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【[2]嚢胞性壊死の奏でる音楽】

作者: 黒実 音子

私達の氏族がかつて仕留めそこなった

黒い茂みに住む獣が

私達の心臓を毎夜齧ってゆく・・


それか、何処かの

腐肉(カローニャ)を捨てる荒野と繋がっている

我々の内部からの崩壊と腐敗・・


誤った歪なリガンドを受容し、

絞殺される肉の喘鳴や、

上行大動脈に生まれた

(アネウリスマス・デ・)みの(アオルタ・アス)幼児(センデンテ)

の命を狂わす音・・


病的な嚢胞(キスティカ)の奏でる歌は、

一本弦をコル・レーニョで奏でる

死者の笑う

黒い口腔内から響き渡るのだ。


その嚢胞性壊死の奏でる音楽は

最も自然に荒野に流れ、

夜の荒れ狂う海面の様に

救いはなく美しい。


腐肉(カローニャ)は最も自然に

無数の蛆達に貪り喰われ、

土壌に帰っていったが、

愛だけが!!

愛だけがそれに対抗し、

その過度な愛着は

水死体(デ・ノワイェ)の顔を爪で搔き毟り、

肉を剥がし、

死の素顔を露わにし、

歪なものにしてしまった。


愛とは愛着であり、

愛着とは執着であり、

それ故に(アルマ)達は地上で苦しむのだ。


キリスト教徒は神に問う。

「主よ、なぜ私の愛する者を

奪われるですか?」

神は答える。

「私の知る愛を知る為に・・

そして、無や不変が知らぬものを

知った故に・・」


応じて、

フランク・スターリングの法則から

永遠に解放された

荒野の鹿(ヴェナード)の死骸も

語りだし、答える。

「幸福とは不幸によって

もたらされる故に」


やがて人は、

己の心臓を毎夜齧る獣の顔が

天使と同じである事に気付く。

やがて人は、

いつかの朝に海岸で見た砂地の貝、

会わなくなった友の顔、

二度と会えぬ愛する者への執着を

夜の荒波の中に放り込み、

(コメン)らも(ダティオ・)(アニマエ)げる。


悲しみを交えながらも、

永遠の望郷に駆られながら、

愛を失い、

愛に帰還するのだ。

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