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エッセイ

私の中の王様は、ちょっと厳しい人なのかな?

作者: 七宝

 私は困った時によく私の中にいる王様に相談するのだが、王様以外にも私は体の中にいろんな生き物を飼っている。


 偉い順に王様、ギタリスト、博士、野菜タンメン、15匹の猫、昨年のヨダレ、おはぎ、バカ小僧、とこれだけの生き物を飼っている。


 これは多重人格ではなく、私の体の中に家があって、そこに皆住んでいるという感じなのだ。よって、私は彼らを観察することも出来る。観察しているといろいろな会話を聞けたり、新しい発見があって面白いのだ。


 先日王様とバカ小僧が喧嘩しているのを見たのだが、それが興味深かったのでここに書かせていただく。喧嘩といっても口喧嘩なので、カオスな展開にはならないよ。


 王様はバカ小僧の将来の相談を受けていた。バカ小僧が自分から王様の部屋へ行ったわけではなく、私が無理やり行かせたので、バカ小僧はその時少し機嫌が悪かった。


 机にスマートフォンを置き、「はぁ、はぁ」と適当に相槌を打ちながら小僧は話を聞いていたのだが、王様はそれが気に食わなかったらしく、怒りが爆発してしまったのだ。


「机にスマホを置いたまま人の話を聞くとはなにごとだ!」


 そう言って小僧の頬を叩いてしまった。小僧の入れ歯は吹っ飛び、口から血を流している。頬を手で押さえながら王様を睨む小僧。


「すまん小僧、手を出すつもりはなかったんだ! これでなんとか許してはくれんか?」


 王様は1cm程の厚さの1万円札の束を3つ取り出し、机の上に置いてみせた。


「わーい!」


 小僧は睨むのをやめ、鼻水を垂らし、両手を上げて喜んでいる。完全に許したようだ。


「それでな、私がスマホを置くなと言っているのにはちゃんと理由があるんじゃ。それを聞いてはくれんかの」


「イーヨ!」


 300万円を手に入れた小僧はウッキウキの笑顔で言葉を返した。


「スマホを机の上に置いておくと、どうしてもそっちが気になってしまって、私の話の内容が耳に入ってこなくなってしまうんじゃ。ポケットに入れていてもそうじゃ、見えないことは見えないが、あるというのは分かっているので、どうしても気になってしまうんじゃ」


「へ?」


 口をポカーンと開け、遠くを見つめている小僧。


「すまん、簡単に言うとだな、スマホを机に置いてると、どんどんアホになるということだ」


「アホってダメなことなの? 僕はそうは思わないけど」


 小僧は自分の意見をハッキリ言うタイプなのだ。


「スマホのせいで2010年頃からどんどんみんなのIQが下がっていっているんだ。このまま行くと皆アホになってしまうんだぞ? いいのか?」


「いいでしょ、本人たちが幸せなら。それで誰が困るのさ」


「医者も減るし、技術の進歩が止まるし、世界からバカにされる!」


「このペースなら僕の孫の世代でもまだ大丈夫そうだし、それ以降のことは気にしなくてもいいのでは? それに、医者が減っても技術の進歩が止まっても僕は特に困らないよ」


 白熱する2人の議論。IQが20違うと会話が成立しないというが、彼らの間にはそこまで差がないように見える。


「別にそういうデータを持ってこなくても、僕が机にスマホを置いてるのが気に入らないだけなんだから、素直に注意してくれればいいじゃん」


「最初に言ったやん!」


 2人は取っ組み合いになり、どちらかが躓いたのか、2人して土手を転がり落ちていった。河原に大の字で空を見上げる2人。


「やるじゃねぇか」


「おめぇもな」


 2人は背中を地面につけたまま、互いの拳をトンとぶつけ合った。一部始終を見ていた私だったが、2人の友情に感激したと同時に、王様の部屋の異常な広さに戦慄した。川あんのかよ。

 という日記でした。

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