初めての迷宮・・・~ベル視点~
ロイ「・・・」
ベル「ち、沈黙が怖い」
時は戻り、ロイの探していた三人は・・・
町を勢いよく飛び出したものの道に迷ったベルをみかねてリツキとディア・ロウが迷宮まで連れていった。
「ここが迷宮かぁ!」
「ねぇ、危ないですし帰りましょう、ベルさん」
「まだ、来たばかりじゃないか!もう少し近づいてみてもいいよね」
「!ダメです、ロイさんに怒られますよ」
「うっ!だ、大丈夫だよ・・・多分」
迷宮を前にしてはしゃぎ始めるベルとそんなベルを止めるため何とか思い止まらせようとするリツキ。
そんな二人を尻目に、一度だが初心者用の迷宮に来たことのあるディアは不思議そうに首をかしげた。
前に来たときは迷宮の入り口に兵士がたっていて近くには兵士の休憩所があったはずだったしかし、ここには兵士が立っていなければ休憩所もない。
もしかしたらここは初心者用の迷宮ではなく新しく出来た迷宮なのではないかと思ったが確証はない、どうしたものかと考えていると二人が急に大きな声で言った。
「「ディア(さん)はどっち!?」」
「ん?」
考えごとをしていたため二人の話を聞いていなかったディアはとりあえず適当に返事を返した。
「いいんじゃないか?」
「やった!」
「そんなぁ~」
喜んでいるベルと落ち込んでいるリツキを見比べているディアと半泣きになっているリツキの手を取ってベルが迷宮に近づく。
まさに迷宮と云わんばかりに物々しい雰囲気があり薄暗い中には何かの魔術式が書き込まれている。
興味深そうに壁や入り口を眺めているディアと半分以上ベルの後ろに隠れながら迷宮を見ているリツキそして今にも迷宮入りそうなベルの三人の後ろから大きな声がしたのは、我慢できずベルが足を踏み出そうとしたときだった。
「おい!おまえらここでなにやってる!!」
「うぁぁぁ!」
「きゃぁぁぁ!」
「!!!!」
突然の大きな声に驚いたベルが踏み出そうと足をひねり迷宮の中へと転がりその服を掴んでいたリツキが巻き込まれ二人を助けようとしたディアも突然のことで踏ん張りがきかず中へと入ってしまう。
その瞬間迷宮の中に書かれていた魔術式が発動し三人が姿を消した。
「お、俺は何も見てないからな!!」
冒険者の格好をした人族の男が慌てて逃げると、反対側の木の影から獣人族の男と人族の男が現れた。
獣人族の男は逃げた男の方を睨むと直ぐに迷宮に目を向けた。
「助けにいくぞ」
「迷宮から出たばかりでポーションとかも殆どないんスよ!こんな状態で新しく見つかった迷宮に入るなんて自殺行為ッス!」
そのまま迷宮に入ろうとした獣人族の男の腕をつかんで人族の男が必死に止める。
「・・・そうだな、一度町に戻って準備をするぞ!」
「ちょっと!待ってくださいよアニキ!」
少し考えてから一度町に戻ることにした男はさっさときびを返して歩いていく。その後ろ姿を追いかけながら人族の男はどうやって獣人族の男を説得するかを考えるのだった。
その頃迷宮の中に入ってしまった三人は・・・
薄暗い迷宮の中は奥に続く道しかなく出口はない。
三人が落ちた場所は行き止まりのようになってい下に入り口に書いてあった魔術式が書き込まれていた。
いきなりの事に思考が追い付いていないリツキと辺りを警戒しているディアを横目にベルは必死にどうするべきかを考えていた。
「(まさか迷宮の中に入るだなんて俺のバカ!いくら憧れてたとはいえもう少し慎重になるべきだった。姉さんが言ってたように俺は、戦えないし・・・一体どうすれば)」
ベルが使える魔術は光の玉と閃光とまだ、誰にも話してないが少しだけ治療魔術が使える。
ディアは幾つもの魔術を使えるエルフだが一人で戦わせ続けるわけにもいかない。
「とりあえず進もう」
「え?」
「なに言って・・・」
ディアがけして大きくない声で言った。
リツキはようやく思考が追い付いたのか不安そうに瞳を揺らしながらディアを見た。
ベルが非難するような声をあげるも真っ直ぐにこちらを見るディアに押し黙る。
「いつまでも此処にいるわけにもいかないからな、それに早く帰らなければロイさんに怒られる」
「心配するとこそこかよ!」
「ご飯なしにされるな」
「違うだろ!!いや、違わないかも知れないけど」
「泣かれる?」
「だから、姉さんの話から離れろ!!いくら初心者用の迷宮だからって危ないだろ!」
「・・・・もしかしたら此処は、初心者用の迷宮ではないかもしれない」
「「は?(えっ?)」」
漫才のようなやり取りをする二人を見ていたリツキとディアにツッコミを入れていたベルが驚いた顔をするとディアは難しそうな顔をしながら言った。
「俺は、前に初心者用の迷宮の近くまで行ったことがあるのだが・・・迷宮の前には兵士がたっていて近くには兵士の休憩所があったんだ。しかし、この迷宮には兵士がいないし休憩所もなかった」
「そ、そう言えば誰もいなかったですね。普通なら誰か迷宮に挑戦する人がいてもおかしくないのに」
「あぁ、これは推測だがもしかしたら此処は新たに発見された迷宮なのかも知れない」
「新しく見つかった迷宮!?じゃ、じゃあ此処ってすごく危ないんじゃ・・・」
ディアの推測にリツキは真っ青になりベルは狼狽えた。
「で、でも誰かがたすけてくれるんじゃ」
「誰が助けてくれるんだ?此処に来たことは誰にも話してないんだぞ?」
「もしかしたら、入り口で声をかけてきた人が来てくれるかもしれません」
「可能性は低い、此処はまだギルドの調査隊も調査していない新しい迷宮だぞ。そんな危険をおかしてまで助けに来てくれるとは思わないが・・・」
ディアの言葉に二人は黙りこんだ。
確かに、誰かが助けに来てくれる可能性は低いが勝手に動き回っても大丈夫とは言い切れない、調査がされてないと言うことはどんな魔物がいるかわからないと言うことだ。
もしかしたら、A級クラスの魔物がいるかもしれないそんな魔物にもし出会ったなら確実に死ぬ。
「此処は行き止まりだもし魔物が来たら逃げられなくなる。なら何処か魔物に見つかりにくい場所を探した方がいい」
「・・・うん。わかったよ移動しよう」
ベルがディアの意見に同意するとリツキも小さく頷いた。
二人が慎重に奥の道を睨みながら進むのを見てからベルは足の怪我を確認した。
赤くなって腫れ上がっていたが歩けないほどではなかったので軽く治療魔術をかけた。
「(まだ、痛むけど泣き言いってられないな。俺が二人を巻き込んだんだ、何とかして二人だけでも助けないと)」
「どうしたんですか?ベルさん」
立ち止まっていたベルはリツキの声で我にかえり軽く首をふってなんでもないと笑った。
遅くなってすみません・・・
がんばって続けていきますのでよかったら感想でも書いていただければ、咽び泣きます




