移植?
健一郎は、モニタールームで号泣していた
雪奈と母親の会話を聞き、ティッシュ箱を空にしていた
「両親の偏った愛情なら、猛反対するところだったが・・ 仕方ない、協力しよう」
通常、機能を失った体の代わりは『義手』、『義足』、『義眼』が一般的である
雪奈の場合は、臓器も含め、体全体を交換する必要がある
臓器移植という方法もあるが、ドナーとの相性問題が大きく
心肺機能が低下している状態では、簡単に対応出来るものではない
天宮家のマザーコンピュータ(母親)は、普段から雪奈に関する情報を分析している
その情報を元に、半年程前から、産業用の特殊な3Dプリンターにより、『義体』の製作に取り掛かっていた
「チタンとナノカーボンの複合材加工なんて、聞いた事もないぞ」
『カーボンナノファイバー』
軌道エレベーターが、実現出来るかもしれない、素晴らしい素材である
「ナノカーボン自体、開発研究途上の素材であり、軍事利用される方が先だろう」
しかしそれも、雪奈の意思次第では、廃棄される可能性があった、との事
贅沢な話である・・
生体と義体間の接続、当初は雪奈の遺伝子情報を得ている、モーラが担うはずであった
ただ、人間への不信感から、成功する確率は低かったであろう
今回は、ルーモから派生し、モーラの知識を得た『すーぱーましゅまろ』ネルモさんが担当
成功率は、限りなく100%に近い
残念なのは、ネルモの自我が無くなってしまう事だ、ルーモは寂しがるだろう
あれから、何時間経った?
いつの間にか、健一郎は居眠りをしていた
手術は順調に進んでいる様子
先程『脳』が取り出されたみたいだ
脳を保護する為に、ネルモが膜状態になって脳を包み込み、保護液につかっている
ルーモは時折、ネルモに触れているみたいだが、何を話しているのだろう
(ネルモ、頑張って・・、雪奈を助けてあげて)
(任せろ、この仕事は私にしか出来ない)
(でも、寂しくなるね。 また一緒に、ローソク三昧したかったのに・・)
(大丈夫だ。 実は・・ちょっとした考えがある、人間には内緒だが)
(何があるの?)
(可能性に賭けるか? 皆が幸せになる可能性に?)
(うん、ネルモが・・ そう言うのなら)
(よし! ならば・・)
(最後まで私の傍にいろ、殻に入ったら電極を通じて指示をする)
(分かったよ)
7割程まで出来上がった脳外殻に、脳が収容される
ネルモは内側の電極部分に触れ、ルーモと話を続けている
約1時間で作業は終了をむかえ、あと僅か1㎝程の穴を残すのみとなった
その時、脳外殻に設置された電極を通じ、ネルモがルーモに呼び掛ける
(今だ! 中に入れ)
ルーモは躊躇せずスルスルと、脳外殻内部に入る
そして、脳外殻は封印された
(うまくいった様だな)
(まずはルーモ、私を包み込んで欲しい)
(はいっ、こんな感じでいいかな?)
(オッケー。 悪いが、少しエネルギーを分けて欲しい、雪奈の維持でかなり消耗した)
するとルーモは青白く発光、その光をネルモが吸収する
(よし、ルーモは義体と融合しろ)
(私は雪奈と融合する)
(それと同時に、ルーモと私が融合)
(大丈夫かな?)
(大丈夫っ! ・・のはずだ・・多分)
(ちょい待ち、みんなで幸せになるんじゃないの?)
(安心しろ、99.5%以上の確率で成功する)
(とゆーことは、0.5%以下の確率で・・)
(まだ言うかぁ~~~)




