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葉月涼子の生活  作者: 砂場 箱太郎
6/11

崩れかけた人ん家の玄関で休む

葉月涼子は2012年の春に東北地方の海岸線の巡検に随行したことがある。地震によって引き起こされた隆起・沈降、また津波の溯上がどれほどだったかと言うのを簡単に全部見ておこうというものだった。こういうことは地名、印象、スケールに親しくなるので後々とても役に立つ。他にも、日本海側ではそのような地形の変化が見られていないか、というのも見に行ったのでかなり広いエリアを1週間で散策した。秋田の象潟は、ぼんやりと天気が悪い中に見る九十九島が印象的だった。


ある太平洋側の港町で。湾を挟んで反対側に見える、海水面からかなりの高さに建てられた神社が半壊していて驚く。止めた車の近くには津波でやられた民家があった。ドアも窓も無く、何の気なしに建物に入った。親戚一同で亡くなったらしく、一年経た今でも、誰も片付けに来た人の痕跡は見られない。被害のあとの状態がそのまま放置されていた。床に散乱する書籍には日焼けもなく、真っ白で(他にも放置された多くの家屋を見たが、同様に書籍・紙類が床に散乱し、床は白く覆われていた)。近くにいた地元のおじさんが自転車で近づいてくる。黒々と日焼けした顔は沈痛な表情を、口は津波の被害を語る。これまでこうして何度も人に話してきたことがわかる演劇的なもので、全ては他人に求められた悲劇の物語をなぞる。NPC。それほど興味もなかったので、話を聞きながら足下の書籍に目を向けると、詩集で。読めば西条八十の印象があったが、わざわざ持ち上げて作者を確かめることもしなかった。覚えるには、生々しい。

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