色を知る
軽い気持ちで魔水晶を出したヴィクタ。しかし常盤、神囿と続けて属性が測れてしまったことを受け、こうなったらと全員確認することになった。
「よし、じゃあ次は誰が行きたい?」
「ヘイヘイ!じゃあ次はおれっちが行ってもええの?」
率先して手を上げたアレックス。ヴィクタは勿論それを了承する。
「分かった、それじゃあアレク、やってみてくれ」
「了解だヨウ!こうだね!」
アレックスが魔水晶に手を触れる。すると中で真っ白の光が灯った。
「ヴィクたん、これは?」
「ヴィクたんという言い方は気になるが……まぁいいか、アレクのことをいちいち気にしてたら私多分死ぬな」
ヴィクタはアレクの扱い方を学んだ。
「白い光、これは風属性だ。風を出したり操ったりできる」
「なるほどなるほど!みんな、それがし風だって!風!」
目元でピースサインをするアレックスに皆は苦笑いで拍手する。
「んじゃあ次行かせてもらうぜ」
次に名乗りをあげたのは淺岡だ。
「自分の属性な〜にかなっと……赤……ってことは火か?」
「ああ、それは火属性。火を出したり操れる」
「コピペかよ……つか火ねぇ、別に熱血漢って訳でもねぇんだが」
「安心しろ、基本的に属性は本人の性格などは考慮されないよ。まぁ闇とか光は若干あるって言われているが」
その瞬間、すべての人が常盤に視線を移した。そして――「あ〜あ」という納得の声と共に散り散りになった。
「あれ?見られたのは分かるけど何ですぐに納得されたの?」
「え〜、だって君さぁ――」
そして真鍋、霞を除いた全員の意見が一致する。
「「「「「「「暗いだろ」」」」」」」
ほぼ全員からの隠キャ認定に自覚はあったものの傷つく常盤。体育座りなどはしないものの、明らかに顔が死んでいる。
「ゆ、勇!大丈夫だってほら!おれらがいるからよ!まぁ暗いとは思うが」
「ぐぁはっ!!」
「わ、悪りぃ!」
「大丈夫だよ勇正君!確かにちょっと暗めかもしれないけど、その分優しい人だった知ってるよ!」
「……優しさと笑顔が辛い」
より落ち込んだ常盤を霞は励まし続け、真鍋が肩を叩いた。
その傍らで、濱崎は永守に嫌味を口にする。
「あんたってさぁ、なんか闇っぽいよね。いや別に根拠はないけど」
「いやだな〜濱崎さんったらい・じ・わ・る!――芽衣が闇なわけ無いじゃん。ちょっと怒るよ」
互いに苛立ちを孕んだ目をぶつける2人。少し違う点とすれば、あからさまに嫌いが出ている濱崎に対し永守は冷たいということか。
「――濱崎さんこそ闇なんじゃない?不良なんだし!」
「あっそ、じゃあ次うちが行くから、そのあとあんた行きなよ」
「はいは〜い、いいよそれで」
こうして次は濱崎が水晶の前に立った。
「よし、じゃあ濱崎、やってくれ」
手を置き少し経つ。すると、茶色い光が灯った。
「茶色……なんかやなんだけど」
「これは土属性だな。地面を自由自在に操れる」
「えっ?手から土とか出すんじゃないの?」
「ああ。通常の5属性の中で土属性だけは自身から発することは出来ない。その代わり汎用性は高いがな」
「ふ〜ん。まぁいいや、戦わんし。闇じゃなかっただけ十分だわ」
そう言って踵を翻した。そして、永守を「次お前」と言いたげな目で睨みつけた。
「……はいはい、分かってるよぉ濱崎さん」
そう言って濱崎と永守は入れ違う。その時耳元で小さく呟かれた。
「――土とかだっさぁ」
「ああ"っ?」
険悪な雰囲気のまま戻ってきた濱崎は、皆にある決断を宣言する。
「うち、強くなる」
「……えっ?」
突然の告白に常盤は素っ頓狂な声を出してしまう。そして視線を向けられた為、自分から質問しなければいけない雰囲気になった。
「……えっと、何で?」
「決まってるっしょ。強くなってあの性悪ぶん殴る!もう魔王とかどうでもいいわ。うち、あいつ倒すまで帰れない」
異世界で目的を見つけた濱崎は拳を強く握りしめた。
「(芽衣を殴るとか……やっぱ野蛮だわあいつ。まぁその時は神囿とか使えばいいでしょ)じゃあ次芽衣の番で〜す!」
陽気なテンションで水晶に手を置く永守。その時瞬間をヴィクタは濱崎の方を見ていたため、水晶を見ていなかった。
「さぁ芽衣は何かなぁ……は?」
永守が目にした光、それは紫色に輝いていた。
「(はぁ?何で芽衣が闇なのよ!やばい、このままだとあいつに絶対バカにされる!それだけは絶対に無理!何でもいい、何でもいいから色変われ!……水、水でいいや!どうせ青だろ?青、青になれよ青に見えろ!!)」
永守は祈るように目を閉じる。その時、ヴィクタがようやく気づき視線を水晶に向けた。
「――あっ、すまない永守!見てなかった……ほう、なるほどな」
「あいつの色なに?紫?――あ」
身を乗り出すように水晶を見る濱崎。そして水晶を見たとき、声を漏らしたり
「(その反応は何?ってか絶対闇じゃん!……ほんと、最悪)」
恐る恐る目を開ける永守。そこには紫色の光が変わらず映っていた。――が
「チェッ、なんだそれかよ。闇じゃないじゃん」
「……えっ?」
「えっ?ってなに?まさかこんなのまでカマトトぶんの?」
永守は理解できていなかった。今自分が見ているのは紫色だ。つまり闇。にも関わらず目の前の彼女はまるで違う色が灯っているかのような反応を示している。そして彼女すらも――
「そうか、永守は水か。水属性は水を出したり操ったり出来る。……にしても青色濃いな。こんな色だったか?」
「はぁ、結局どっちも闇じゃなかった訳か……」
「えっ?あ、そうだね」
永守は訳の分からないまま水晶から離れる。ただいくつか確信できたことがある。それは、自分の属性が誤認されているということ。そしてそれを起こしたのは自分であるということだ。
「(芽衣が願ったからそれが叶った?でも何で?そんな力今まで――もしかしてこれがユニーク魔法ってやつ?もしかして芽衣の魔法って……願望を現実にする力だったりする?!)」
その考えに至った時、本人の意思とは無関係に頬が緩んでいた。
そして次は奥田が前に出る。そして水晶に手を触れた。そしてそこには茶色の光が灯った。
「あっ、土属性……」
「おお、奥田くんうちと同じなんだ。なんか親近感」
そう言って笑顔を浮かべながら濱崎は握手を求める。
「え、あ……ぼくも」
そして奥田も照れながらその手を取った。
残り3人。次に行ったのは相良だ。
「ったく、めんどくせぇな」
頭を掻きながら雑に手を置く。すると、そこには緑色の光が灯った。
「ほう、相良は雷か」
「雷……ああ、神囿と同じか」
そう呟き神囿を一瞥する相良。特に何の感情も載せていない視線にも関わらず、彼は体を震わせた。
「(な、なんだよ……急に睨みつけてきやがって。何であいつ雷なんだよ、性格的に火だろ!こっちくんじゃねぇよ)」
そして次、真鍋が行くことになった。
「んじゃ、ちょっくら行ってくるわ!光出すから楽しみにしとけよ!」
「おう、もし紫だったら一緒に泣こうな」
「泣かねぇよ別に……んにしても、おれはなんなのかねぇ〜」
水晶に手を乗せる。欠伸をしながら待っていると、次第に青色の光が灯り始めた。
「青……つうことはおれ水属性?」
「ああ、そうなるな。つまり永守と同じだ」
「(うげっ!あいつと同じかよ……別に同じだからって何もねぇけどさ)そ、そうか」
振り返ると永守が手を振っている。流石に何もしないのは気が引けるらしく、軽く手を振り返した。
「勇、一緒に泣かないかね?」
「理由は分からんがとりあえず分かった。あとで俺の部屋集合で」
「了解」
「ははは……海斗君すごい落ち込んでるね。あ、最後あたしか。じゃあ行ってきます!」
「おう、いってらっしゃい」
霞はゆっくりと水晶に近づき、少し微笑んで手を置いた。
「(闇か水だといいなぁ)」
そんな小さな願いを思っていると、光が灯った。その色は――
「――金色。つまり光属性だ……!おめでとう霞、君は私と同じだ」
「えっ?!光って……珍しいって言ってたあの?!というかヴィクタさんって光だったの?!」
「ああ、因みに光属性は最速の属性で、人それぞれ能力が違うんだ。私の場合は物体に光を集めて放つ能力だな!――あ、言ってなかったが闇もそうだぞ」
ついでのように言われ常盤、そして永守は困惑する。
「いやそんなあっさり?」
「(不味い、そんなの出てきたらまた隠さなきゃいけないじゃない!)」
「にしても、結局全員属性が出たな、私なんて4ヶ月かかったのに……まずい卑屈になりそうだ」
落ち込むヴィクタに苦笑いを送り、霞は皆の元へと戻った。
「え、えっと……光でした」
もしかすれば疎まれるのではという気持ちから微妙な顔つきでやって来た霞。そんな彼女の肩を2人の男子が掴んだ。
「さっすがゆあちゃん!おれ達の太陽的存在!」
「おめでとう!霞にはぴったりな属性だと思うよ」
「……へへっ!ありがとう!」
憑物が取れたように笑顔を見せた霞。そこに濱崎がやってきた。
「委員長すっご!まぁでも不思議と違和感はないわ」
「ありがとう濱崎さん!」
「楓で良いよ、うちらタメなんだし」
「……そっか、じゃああたしのことも癒愛って呼んで!楓!」
「やば!委員長……じゃなかった、ゆあいいやつ過ぎ!――幼馴染みの称号いくらで売る?」
「「売らねぇよ!!」」
そんな仲睦まじい光景を見ていた者のうち、2人妬ましい感情を抱いていた。
「なんだよ……僕の見せ場とことん奪っていきやがって!……いやでもどうなんだ?一見何の変哲もない方が主人公っぽいのか?うん、それにまだユニークもある。そこに賭ける!」
「(何であんな奴が光で芽衣が闇なの?あんなの可愛かぶってるだけ――)……馬鹿らし」
そんな時、彼ら彼女らの盛り上がりに水をさすように手の叩く音がなった。
「はい、属性確認終わったんだから座学に戻るぞ!というか本来こんなことする予定じゃなかったんだ。ほら、早く座って座って!」
ヴィクタが手を叩き皆を誘導する。興奮冷めやらぬまま、彼らは座学の授業に戻って行った。




