第一話 無の刻印。(2)
「もうそろそろで成人の儀ですね。」
「うん。僕はどんな刻印を授かるのかな?」
刻印…人族の体のどこかに刻まれる物。
刻印は9つも種類があり、刻印によって使える魔法が異なる。そして、刻印の大きさ、色の濃さで魔法適性が変わってくる。大きく濃いと高くて、小さく薄いと低いらしい。
「きっと素晴らしい刻印を授かりますよ。ネル様。」
「ネルスト・キュルロン様。儀式を行いますので、
刻印の間においでください。」
次が僕の番のようだ。僕は神父様の後を追い、通路を進んでいく。
「こちらが刻印の間です。台座の上で屈み、
女神様に祈りを捧げてください。」
僕は、手を握り女神様に祈る。
(濃く、大きな刻印を僕にください。)
そんな願いが届いたのか、僕の体に異変が起きる。
「…熱い、熱い熱い…」
「ネルスト様。どうされましたか。」
「左目…左目が熱いんです…」
左目…いや、左目からじわじわと、左半身が熱くなっていく。
「ネルスト様、もう少しの辛抱です。この痛みが収まれば刻印が刻まれますから。」
「は…はい。」
だが、この熱は収まらなかった。
「どういうことだ…もう、刻印は…まれたはずだ。」
体が発熱していき、僕は…いや俺は、
大量の魔力で思い出す。俺は…転生者だ。
しかも、三回も人生を経験してる。
一回目の人生では、科学者として生き、
二回目の人生では、魔法使いとして生き、
三回目の人生では、賢者として生きる。
俺は、魔法というものに憧れていたんだ。
魔法という美しい御業に…
どの人生でも早死してしまって、魔法を完全に極められなかった。
(これは…魔法暴走だな。前世の魔力が持ち越されているから、この体が耐えきれないんだ。って、そんなこと考えてる暇ねぇ、前世の記憶から使えるものを…)
「うがぁぁ」
前世の記憶を探ろうとするが、情報の暴力により、
頭がかち割れるような痛みが襲い、脳が全否定する。
この情報、記憶は脳に入らないと。
(なんとかして探さないと…さもねぇと、
魔力によって死ぬ。)
ネルは、どうなってしまうのだろうか。
次の投稿、お楽しみに。