第一話 無の刻印。(4)
「お目覚めですか?ネルスト様。」
目が覚めると、そこは知らないベットの上だった。
周りを見渡せば、ベットに寄りかかりぐっすりと眠るカノと、椅子に座って寝ていながらも腕を組み威圧感がある父ゲンム、顔を覗き込んでくる神父がいた。
「御二人方は、貴方様が熱が冷めてからもずっと見守っておられましたよ。お優しい方達ですね。」
「はい…そうです。凄く優しくて…大切な人達です。」
カノの頭を少し撫でると、カノは嬉しそうに微笑み、「ねるしゃまぁ〜…」と寝言を言っている。
「…ネルスト様、お聞きしたいことがあります。」
「はい、なんでしょうか」
「ネルスト様の、左手のそれは…ネルスト様が刻まれた、そういう認識でいいでしょうか…」
あぁ、それか。俺は左手の甲を目の前に出し、刻まれた刻印を確認する。
(よし!闇魔法の刻印だ。体に流れてた色んな魔力達と、相対する闇の魔力によって、魔力抗力が起き。魔力を消費できたぁ…結構危険なギャンブルだったな…)
俺は、無言で頷き体の中を巡る魔力に集中する。
体の中を暴れ馬の様に走る魔力の手綱を掴み、体の隅から隅に均等に巡らせて、体の部位ごと魔力の量を変化させる、魔力循環成功!
「そうですか…刻印については、口出ししませんが…これからの、あなたの人生は辛いものになることでしょう。マリナ様のご加護があることを…」
「神父様にも、ご加護があることを。」
神父は少し微笑んだように見えたのは、見間違えだったのだろうか?
朝になって、家族の皆がやってくると、父ゲンムからは体調について聞かれたり、カノに関しては、周りのことを気にせずに泣きじゃくっていた。皆がいるのに迷惑だぞ…
でも…こうやってちゃんと心配してくれる人がいるんだよな。大切にしていかないとな…
「ネル…刻印についてなのだが、たとえ無刻印だと罵られても気にするな。俺たちは知ってるから…」
「はい。ありがとうございます。ケスル兄様。」
「しばらくは、避暑地で安静にしますよ。ネル様。」
「うん。わかったよカノ。」