治療
「只今より、診断を開始します」
「CT、MRI、3Dレーザースキャンを実施します」
人工音声とは思えない、とても流暢な言葉使いに、健一郎は思わず
「はい、お願いします」
モニターには、診断映像が映し出される
「これは、最新型PET-CT。 何故こんなところに?」
「分解能1㎜以下、スライス0.2㎜程度か?
診断に時間がかかるだけの、過剰設備じゃないのか?」
モニターを見つめながら、苛立つ健一郎だったが
メインモニターに、ほぼリアルタイムで診断映像が現れる
「なんだ、これは?! スパコンでもなければ、こんな芸当できないぞ」
驚きのあまり、椅子に座り込む健一郎
『ポーン』
「四肢、及び内臓の一部に、重度の血行不良を認めます」
「心肺の働き、通常の20%を下回りつつあります」
「24時間以内に、しかるべき処置を施さなければ、命にかかわります」
いつのまにか、雪奈はストレッチャー上で、各種のチューブに繋がれている
『ポーン』
「12時間以内に、四肢の壊死が始まります、切断処置が必要です」
女性は、淡々と処置内容を告げる
「ゆ、雪奈・・ そんな・・」
「一体、何が起こっている?」
健一郎は、怖くて震えていた
『ポーン』
「20時間以内に、各臓器の機能が、順次停止します、しかるべき処・・」
「やめろおぉぉぉっ!!」
健一郎は椅子から立ち上がり、叫んでいた
「・・やめてくれ・・・・」
「『しかるべき処置』って・・何だよ?」
「雪奈を・・雪奈を、助けるんじゃないのかっ!?」
「切り刻んで、どうするんだよぉぉ」
『ガシャッ』
健一郎は泣きながら、モニターの1台をなぎ倒していた
『ポポーン』
天井に設置された、緑色のランプが灯る
「只今より『プロジェクト モーラ』フェーズ1 、開始します」
モニター画面に、雪奈に施される処置の内容、スケジュールが、分単位で表示される
内容を見た健一郎は、脱力し、再び椅子に座り込んだ
「おいおいおいおいっ!!」
「バカな、そんな事が許されるのか?」
「雪奈の意思は?」
「いいのかっ、それでっ?!」
そして、女性は語り出す
「ありがとう」
「羽田健一郎さん、ですね。 いつも、娘がお世話になっております」
「今は、大変厳しい状況です。 思うところもあるでしょうが、暫くの間、見守っていて下さい」
「雪奈にとって最良の、雪奈が一番幸せになれる様。 選択は彼女に任せます」