パズルのように
モニタールームで、雪奈の脳が脳外殻へと収容されていく様子を、健一郎は食い入る様に見つめていた
「保護液中なら、平気だと思うが・・」
「光も電磁波も遮断された状態で、脳の保護なんて、エネルギー消耗が激しいぞ」
「大丈夫なのか?ネルモ」
「それにしても、ここの3Dプリンターは凄いな、チタン加工とナノカーボン加工を同時進行とは・・」
「一体、いくらかかっているんだ? 億単位だよ、スポンサーでもいるのか・・な?」
頭の後ろで腕組みをしながら、チラリとカメラ目線
「それは、秘密です。 でも、ネルモさんなら、知っているでしょうね」
お茶目な、コンピュータであった
「あ、あれ?」
健一郎の視線は、何かを捜している
「ルーモは、どこに隠れたのかな~?」
「ルーモさんなら先ほど、脳外殻に入ってしまいました」
「これは想定外です。3体分のエネルギー供給は、現状のシステムでは不可能です」
「このままでは、非常に危険です」
人工音声なのに、焦りを感じる。 さすが、生体コンピュータ
深呼吸すると、健一郎は落ちついた声で
「大丈夫です」
「殻内部には、健診用の光ファイバーが、設置されてますよね?」
「ルーモとネルモは、光エネルギー変換が出来ます」
「ファイバーに、波長の短い可視光を入力してあげて下さい」
「なるほど、素晴らしい対応です。 それでは、殻内部に光入力します」
マニピュレータの先端が青白く光り、脳外殻のファイバー端を照らす
作業は再開され、脳外殻は無事に義体内に収納された
(お! 明るくなったね)
(でも、芸がない。 LEDはカロリーばかりで、味が薄い)
(同感、ご褒美にローソクの灯りにしてほしかった)
(でわ、あらためて)
(今後とも、宜しくお願いします)
(雪奈と3人で、仲良く生きてゆこう)
(でも、この体のスペック凄い、MAXで900kw位あるよぉ、平和に暮らしていけるかな?)
(大丈夫、トラブルは3人で解決できる)
(いざとなったら、健一郎を巻き込めばいいかぁ)
外の世界の慌てる様をよそに、まったりとした空気の二人であった
※900kw → 約1150馬力
メインモニターに表示されている「生体活性度」が、MAXレベルまで上昇するのを確認すると
「よっしゃあぁぁぁぁ!!」
「ネルモ、ルーモ、よくやったあぁぁぁぁ!!」
健一郎は、喜びのあまり、不思議な踊りを舞っていた
「マギョシリーズの場合は、直接エネルギー供給しなければ、生体維持が出来なかったのに・・」
「偶然とは言え、健診装置がこのような形で活用されるとは、大変な驚きと喜びです」
「偶然ではない」
突然、知らない声が、割り込んできた
「そうだよ、ネルモが思いついたんだよ」
また、別の知らない声
「いつの間に、義体を起動した。 勝手にハッキングするなよ」
健一郎は、すでに状況を理解していた
「義体担当はルーモだろ? で、雪奈担当がネルモだな?」
「大当たりぃ、さすが健一郎クン」
「ルーモ、融合して性格変わったか、大事な体を壊すなよ?」
「大丈夫。 義体シミュレーションでは、160㍉砲の直撃でも、壊れないよ」
「健一郎と喧嘩しても、負けないぞぉ」
「こちらが死ぬわぁ」
「それにしてもルーモ、なんでこんな事をしたんだ?」
「勝手なコトをして、ゴメンなさい。 詳しくは、ネルモが説明します」
「皆さん、驚かせてしまいましたが、ここまでに至る経緯を説明します」
「まず、モーラの情報によると、私達は2種以上の異種融合をすると、自我崩壊してしまうとの事でした」
「雪奈が無事に生き残っても、それが誰かの犠牲の上とあっては、心の負担になってしまうでしょう」
「同種融合部分を設定すれば、融合時の自我崩壊を免れる事が出来るのではないかと、考えました」
「幸い、ネルモはルーモから分割された個体である為、融合後の神経伝達速度においても、問題はないです」
「ただひとつ、エネルギー問題があります」
「現状の義体には、3体分のエネルギー供給能力がありません」
「今は一時的な対応になっているので、義体の改修をお願いします」
「なるほど。 まあ、何事もなくて良かった」
「義体改良の件について、了承しました。 エネルギー対策以外に希望があれば、作業開始までに言って下さい」
「それと・・ 皆さん」
「雪奈の為に、尽力して頂き、感謝しております」
「ありがとう・・」




