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誤字脱字報告ありがとうございます。
何度も見直してるつもりなんですが、自分では気付かない事があまりに多く、情けない事です^^;
ビアンカは、エリーゼからアルフォンスを奪いたくて嘘を吐いた事を正直に話すしかなかった。
「……考える時間が欲しいからしばらく1人にしてくれ」
全て話した後で、アルフォンスにそう言われたビアンカは、私室に戻って行った。
ビアンカの話を聞いたアルフォンスは今までの事を思い、考えた。
エリーゼから虐められたという話は全て嘘だった。
そう告白したビアンカは自分を騙していたと言う事になる。
妃教育のために王宮内に部屋を用意されてからビアンカは、我儘を言って侍女達を困らせる事があると聞いている。
アルフォンスもビアンカに新しいドレスが欲しいと言われて、自分の私費からドレスや宝石を贈ると喜んでくれたが、しばらくするとまた欲しがる。
(母上はどうだったのだろう?)
王妃として公の場ではそれなりに着飾っていたが、居住区では動きやすい簡素な服を好んでいた。
宝石も王家に代々受け継がれてる物を大切に使い、新しく買うことはほとんどなかったと聞いている。
アルフォンスは何故か母が恋しくなり、母を思うとエリーゼの事も思い出した。
エリーゼは何年もアルフォンスの婚約者だったが、何もねだられた事はなかった。
(なぜ私はエリーゼをあんなに嫌ったんだろう?)
考えてみると、最初に会った時から酷い事を言ってしまった。
嫌う理由などなかった。
ただ、母への反抗する気持ちをエリーゼにぶつけていただけだった。
(私はただのどうしようもない我儘なこどもだったのか……)
それからのアルフォンスは執務にも勉強にも今までよりも真面目に取り組むようになり、ジェラルド王の部屋にも度々行くようになった。
ジェラルド王の世話をしている侍女や女官は特別に選ばれた者達で、物腰が柔らかくて優しい者ばかりだった。
それまでほとんど来なかったアルフォンスが部屋に来てくれるようになり、ジェラルド王はとても喜んでくれて、大切な絵を見せてくれた。
その絵は便箋の裏に書かれたもので、真ん中に1組の男女の顔が描かれていて、周りにも笑っている人達の顔と、その間に花が描かれている。
「アルフォンス様、シェルリア様が亡くなられた後、エリーゼ様が何度も王様のお見舞いに来てくださったんです。いつもお菓子や花を持って来てくださっていたのですが、その日は王様とシェルリア様の話をしながら2人でその絵を描かれたんです。真ん中は王様と王妃様です。周りにいるのが、アルフォンス様やエリーゼ様、そして側近の方や私達なのだそうです。王様が元気になられたのはエリーゼ様のおかげです。王様はその絵をとても大切にされているんですよ」
「エリーゼが……」
侍女に教えてもらい、エリーゼがジェラルド王の部屋を訪ねていた事さえ知らなかったアルフォンスは驚いた。
その後、ジェラルド王の主治医に呼ばれたアルフォンスは、ジェラルド王は生まれた時からの特別な病気で、難しい事を考えたりする事はできないが、ただそれだけで、後はアルフォンスと同じなのだと言われて、初めて父親は病気だったのだと知り、今までの事を少し理解する事ができるようになった。
シェルリア王妃の話し相手になってくれていたのはエリーゼだったし、ジェラルド王もエリーゼが好きだ。
そう言えば母が亡くなった時、皆の所に戻るように言ってくれたのもエリーゼだった。
意地を張り、エリーゼに酷い事を言って戻らなかった自分は、家臣達から王太子になるのに相応しくないと言われた時期があった。
あの頃は辛い事が多かったがアーサーとルークが側にいてくれたから乗り越えられた。
エリーゼの言ってくれた事は正しかった。
エリーゼは、この国の王妃となるために、懸命に努力してくれていた。
その間、自分は反抗して大切な事から逃げてばかりで何もかもエリーゼが悪いのだと思い込もうとしていた。
その事に気付いたアルフォンスは、エリーゼに会いたいと思い、会える方法はないかと考えるようになった。
アーサーとルークにも相談したが、エリーゼとフレドリックの婚姻は、ジェラルド王の命令によるものとされていて、離婚も許されない事になっている。
会えるとしたら結婚式のために、エリーゼが王都に帰ってきた時だろうとアーサーとルークに言われ、自分のやった事を更に後悔する事になった。
『魔獣』の住む領地で辛い思いをしているのではないかと気になるが、今更だ。
大切な人を自分が遠くに行かせてしまったのだから諦めるしかない。
アルフォンスは、ビアンカとの結婚は自分に与えられた罰なのだと思い、それなら受け入れるしかないと考えるようになった。




