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幼馴染

 王宮へと帰り着いた勇者たちは、自室へと戻り休息をとることとなった。


 真夜中。かすみ真鍋まなべ常盤ときわの部屋に集まり、今日の出来事について語り合っていた。


「いやぁ〜しかし濃い1日だったな」


「そうだね、まさか魔王に会っちゃうなんて思ってなかったよ」


「魔王に出会う想定なんてできないと思うよ。…………」


 2人に返答した後無言で考え込み始めた常盤。唐突な彼の行動に、霞と真鍋は顔を覗き込んだ。


「お〜いゆう!どした?」


勇正ゆうせいく〜ん?急にボーッとして何かあった?」


「…………あのさ」


「「何?」」


 常盤は少し言いづらそうな表情を浮かべるも、数秒後真顔に戻り話を始めた。


「俺さ、ヴィクタさんの話次第では、あいつ……魔王のところに行ってみたいと思ってるんだ。どう思う?」


「「…………え?」」


 予想外の発言に思わず声を漏らし、顔を見合わせる2人。暫し沈黙の時間が続いたが、真鍋がその口火を切った。


「……えっとよ勇、そりゃなんでだ?会って何がしたい?」


「帰り道でも行ったけどさ、俺どうしてもあいつが一方的な加害者には見えないんだよ。何か人間に強い復讐心を感じてしまうほどの出来事があったんじゃないかって思うんだ。だから、ヴィクタさんの話を聞いて、その側面が少しでも感じられたら……俺は魔王の所に行って話をしてみたい」


 魔王と対話。聞くものが聞けばこれだけで反逆者扱いをしてきそうなほどの発言。そんな発言に、やはり素早い返答は得られなかった。


 その時、霞が立ち上がり、部屋の出入り口の方へと歩いて行った。


「……霞……?」


「ーー隙をみて抜け出そう!ヴィクタさんに見つかったら止められるだろうから、見つかった人は自己責任でお留守番ってことで!」


 振り返り笑顔でそう言った彼女の発言に呆然とする常盤。対して真鍋は今の発言を理解したらしく、失笑を漏らした後同じく立ち上がった。


「ゆあちゃんにさんせ〜い。見つかった奴は置いてくってことで決定だな。んじゃ勇、《《俺たちの今後》》に関わる話が明日あるんだ。ゆっくり寝ろよ!」


 何事もなかったようにいつも通り部屋から出て行こうとする2人を、常盤は急いで立ち上がり呼び止めた。


「いやいやちょっと待て!何2人ともナチュラルに帰ろうとしてんだよ!……さっきのってどういう意味だ?見つかった奴とか俺たちの今後とか……」


 すると2人は顔を見合わせ、さも当然のように答えを発した。


「どういう意味も何も、勇が行くんならおれらも行くだろ。3人で行くんだから俺たちの今後、なんか違うか?」


「そうそう。仲間外れは良くないと思います!なんてね。あ、見つかった人置いていくっていうのは、ヴィクタさんに魔王のところ行くってバレたら絶対止められるから、バレた人は自分だけで留めて後の2人に影響ないようにしようって意味ね」


 常盤は意味が分からなかった。自分が言った発言は普通に考えればめちゃくちゃで、危険なものだという自覚があったからだ。なにせ人間を殺している魔王に会いに行くと言っているのだから。


 当然反対はされるが、幼馴染みとして相談の1つもなしというのはいかがなものかと考えてのこの場の発言だったのだが、まさか肯定されるーーどころか、さもそれが当然かのように返答されたのだ。面食らった。


「あのさ、魔王だぞ?危険だぞ?なのにんな即決していいのかよ?」


「だって止めても行くんでしょ?だったら勇正君が信じた可能性の方に賭けるよ!ちっちゃい頃から一緒、学校も一緒、異世界に来たのだって一緒なんだから、今更抜け駆けは嫌だからね」


「ははっ、ゆあちゃんに全部言われちまったな。まぁそう言うこった!自分1人だけで全部解決しようとするとか、んな水臭えことさせっかよ。それに1人で行かせて、もしお前が死んじまったらさ、おれ達それこそ後悔で死ぬぞ」


海斗かいと……霞…………ありがとな」


 心なしか安堵したような表情で感謝の言葉を呟いた常盤。そして霞、真鍋は部屋の扉を開け、外に出た。


「んじゃ、また明日な。おやすみ!」


「おやすみ勇正君!もう筋トレとかして翌日潰れないようにね!」


 ガチャリと扉の閉まる音が部屋に響く。しばらく扉の方を見つめていた常盤だが、ゆっくりとベットに寝転がり、天井を見上げた。


「…………ほんと、もったいないくらいいい奴らだよ。……寝よ」


 こうして彼はゆっくりと目を閉じた。


 ーー翌日。勇者たちは起床し、朝食を取った後、普段特訓で利用している訓練場に集まった。


「みんな、昨夜はよく眠れたか?」


 ヴィクタの呼びかけに反応は様々あれど、皆一様に肯定の意を表した。そんな彼らの様子を見て、ヴィクタは頷き話を続けた。


「では、早速だが本題に入ろう。今日君たちに来てもらったの理由はわかっているだろうが改めて私の口から説明しよう。まずは私の過去、なぜここまで魔人族を憎んでいるのかを知ってもらいたい。そして2点目は私達が魔人族に対し行った事実を知ってもらいたい。気分を害した時は遠慮なく退室してくれ。ーーでは、本題に入るが……聞きたくない者はいるか?」


 ヴィクタは彼らを一瞥するが、誰1人として首を横に振る者はいなかった。


「……愚問だったな。ここに来ている時点で覚悟は出来ているか……」


 ヴィクタはそっと目を閉じ、剣を握る。その手は僅かに震えており、刀身を収める鞘がカタカタと小さく音を立てている。


 ゆっくりと息を吸い込み、しばらく停止。そしてゆっくりと吐き出した。ての震えは止まり、目をゆっくりと見開いた。そしてーー


「では、私がなぜこうも魔人族を憎むのか……聞いてくれ。あれはそう、10年前。私が6つになった翌日のことだったーー」


 そしてヴィクタは自身の過去を語り始めた。


 ーー時は10年前へと遡る。


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