拝啓、全国の言語学者の皆様、少女の定義を教えてください〜偶然魔法少女になった僕、本当の魔法少女の元幼馴染から勧誘を受けています〜
「応援競争、優勝は2組!!!」
放送委員の発表とともに後ろのクラスメイトたちが湧いた。
「さて、審査員長である体育祭実行委員長、なぜ」
「やっぱり、あの協調性のある演技ですね。あと、真ん中の『まこと』くんがやっぱりいい」
「はい、昨年のミス七海の意地で勝利した2組。これから、午後の競技に移ります。1年の借り物競走に出場する生徒は移動してください」
放送と共に1年生の数人が移動していく。
「『まこと』いったろ。お前が出れば百人力だって。やっぱり、お前は最高に可愛いからな!」
親友でもある竹中 直人が肩に腕を回してくる。
「あのな、直人。僕は男だからね」
そう、僕、渡辺 誠は女装している。
きっかけは去年の文化祭のミス七海。
毎年、その学校の女性No.1を決めるミス七海に賑やかし要員として各クラス1人の男子が女装して出場する。
だけど、僕だけは違った。
直人から、
『ミスター七海は何年かに一度、男装女子に一位を取られている。だから、今度は女装男子がミス七海をとる。お前には才能がある。だから、出てくれ』
と言われ、文化祭でクラスの出し物以外予定がなかった僕は2つ返事で了解した。
そして、メイクの女子たちから、『ウイッグと服だけ着替えたら、メイクなんかほとんどいらない』と言われながら、当日出場し、優勝してしまった。
その後から、男女問わず、女装してくれっと頼まれたが、全部、断っていた。僕は別に女装が趣味なわけじゃないし、実際、恥ずかしい。
今回の5月の体育祭は運動神経皆無の僕が少しでもクラスに協力するために競技に出ないあいだ女装することを了解したんだ。
ちなみにチアリーダー姿である。
本当に恥ずかしい。
「それで、覚えているよな。一位になったら、魔法少女のコスプレしてくれるって」
「わかってる」
魔法少女。これは二次元の世界ではなく、本当に存在しているも存在。
3年前、日本全国の10都市に[サンダルギア]と名乗る組織が現れ、悪事を働き始めた。
それをあっさり倒すのが魔法少女。
この美浜市ではヒーローショーより見る光景だ。
「サンダルギアの悪事がとことんおかしいのも緊張感なくていいよな。今日は放置自転車が迷惑だって聞いたから、路上に自転車を置きまくってたらしいぜ」
「あまり危険がないから、僕たちがこの街であまり不自由なく暮らせるんだけどね。ただ、時々、とんでもないことやるよね」
「ああ、1ヶ月前のとある場所で壁ドンしたら爆発はやばかったな。満員電車についていたらしいぜ。電車の揺れで意図せず壁ドンで爆発だからな。とはいえ、大半は魔法少女がほとんど被害なしで怪人を消し去ってくれるからな。あぁ、会ってみたいな」
魔法少女はその優美な衣装や端正な顔立ちから、この街はもちろん、魔法少女のいない他の都市でもファンが続出している。
とくにこの街の魔法少女はピンク髪をリボンで左右で止め、明るくアイドルみたいに振る舞う姿で人気だ。
海ぐらいしか観光場所がなかった美浜市の観光客が倍に増えたぐらい。
市も魔法少女ソングを市出身のミュージシャンにお願いしたり、応援グッズや魔法少女が表紙に印刷されたお土産、またはコスプレの衣装などを開発した。
ちなみにみんなが着せようとしているのはこのコスプレ衣装である。
「この街にいるはずなのに誰が魔法少女なのか、わからないっていうのもなぁ。もしかしたらあんな可愛い子と付き合えるかもしれないんだろ」
「確かに魔法少女は可愛いよね」
「お前の魔法少女姿にも期待してるからな」
「一位になったらね」
「いや、もう確定だろ」
直人が指を刺した得点板には二位と百ポイントつけて圧勝している二組の点数が張り出されている。
本当にみんな頑張りすぎでしょ。
「まぁ、とりあえず着替えてくるよ。僕も借り物競走の3つ後、出番だし」
「おう」
直人に見送られながら、着替えるために教室に向かって歩く。
時々、聞こえるお母様方の『あの子、可愛いわね』の声が辛い。
♢♢♢♢♢♢
2年の教室のある南校舎三階につく。
どのクラスも教室の黒板に決意が書いてある。
ちなみにうちのクラスは『真を絶対、魔法少女に』と書いてある。
「うん?なんだこれ?」
少し俯いて歩いていると、消化器の裏に何かが引っかかっていた。
拾い上げてみると、可愛らしいステッキだった。真ん中あたりに1つボタンがある。
それは、市が発売している魔法少女ステッキに似ていた。
「今日来た子供の落とし物かな。届けてあげよう」
そう思っていた時、窓の外から「キャー」という悲鳴が上がった。
何が起きたのか気になって窓の外を見ると、寝起きバズーカを持った筋肉ムキムキの男と左目に眼帯を付け、両腕が、かぎ爪になっている男が校庭の真ん中に立っていた。
かぎ爪の男はレック将軍といい、サンダルギアの幹部として毎度、現れるので有名な方だ。
なので、バズーカの男は今回の怪人かな。
「ハハハ、今回は各高校の告白スポットを爆破して高校生の甘い青春を奪って絶望させてやる。ハハハハハハ」
うぁ、また地味な作戦だ。
「バーガス、まずは手始めにこの高校からだ。この高校は‥‥‥‥‥‥おっ、南校舎の屋上だな。あれか。バーガス、この校舎の屋上をその自慢のバズーカで爆破しろ!!」
「YES、ボス」
筋肉質の男がバーガスを構える。
ここ南館
↓
屋上爆破
↓
建物崩壊
↓
女装のまま、生き埋め
ちょっと待て!!
なんで今回に限ってこんな過激なんだよ!!
僕、このままじゃ女装の状態で死ぬ。
そんな極限のパニック状態だったからだと思う。僕はなぜか思わず、そのステッキのボタンを押していた。
そのステッキが意味ありげに光っていたのを見逃して。
僕がボタンを押した瞬間、強烈な光が僕を襲った。
気がつくと僕の身体は宙に浮いていた。
死んだのかなって思ったけど、周りを見ると、その場所は僕の高校と似ていて、視線は全て僕に。
僕は黒色のゴシックドレスを身にまとっていて‥‥‥‥‥‥ゴシックドレス!!!
そこで僕の目が完璧に覚めた。
急いで自分の格好を確認する。
運動靴は黒のハイヒールに変わり、体操服がゴシックドレスに変わっていた。
髪も伸び、胸を触ってみると、そこには感じたくなかったふくらみが。
振り向くいたところにあった校舎の窓に僕の姿が映っている。
そこには、黒髪ロングに黒色のゴシックドレスをみにまとって、右手にステッキを持った魔法少女がそこにいた。
いや、待て待て。
なんでこうなった。
確かに僕は女装すれば結果的に女子を凌駕するほど可愛いいけど、いや、女子になるなんて聞いてない。
顔は写真で見せてもらったものより、少しより女の子っぽくなっているけど、所々、僕が残っていて嫌だ。
あと、魔法少女だよね。少女だよね。僕は青年なんだけど。少女の定義どうなってるの!!
「な、なんだお前は!!新しい魔法少女か!!」
レック将軍が叫ぶ。
いや、僕も聞きたいよ。魔法少女だと思うんだけど、なんなんだよ僕は。
「くぅ、我を無視するつもりかバーガス、撃て!!」
「ラジャー」
バズーカが僕を目掛けて発射される。
えーと、確か、魔法少女はこのステッキから魔法を使っていて‥‥‥なんだっけ、魔法名‥‥‥というか同じなのか掛け声、近づいてくるし、えーと、じゃあ、適当に
「〈ブラッドレイ〉」
あまり魔法少女らしくない、厨二病全開の魔法名を叫ぶ。
いつもの声より高く女っぽくなっているのに落胆しているなか、僕の持っていたステッキが黒く光ると黒い光線が発射され、バズーカが消え去り、バーガスをも消し去った。
「くっ、覚えてろよ。魔法少女」
いつものセリフを残して、レック将軍がその場から消える。
たっ、倒しちゃった。
今、起こったことに驚いていると、周りから拍手が起こる。
いや、やめて。恥ずかしい。本当に恥ずかしい。早く戻してください。どうやって戻るの!誰か!!
またステッキが光り気がつくと僕は校舎の三階の廊下にいた。
手にはまだあのステッキが残っている。
とりあえず、着替えて、そのステッキを遺失物として届け出た。
♢♢♢♢♢♢
「いや、おしかったな。途中までは一位だったんだけどな」
帰り道、直人が悔しそうにしている。
二組はあの騒動のあとから、極端に調子を落とし、猛追してきた三組に抜かれて二位となった。
「誠の魔法少女姿、見たかったな」
「そ、そうかな」
いや、したんだけどね。
予想外の方向で、本家に。
二組で披露するより多くの人に見られたから心の傷はまあまあでかい。
「そういえばさ、誠は見たのか。あの黒の魔法少女」
「いや、見てない」
本人だなんて絶対に言えない。
「いやぁ、運ないな。すごく可愛かったぞ」
「そ、そうなんだ」
やめて、間接的に僕を可愛いって言わないで。
あのあと、一応、女装の緊張に倒れて、変な夢を見ていただけなんじゃないかなって、甘い考えをしてみたけど、クラスメイトのもとに戻ってすぐに打ち砕かれたんだから。
Twitterにもトレンドとして上がるし、その時の動画を撮影していた人の投稿の返信で『可愛い』とか『彼女こそ僕の1番の推しだ』とか『このまだ魔法少女に慣れてない感じがいい』とか書いてあった死にたくなった。
多分、YouTubeにも上がるんだろうなぁ。
まぁ、忘れてよう。
良い体験をさせてもらったことにしよう。
「そういえば、魔法少女コスプレできるように服は学校に残してあるからな」
「絶対しないから」
直人と他愛のない話をしながら帰った。
♢♢♢♢♢♢
だけど、僕の期待はまたしても甘く打ち砕かれることになった。
「誠くん、今日のお昼、屋上に来てくれないかな」
2日後の月曜の朝、僕が学校に来ると、いきなりクラスNo. 1の清楚系美女兼幼なじみの湊 穂花さんから約束を取り付けられた。
幼なじみと言っても幼稚園時代の話で、引っ越してしまったので最近は年賀状のやり取りぐらいしかないし、高校でも話したことはない。多分、彼女も僕のことを幼なじみ思ってないだろう。俺も彼女が幼なじみだとは思えない。
直人からは「告白だ」ってからかわれたけど、実は屋上に呼ばれることはかなりある。
全部が、「誠くん、女装してくれない」だけど。
文化祭の後は特に酷かった。
毎日、屋上に呼ばれて、頼まれて、断る。これが1か月続いた。今でも、時々、頼まれる。
どうせ、今回もそれだろうと思って春休み、屋上へ向かう。
扉を開けると風に黒髪をなびかせた湊さんが待っていた。クラス、いや、学年No. 1の清楚系美女といわれるだけあって、やっぱり映える。湊さんは去年のミス七海には出てないから、出ていたら、僕が勝つことはなかったかもしれない。
「2人で話すなんて久しぶりだね」
「そうね。十年ぶりだね」
「それで、話って何かな」
「えっとね。誠くんは昨日の黒の魔法少女誰か知らない?」
「えっ?」
予想外の方向の質問だった。
「ど、どうして僕に聞くのかな?」
「これを届けてくれたの誠くんって聞いたから」
そう言って彼女が取り出したのは体育祭で僕を魔法少女へと変身させたあの悪魔のステッキだった。
えっ、まさか、湊さんが魔法少女!!
清楚系美女として、学校で有名な湊さんがあんな明るいアイドルみたいな魔法少女やってるの!!
「た、確かにそれを届けたのは僕だけど、誰も女子は見てないよ」
嘘は言っていない。
本当に見てないから。魔法少女になった女子は。
「そうなんだ。あっ、ちょっとごめんね。携帯がなってるみたい」
湊さんは携帯をポケットから取り出すと、その電話に出る。
その足元に一匹の猫が近づいていく。
どこからきたのだろう。
「あっ、もしもし。うん、ごめん。知らないって」
「そうですか。あの黒の魔法少女があなたがあの時無くしたこのステッキを使って変身したのは間違いないので、届けた人なら知っていると思いましたが」
足元から声がする。
「届けた時間も近かったからね。見つけたかったんだけど」
「仕方ないですよ。また、探してましょう。魔法少女になれる少女は特別なので探しておきたいですね。ステッキに触ってもらいさえすれば、反応があるのでわかるんですけど」
うん、これ、下の猫が喋ってるよね。
この猫、魔法少女の使い魔的なやつなのか?
「なら、1つ試してみるね。じゃあね」
湊さんが電話を切ったフリをする。
僕の中で湊さんが魔法少女だと確信した。
「ねぇ、誠くん。このステッキに触ってみてくれない」
予想していた地獄の要求が来た。
これ、魔法少女の素質があったら、そこの猫がわかるんだよね。そうだよね。
僕、なったから、多分あるよ。
南無三。
覚悟してステッキに触る。
見た感じ、何も反応がなかった。
「うーん、反応ないね。ごめんね。もしかしたら誠くんが魔法少女かなって思ったから。誠くんって、その、女装可愛いし、なにかの間違いがあったのかなって」
「ハハ、そんなわけないじゃん」
僕は笑った。うまく笑えていたかはわからないけど。多分、反応しなかったのは女装してないからだと思う。
いや、本当は間違いがあったんだけどね。
「そうだよね。ごめんね」
「あのさ、そういう風に言うってことは湊さんが魔法少女なんだよね」
ここまでしてきて、気づかないのはおかしいと思ったので、ほぼ確信を持っていることを聞く。
「そうだよね。ここまでしたら、バレるよね。そうだよ。私がこの街の魔法少女のピンクフラワーだよ」
湊さんが魔法少女ピンクフラワーの決めポーズである横ピースをする。
髪の色や服装は違うけど、何回もやって染みついている気がした。
「あっ、ごめんね。もしかして知られたくなかった」
「できればね。今の私と魔法少女の私は全然違うから、知り合いにはバレたくなかった。でも、バレてもペナルティーとかはないから、気にしないで。いつかは誰かにバレるんだから。でも、ばらさないでね。誠くんにしか話してないから、バレたらわかるよ」
「絶対にばらさないから安心して。それじゃあ、僕はもう良いかな」
「うん、ごめんね。時間とらせちゃって」
「大丈夫。あと、人前で猫と話すのはやめたほうがいいよ」
ふぅ、なんとか乗り切った。
ぼくが魔法少女だというボロは出さないで済んだ。
一息ついて、屋上を出ようとしたその時、
「待ちなさい」
湊さんが俺を壁際に追い込むと僕の顔の近くの壁にドンっと手を当てた。これがいわゆる逆壁ドン。爆発しないでよかった。
いや、よくない。なんでこの状態になってるんだ。
「ねぇ、誠くん。猫と話してたって言ったよね。私の使い魔の猫のマリーが話しているとわかるのは魔法少女だけで、他の一般人にはニャー、ニャーっていう泣き声にしか聞こえないの。なんで、猫が話してるって気づいたの?」
あっ、最後の最後にボロ出したやつだ。
「もしかして、誠くんが魔法少女なのかな?そういえば、あの時、誠くんは女装してたよね。もしかしたら、誠くんが女装をすれば反応するとか?」
やばい。どんどん確信に近づいていく。
その時、キーンコーンカーンコーンと授業開始五分前の音がなった。
「とりあえず、このことについては放課後じっくり話し合いましょう」
湊さんの壁ドンから解放された。
三十六計逃げるに如しかず。
放課後、逃げることを心に決めた。
まぁ、そんな決意も友人の直人の裏切りによって、あえなく捕まった。
そして、今、僕と湊さんは駅の近くの商店街にいる。
そこには
「リサイクルがいいって聞いたから。瓶や缶を撒き散らしてやるぜ」
とレック将軍が叫んでいる。
近くで今回の怪人が瓶や缶をポイ捨てしまくっている。
今回は地味にうざいやつだ。片付けが大変だ。
ちなみに僕は今、絶賛、女装中だ。
全ては直人とかいう裏切り者が湊さんにスカートとウィッグを渡したせいだ。
「誠くん、触って」
僕が女装した状態でステッキに触ると、あの時のようにステッキが輝く。
だけど、今回は黒く光っている。
「確定だね。誠くん、いく?」
僕は思いっきり首を振った。
魔法少女で戦うなんて勘弁してほしい。
「それじゃあ、私がいくね」
湊さんがステッキを持つと、ステッキの色がピンク色に輝く。
「変身!」
湊さんがそう言って、ボタンを押すと、一瞬の光と共に湊さんがいなくなり、代わりに怪人の前にピンク色の髪にピンクのドレスを着た魔法少女が現れる。
「『笑顔を咲かせる、魔法少女ピンクフラワー』」
魔法少女がいつもの名乗りと決めポーズをすると周りから拍手が湧く。
「街を汚す奴は許さないよ、〈ピンクフラワータイフーン〉」
ステッキから放たれた花の形をした光弾が渦巻き状に回転しながら怪人にあたっていくと、怪人は消滅した。
「くそ、覚えてろよ」
いつもの捨てゼリフでレック将軍は去っていった。
「みんな、応援ありがとう」
魔法少女は周りに手を振って、時々、決めポーズを決める。
そんな魔法少女が光ると、いつのまにか湊さんが僕の前に立っていた。
「認識阻害です。使い魔の仕事は魔法少女の生活に支障をきたさないようにすることなので。飛んでいる穂花のパンツが見えなかったり、穂花が学校にいる時でも皆に気づかれずに魔法少女をできているのはこのためです」
なるほど。だから、誰も気づかなかったのか。
「どうですか?魔法少女、一緒にやってみませんか?」
湊さんが笑顔で僕を誘ってくる。
だから僕も笑顔で言った。
「いやです」
♢♢♢♢♢♢
そこから、1か月。
湊さんの勧誘は続いた。
まず、必ず戦いの時は、僕を呼んだ。
おかげで、この1か月なら、誰よりも魔法少女に詳しい自身がある。
それだけじゃなくて、暇な時は必ず僕を誘ってどっかに行きら何かを仕掛ける。
カラオケの時は僕の前で各地の魔法少女ソングを熱唱してたし、ゴスロリっぽい服を一緒に買いに行ったり、ご飯を食べに行くと魔法少女とのコラボ商品があったり、何故か女装させられたり。
時にはなぜか湊さんが弁当を使ってくれたり、いつのまにか部屋にいたりと色々なことをしてくれた。
今は幼なじみって言われても納得できるぐらいまでになった。
おかげで、僕と湊さんが付き合っているんじゃないかとも言われた。
それと共に、最近の穂花自身のこともよく知った。女の子と一緒にいることが最近、ほとんどなかった僕にとってそれはとても新鮮なことで。
学校では清楚系と呼ばれている彼女のとてもアクティブな一面だったり、からかわれた後の膨れる顔だったり、彼女の見たことのない姿を見ることができた。
最初は少し苦痛だったはずなのに、それがだんだんとなくなって、いつしか楽しみになっていた。多分、これはそうなんだろう。
今日も僕は穂花に女装させられそうになった時に、街にレック将軍と怪人が現れ、魔法少女になる人が使える転移魔法で移動した後、彼女の魔法少女姿を見ている。
今、彼女の〈ピンクフラワータイフーン〉が怪人に決まったところだ。
今回の怪人はゴブリンのようなやつだった。
レック将軍が何も言わないせいで、今回の目的がわからない。
「ふふふ、これで終わりだと思っているのか、魔法少女よ」
レック将軍が不気味に笑う。
「レック将軍、あなたを倒してないからね」
「違うな。魔法少女」
レック将軍がそう言うと魔法少女の死角から緑色の触手が彼女の四肢を拘束する。
魔法少女の手からステッキがこぼれ落ち、触手に弾かれ、僕の足元に飛んでくる。
「ハハハ、今回の作戦はずばり、魔法少女を倒すなら触手だと聞いたのでそれで倒すだ。どうだ、魔法少女よ。拘束されて動けなくなったその状態は」
「くそ、俺たちの魔法少女を離せ!!」
見ていたギャラリーの一部が触手に飛びかかっていったが、あえなく弾き飛ばされた。
「無駄だよ。無駄。ただの人間に突破できるわけないだろ」
穂花にはより多くの触手が絡まっていく。
おい、この街の魔法少女戦闘はこれじゃないだろ。魔法で魔法少女が圧倒してほとんどが終わるだろ。
なんでこんなことになってるんだよ。
「どうして、魔法を使わないんだ」
「使えないんです。魔法少女はそのステッキを媒介として魔法を発生させます。だから、今の魔法少女はただの普通の人間より少し運動神経の良く、空が飛べるだけです」
猫のマリーさんが言う。
穂花の魔法少女だけでは倒せない。
そして、知っていた。
彼女のバックの中には女装道具が入っていることに。
僕は今まで、絶対に自分から女装はしなかった。誰かに頼まれて、それも出来るだけイベントぐらいしかしてこなかった。
自分から女装することは多分、僕の中で何かを失うことになる。
でも、答えはあっさりと決まった。
「マリー、僕に認識阻害をかけてくれるかな」
「わかりました。お願いします」
僕は誰にも認識されないなか、スカートに履き替え、ウィッグをして、整えた。
これを女装ではないとは言わせない。
ステッキを持つとステッキが黒くひかる。
一か月ぶり。
でも、こんどは自分の意思での変身。
「変身」
僕はステッキのスイッチを押した。
久しぶりのこの姿。でも、初めての時のような戸惑いはなかった。
「〈ブラッドレイ〉」
自分の魔法でピンクフラワーを拘束していた触手を消し飛ばすと、落ちてきた彼女をお姫様抱っこでキャッチする。
「そ、その姿!」
「ごめん、遅くなった」
僕は彼女にそう言うとゆっくりと彼女を下ろす。
「お、お前は1か月前の魔法少女!な、なぜ今頃」
「色々と気持ちの整理がついたので、改めて自己紹介を『笑顔を守る、魔法少女ブラックエンジェル』」
少し口調を女子っぽくしてみた。
この女子っぽい高音が変身しなくても無理せず出せた時は凄く驚いた。
おかげで、この高音にも慣れた。
「ま、魔法少女ブラックエンジェルだと!」
僕は触手の残骸に狙いを定める。
彼女の手が僕の手に重なる。
「一緒に撃とう」
僕はうなずく。
「〈ブラッドレイ〉」
「〈ピンクフラワータイフーン〉」
2人の魔法は触手の残骸にあたり、消滅させる。
「くっ、魔法少女が2人だと、覚えてろよ!」
レック将軍はそう言って去っていた。
「みんな、ありがとう」
ピンクフラワーが手を振って、応援してくれた人に応える。
「ほら、ブラックも」
彼女に急かされるようにして、僕も手を振ったり、2人で横ピースをしたりした。
これは恥ずかしかった。
そして、光って、マリーさんが認識障害をしていてくれているうちに、僕らは変身した場所まで戻った。
「それじゃあ、よろしくお願いします」
1か月前には取らなかったその手を
「こちらこそよろしく」
今度はとった。
♢♢♢♢♢♢
僕はずるいのかもしれない。
女装したら可愛いぐらいの僕と湊さんとの関係がなくらないために僕は魔法少女という存在にすがった。
他の人たちには出来ない関係にすがった。
もちろん、後悔はしてない。
僕は決めたんだ。
前の席の穂花が立ち上がるのと合わせて僕も立ち上がり、バックの中から自分用のステッキと女装道具を取り出す。
急いで、着替えて、穂花に合流すると、現場に向かう。
現場に到着すると、レック将軍が怪人を連れていた。
今回はシャッターを全て閉めるという悪事を働いているようだ。
「変身」の掛け声と共にボタンを押す。
「『笑顔を咲かせる、魔法少女ピンクフラワー』」
「『笑顔を守る、魔法少女ブラックエンジェル』」
「「私たち、魔法少女ツインズ」」
僕は魔法少女となった。
今回は魔法少女者を書きたいなと思って書いた短編です。
今回ももし、何かの幸運で日間ランキングに載ったら連載してみようかな、なんて甘い考えを持っています。
なので、連載してほしいと思っていただいた、そこのあなた。
ブックマーク、感想、そして、下の☆☆☆☆☆を★★★★★にしてください。
連載するなんていう奇跡が起こったら、前書きや活動報告に書きます。
気になった方は見てみてください。
普段は追放物を書いています。
よければどうぞ。
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