お怒りの姉
ロイ「・・・」
ベル「(無言の圧力うううううぅぅぅぅ)」
洞窟より少し離れた場所でベル達三人を助け出したロイは先ほどオーガを倒したときと同じくにっこりと笑いながら立っている。
流れる冷や汗を拭い恐る恐るベルがロイに声をかける。
「あの、えぇっと」
『ん?なんでしょうか?ベル・マチェスタ』
『いえ!何でもありません!すいませんでしたーーーーー!!!!』
何とか、言い訳をしようとしたベルに目の笑っていない笑顔を向けるとベルと隣で立っていたティアとリツキの三人が素早い動きで土下座をした。
因みに、この世界には土下座は存在しないがベルが誠心誠意を込めた謝罪の仕方であると教えていたためティアとリツキ、ロイも土下座の事を知っていたが後ろにいる二人は土下座の事を知らないため不思議そうに地面にひれ伏したベル達を見ていたが今は口出ししないほうが良いと判断して静かに見守っている。
「(何してるんだ?)」
「(やっぱ、あの女恐ろしいっス。てかあの子供達は何やってるんスかね)」
『・・答えなさいベル・マチェスタ。何故こんな無茶をしたのですか』
「あ、えっと、その」
『・・・・・・』
「す、すいませんでした。その少しくらいなら大丈夫かと・・・」
「あの、ご、ごめんなさい」
「すいません、軽率でした」
三人が謝るがロイ依然として厳しい目付きのままで三人を見ていた。
『もしも・・・もしも僕がここに来るのがあと、少し遅れていればあなた達は死んでいたかも知れないんですよ』
「「「っ!!!!」」」
『先ほどの事でどれだけ冒険者が危険な職業か良くわかったでしょう…。ベル貴方はまだ冒険者になりたいんですか?』
冷たい声であり得たかもしれない未来を淡々と話ながらベルに視線を向け問いかける。
ロイの冷たい声にベルは微かに震えながらも顔を上げしっかりとロイの目を見返して言った。
「確かに!姉さんが言った通り俺が調子に乗ったせいでリツキやティアを殺しかけた事は反省してるしすごく後悔してる。でも、俺は冒険者になりたいんだ!はじめは格好いいとかそんな感じのノリだったけど」
一生懸命自分の考えを話すベルにロイだけでなく隣で土下座していた二人がゆっくりと顔を上げてベルをみる
「でも、違うんだ!姉さんの役に立ちたいんだよ!お母さん達が死んだことは覚えてないけど暗い森で俺の手を引きながら戦ってたのも覚えてるし今だって冒険者として働きながら俺の世話してくれてるのもわかってる。だから、少しでも姉さんを助けたかったんだ・・・」
ロイは驚いていた。
自分が冒険者として働いていることをベルが知っていたことやいつも格好いいからなりたいと言っていた冒険者が本当は姉役をしている自分を助ける為になろうとしていたことを初めて知ったからである。
リツキとティアはその事を知っていたらしく無言でベルの話を聞いている。
「もちろん、俺が冒険者になったってできることは少ないだろうけど、今のまま何もしないなんてできなかったんだ・・・でも、冒険者は諦めるよ。今日だって、皆を危険な目にあわせて姉さんの手を煩わせたんだもん。ごめんなさい」
「ベルくん」
「ベル・・」
『そうですか、そこまで考えていたんですねベル。僕は姉失格のようですね(ベル様がそのようなことをお考えになっているとは、子供の成長は早いと言いますが本当のようですね)』
ベルの話を聞いたロイは寂しそうな悲しそうな表情でポツリと呟いた。
「!!そんな、姉さんは悪くないよ!」
『いいえ、考えが及ばなかった僕が悪いんですよ。しかし、三人だけでこんな危険なところに来た罰は受けてもらいます』
三人はロイの罰と言うことばに身を固くした。
『三人には明日から僕の仕事の手伝いをしてもらいましょう。そのためには明日ギルドで冒険者登録をしないといけませんね』
「「「!?」」」
『手伝ってくれますよね?三人とも』
「「「はい!!」」」
三人は冒険者の登録を許すロイに驚いていたがにっこりと笑って確認をとるロイに笑顔で返事を返した。
話が纏まったのをみて後ろで待機していたサーチェスがロイに声をかけた。
「よかったな、無事に見つかって」
『えぇ、有難う御座いますサーチェスさんワイズさんお二人のおかげです。』
「あの、姉さん。この人達は?」
サーチェスとにこやかに話している姉に迷宮の時から付き添っていた男達の事を忘れていたベルはロイの腕を引っ張り話しかけた。
けして、急に現れたイケメンに姉がとられないようにイケメンの邪魔をしたわけではない。
『紹介していませんでしたね、この方達はサーチェスさんとワイズさんです』
「サーチェスだ」
「どうも、ワイズっス」
三人には向き直り軽く自己紹介を済ませる二人。
『あなた達が迷宮に入ったのをみてギルドに知らせに行こうとしたところにバッタリ出くわして貴方達の事を聞いたんですよ。この二人が教えてくれなければ間に合わなかったでしょうから、貴方達の命の恩人といっても過言ではありませんよ』
「そうだったんですか、助けてくれて有難う御座います」
「あ、ありがとうございます」
「助かった、礼を言う」
間接的にとはいえ助けてくれた人物であると分かり礼を言う三人。
一名助けてもらったと言うのに上から目線ではあるが・・・
「気にするな、結局助けたのはお前達のロイだしな」
「俺たち何もしてないっスからねぇ」
しかし二人は礼は要らないと頭をふった。
『しかし、何もなしと言うわけにはいきませんし・・・。そうだ、よかったらご飯を食べていかれませんか?リツキとティアも一緒に食べるでしょ?』
「は、はい」
「御馳走になります」
二人はロイの言葉にすぐに頷いた。
よく、ロイ達の家でご飯を食べているのでロイの料理が上手いのを知っていたからである。
「しかし、迷惑にならないだろうか?」
『大丈夫ですよ、たくさん作るのはなれてますから』
「姉さんもこう言ってますし是非食べていってください!(よし、これで貸し借りなしだ!)」
サーチェスはちらりとワイズを見ると頷かれた、お呼ばれしたのに断るのは良くないと行っているのだろう。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
こうして、サーチェス達はロイの家に行くことになったのだった。
ベル達は無事に見つかり冒険者になることを許され平和的な終わりになったのだがロイは何か胸のなかで引っ掛かるような感じがしていた。
このロイの予感は当たることとなる遠くない未来で・・・・
何処かの廃墟のような城で幼い少年が驚いたように壊れた水晶を見ていた。
「あれ?壊れちゃった・・・んー、おかしいな結構自信作立ったんだけど」
首をかしげて壊れた水晶だったものを見ている少年の後ろから妖艶な美女が現れた。
「何をやっているのですか?もう、会議が始まる時間ですわよ」
「うん、わかったすぐに行くよー。まぁ、いっかまた作れば良いだけだし」
少年はすぐに興味を失ったようで水晶を残し美女の後を追ってその場からいなくなった。
長らく放置していて申し訳ありません
また、細々と続けていくつもりです




