ロードの1日・4
ロード「ほんとにこの先生で大丈夫か不安になりましたよ」
ベルグス「エルフ族は、気難しいからなぁ」
そんな事を思っているロードの心情など知らないムルグはペラペラと本を捲り鼻で笑った。
「なんだこれは、随分と貧弱な魔術ばかりだな。基礎ぐらいしかまともな内容がないではないか、俺が教える魔術はこんなものではないぞ」
そう言うと、ムルグは本を捨ててロードへ向き直った。
「お前は、自分の属性の適正についてはわかっているか?」
『いえ、まだ何も、、、、』
「なら、属性の適正を調べるところからだな」
そう言うと、ムルグは地面に大きな魔方陣を書き始める。
普通の魔術は魔方陣などは使わないが今回のような特殊な魔術は、特殊魔術と呼ばれ魔方陣を用いるが殆ど存在せず今残っているのはエルフ族のみが知る魔術だけであると言われている。
このような方法で適正が調べられない人族や他の種族の魔術師らは、全ての魔術を習いどの属性の魔術が使えるのかを練習しながら自分で探っていくのである。
そんなムルグの様子を見ながらロードは気難しいと噂のエルフ族であるムルグがここまでしてくれるのかを悩んだが理由は思いつかず、長くかかるのを面倒だと思っているからかと思ったがそれならそもそも依頼を受けないだろうという結論に至ったため、不思議に思っていた。
「書けたぞ、そこに立て」
ロードが悶々と考えているうちに魔方陣を書き終えたムルグがロードを見て魔方陣の中心を指差した。
ロードは、ムルグに言われるがまま魔方陣の中心に立った。
「よし、、、、、、、、我ら神なる大樹を守りしエルフの一族、神々との誓いを果たすものである。汝らの力を借り世界を守るものである。この者に祝福を汝らの加護を与えたまえ。集えよ、集え、彼女の元に共に生きる覚悟があるなら、その身を晒せ彼女の為に」
ムルグの言葉に反応するように光始める魔方陣に、遠くから見ているジェシカとディランが心配そうな目を向けてくるのを感じながらロードは何かが自分の側に集まってくるのを感じた。
けして、悪いものではなくただ、楽しそうな嬉しそうな感情が伝わってくるのが分かる。
【フフ、妾の可愛い子】
【私達の事が分かるのか?】
【今ままでずっと、近くにいたんだぞ!】
【やっと話せるんだな】
【待ってたんだよ】
【うれ、しい】
【よ、よかったです~】
【まぁ、よかったんじゃない】
沢山の声がロードの頭のなかに響く、その多さに頭が痛くなるが、それでもただ、純粋に喜ぶ声に何も言えず黙るロード。
そんなロードの様子を見ながらムルグは最後の仕上げにかかる。
「彼女との、契約を望みし精霊よ。名を告げよ、思いを告げよ。さすれば、汝らとの繋がりを作らん」
【妾は火の精霊、フレミア】
【私は水の精霊、アクス】
【僕は風の精霊、ウォル】
【俺様は雷の精霊、ボルム】
【自分は光の精霊、ライグ】
【うちは土の精霊、アーリナ】
【わ、わたしは闇の精霊、ダーミュ】
【俺は氷の精霊、アイル】
【【【【【【【【よろしく、ご主人様】】】】】】】】
ロードの目の前に、ふわりと現れた8つ影にムルグは、少し驚いたようだが直ぐに歌うように呪文を紡いでいく。
「古の誓いにしたがい今より、汝らの契約は果たされた。我ら神なる大樹を守りしエルフの一族の掟にしたがい、これよりこの者達の未来を祝福しよう。汝らの道に光あらんことを!」
その言葉を皮切りに光っていた魔方陣の光が更に強くなり、ロードは自分と精霊との間に強く切れることのない繋がりが出来たことを感じたが、精霊の存在はお伽噺でしか聞いたことのないものだった為、不思議に思ったがそのあとに襲ってきた脱力感に気を失った。
その様子にジェシカとディランが慌てて走って来る。
それに会わせて屋敷の中から此方の様子を伺っていたであろうグレイとパティも姿を表した。
ロードの側に集まってくる面々を見ながらムルグが小さく呟いた。
「まさか、本当に精霊が自ら姿を表すとはな。やはり、この子が、大樹と柱を守りし一族の子だからか?、、、、、だが、そうなるとあの神話は本当に、、、いや、結論に至るにはまだ早いか、、、、、、」
気絶したロードを部屋に運ぼうとしてしている彼らは、ムルグが探るような目でロードを見つめていたことに気がつかなかった。