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葉月涼子の生活  作者: 砂場 箱太郎
10/11

盆踊り

なま臭く、オエ、とか思って目が覚めたので、そろそろゴミ捨て。と割と大きなゴミ袋を縛り上げ、パジャマのまま。履きなれたサンダルで部屋の外へ出る。ねむ、さむ、絶対もっかいねよ、と思っていたらオレンジの幼児たちが大人に連れられて歩いてきて、中に同僚を何人か見つける。人使いの荒い嫁を持つヨーゼフ、それに嫁ラブの光・まどか夫妻。近所の幼稚園のハロウィン、主婦のみなさまに混ざる男の同僚は目立つものだなあとしきりに眺める。裁量労働制、万歳。子煩悩の旦那、万歳。ヨーゼフの子供がギャンギャンに泣き叫んだままほかの子供を30mほど引き離し、なじみの俺に近づいてきた。「おう、早起きして。えらいな。なあ、こんなしょーもない、おそろいの。オレンジの。ビニール?ペラペラ、着せられて。泣きたくもなるわなあ。嫌やろ。」と誰にも聞こえないように子ヨーゼフと話す。泣き止む子ヨーゼフ。「こんちは」と、父ヨーゼフ。私は主に外国人とばかり仲がいいのは、私は普段パンクス、どこからともなく湧き出る怒り、空腹、おなら、その他もろもろのゲキレツの腹に抱える気持ちを抑えてしゃべるために、一言一言がゆっくりなせい。ユーのジャパニーズはヒアリングがイージーなのだ。と評を得ている。一方で、日本人には、まだるっこしいというか、そもそも顔は常に不機嫌そうで、ひげも剃らず、この時期でも結構半そででウロウロしている私と好んで話す人は多くない。「おかしいっぱいで、いいですね」「そうです、袋につめて、くれます」話すことも多くなくて、本当ラク。「おとなになるとな、こんなにいっぱいお菓子もらえんねんど」とゴミ袋を見せて子ヨーゼフに言えば、彼は眉間にしわを寄せ、不審そうな顔をしてゴミ袋を見つめる。透けるカップ麺のから、粉コーヒーのガラ、下の方にたまった汁。2歳くらいのくせに、聡いなあ~と思い、目を合わせる。ロシアンブルーのようにグレーの髪に青い目。パンクスで、聡くて、男前で、臆病で。ホント、いつみても苦労しそうな顔しとんなあ。

追いついた子供らに、キャーとか、ワーとか愛玩動物のように話しかける軍団。なかに同僚女たちが紛れているのを見つける。わざわざ近くの職場から出てきたらしい。しょーむな、なんて思っていたが、葉月涼子も紛れていて、重ねて、しょーむな、と思った。光・まどか夫妻の子供は話しかけられればニコニコと愛嬌を振りまく。女たちはそれを見てキャーキャーになり、ご機嫌な子供はさらにサービス。相乗効果で非常にやかましい。日なたの壁際で、ヨーゼフ、子ヨーゼフと俺。光・まどか夫妻の子供はそこかしこを歩きながら、肩にお菓子の袋をかけ、垂れた目ぇをニヤニヤ、頭のカボチャがずれて、えべっさんのようで、なんだか死ぬほどムカつく。「Xちゃ~ん」と、葉月が夫妻の子供をハグし、高い高い。ほーんと、子供と女って組み合わせ。茶番よ。飼育委員の時。そうだけど特に世話もしてない動物を、どうしてあんなに可愛がれるんかな。死ぬ時も。世話してたやつより世話してたように泣くし。役者。状況で態度を変える。本音と建て前がわからず、親しい人にはいつも裏切られた気持ちになる。パンクス。手のとどくとこ以外は、見るだけ。アホくさ。護身完成。葉月は人見知りらしく、8月から来たヨーゼフとは一度も話してない。まわりにあわせて精一杯、良い人のふりを続ける人々の盆踊り。壁際から見てるだけ。俺、ヨーゼフ、子ヨーゼフ。

葉月は恵比寿を抱いていたが、恵比寿が暴れた。線の細い葉月はよろめき、足が子ヨーゼフに当たる。職場のみんなみたいに、ガイジンは無視して。恵比寿をゴキゲンで抱きつづけ。ゴミ、くさ。

「捨ててくるわ。かぜ。あったかくしろよ。」と子ヨーゼフにサヨナラを伝えて、ハイタッチ、に応じる子ヨーゼフではない。かざした手のひらに目もくれず、じっとこちらを見つめるだけ。頭をなぜられるのが好きじゃない君、ハイタッチなんてするわけもなく。わはは。葉月に抱かれるえべっさんにも去り際に手をかざしてみると、上機嫌なハイタッチ。子ヨーゼフにくらべりゃ。生きづらさ。角のゴミ捨て場、ゴミを寄せてネットをかぶせてたら、いつのまにか葉月が後ろについてきてて「髪切ったほうがいいと思いますよ」とかなんとか。言ってきて。うわー、めんどくさ。と思って。床屋には行かずに出勤して。今日も一日無視されて。しょーむな。

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