレドリックは、すぐに出ようとしたが、帰ったばかりで疲れた身体は思うように動いてくれない。

 グラムにも準備は任せて、まずは食べて寝るように言われ、フレドリックもそれに従うしかなかった。



*****


 王宮では、いよいよアルフォンスの結婚する年になり「春の祝宴」を前に、ビアンカにもドレスが届けられた。


 王族が王室主催の祝宴に参加する時の衣装や装飾品は、その時の身分によって大まかな決まりがある。


 ビアンカはまだ婚約者ではあるが、3ヶ月後には王太子妃になる事が決まっているため、今回は宝飾品に合わせてドレスが準備される事になった。


 喜んでドレスを試着したビアンカの耳に、エメラルドのネックレスとピアスのセットが見つからないと言う女官の声が聞こえてきた。


 髪を結いながら侍女が言うには、今回、婚約者のビアンカはアルフォンスの瞳に合わせて作られたエメラルドの宝飾品を身に着ける事になっている。

 王族が公の場に出る時は、自由に身に着けるものを選ぶ事がなかなか出来ないので、せめて髪はビアンカの好みに合わせてくれると侍女は張り切っていた。


 ビアンカは本屋に売った宝飾品の中にエメラルドのネックレスもあった事を思い出し、恐ろしくなった。

 ビアンカが盗んだ事が分かれば、どんな罰を受けるか分からない。

 だが、王族の血を引く者のほとんどが緑色の瞳をしているのため、エメラルドのネックレスはたくさん置いてあったはずだ。


「エメラルドのネックレスなら何本もあったはずですが…… 」


 ビアンカが言うと、女官の1人が教えてくれた。


「王族の血を引く方は確かに緑色の瞳をしている方が多いのでエメラルドの宝飾品は多いのですが、1品足りとも同じ色の物はないのです。

アルフォンス様の緑の瞳には少し青い色が入っていますでしょ? 今探しているのは同じような色の石を探して、シェルリア王妃様がアルフォンス様のお相手のために作らせた特別なネックレスとピアスなんです。宝石の部屋には、今まで王族が身に着けた唯一無二の宝飾品もたくさん置かれていて、私達もどれがどなたの瞳の色の宝飾品かを覚えるのは大変なんですが、確かな物を見る目が養われる事になり、あの部屋に置いてある宝石の事が分かるようになると、商人に騙されなくなりますよ」


「そうなんですか……」


 ビアンカの顔色が変わったのを見て心配した侍女達が言った。


「王宮の衣装室には王族の女性が代々身に着けてきた衣装や宝飾品の全てが納められています。そのため衣装室の扉の前には常に騎士がいますし、部屋の中には女性の騎士もいます。それに女官や侍女がたくさん働いているのですから関係ない者が侵入する事はできません」


「そうですよ。たくさんあり過ぎて見つからないだけですよ」


「ビアンカ様、そのうち見つかりますから大丈夫です」


 と言いながらドレスを脱がせると、ビアンカを休ませてくれることになった。


 (証拠はないのだから、絶対に私だと分かるはずがないわ)


 そう思いながらも、不安で堪らなくなったビアンカは寝台に潜り込んだ。



 それから数日の間に、王宮の衣装部屋の奥にある宝物の部屋から無くなったのは、シェルリア王妃が作ったエメラルドのネックレスとピアスのセットだけではない事が分かった。

 他にも何点もの代々受け継がれて来た宝飾品や宝石が失くなっているのが分かると、調査のため、1度宮殿は封鎖される事になった。


 王宮騎士たちが使われていない部屋も含めて、全ての部屋を確認すると同時に、衣装部屋に入れる者は話を聞かれる事になった。


「大変な事になりましたね」

「探せば何処かにありますよ」

「まさか王宮内に泥棒がいるなんて事はないですよね」


 封鎖された宮殿内で皆が好きな事を言っている中、ビアンカだけは王宮騎士から何を聞かれるのかと不安に思っていたが呼び出される事はなかった。


 王宮騎士は、王宮の中だけでなく宮殿じゅうを探したが、失くなった宝石も宝飾品も見つける事はできなかった。


 王宮騎士団長は警備に不備があったのではないか考えたが、盗まれたと思われる期間に王宮に出入りした外部の人間を全て調べたが怪しいところはなかった。

 だとすれば内部の犯行に違いないと考えた

団長は、多くの職員から話を聞いた結果、宝石の部屋に入った後で伯爵家に帰ったビアンカが怪しいと思えた。

 だが将来王妃となるビアンカが自分のためにある宝飾品を盗むとは思えない上に、なんの証拠もないためビアンカを呼ぶのはやめてようすを見ることにした。


 代々受け継がれてきた国宝と呼ばれる宝飾品は売ろうとしてもなかなか売りにくいはずだが、失くなった宝飾品の中には、ジェラルド王から贈られて、シェルリア王妃が大切にしていたネックレスや指輪もあった。

 

それだけでも探し出したいと考えたジェラルド王の側近やアルフォンスは騎士団長に相談して、宮殿の中には最低限の騎士だけを残し、王宮の職員達に気付かれないように宝飾品が失くなったと思われる時期に宮殿から外に出た者の行動を調べると同時に、王都にある町に配備されている警邏隊や、国境警備隊には失くなった品物のリストを渡し、国から出ようとする人の荷物を確認したり、宝石の売買に目を光らせるよう命じた。

 

あと少しで完結します。

読んでくださりありがとうございます。

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