〜2番目〜
呼ばれてきた人物は驚くことに尖った耳、黒いローブに魔女のようなとんがり帽子を被った小学生低学年くらいに見える少年、だった。
「エリアス・ブレフェルド・クレスティアだ。お前が勇者か?」
そう言ってジロリとこちらを睨むように見上げる。幼い見た目に似合わない鋭い瞳に怯みかけたが。
「僕はヤイチ・ニイロ。一応、勇者らしい……です。」
「一応ではなくちゃんと勇者ですよ!大丈夫です!!」
さっとジゼルさんから修正が入ったが何が大丈夫なのかわからない。多分心配せずとも貴方は勇者ですよ!って意味なのだろうが個人的は大丈夫なことではない。勇者とかいう主人公級の職業は非常に荷が重いのだ。
「ふむ、そうか。オリバエスの召喚術ならばまあ、失敗はしないだろうが。これは些か人選ミスではないか?」
「私はニイロ殿に勇者の素質があると思っているが」
「ボクはそのオドオドしててへなぁって感じのやつには到底無理だと思うんだけど?」
「えっと……そのすみません。」
居たたまれなくて顔を下げた。やっぱり僕には荷が重い。才能も何もないし運動神経もないしコミュ症だし。
「ニイロ殿、こいつのこれは気にせずとも問題ない。それに、勇者の素質を持っているのが召喚の条件だからな」
「そうですよ!ニイロ様!クレスティア様はいつもこうですよ!僕も来たばかりの頃はちくちくと小姑のように……」
「オリバエス!ジゼル!」
ギロリとオリバエスさんとジゼルさんを睨むとその目をそのままこちらに向けた。
うっすらと殺気に近いものを感じる。もう僕は顔を上げられず涙目だった。
「ともかく!ボクは勇者とか認めないからなっ!!」
「召喚の時点で世界には認められているからな」
そう言い終える前にクレスティアさんは部屋から勢いよく出て行った。とても怖かった。
「ジゼル、エリアスは少し人選ミスだった。ブランシュを頼む」
「はい、かしこまりました〜」
ジゼルさんはこちらを見て一礼をすると部屋を出て行った。
「ニイロ殿、申し訳ない。あいつはエルフ族なんだが少しばかり捻くれた性格をしていてな。素直に話せないというか、天邪鬼なやつでな……」
「い、いえ、僕がこんななのは事実ですし……いつも失敗して失望されてしまうのでクレスティア様はあっていると思いますよ」
「貴殿の、その卑下する具合がどれほど真実かはわからないが、ここにいるということは善良な優しい人物ではあるのだろうな。私はそういう者を勇者だと思っているからな」
「それは……」
「オリバエス様!!ブランシュ様をお連れしましたよ!!」
答えようとした言葉はドアを勢いよく開ける音で喉の奥に引っ込んだが。
善良とか優しいとか、自分のことをそうとは判断できないけど、オリバエスさんの言葉が胸を温かく包んだ。