七年後
ロイ「諦めて下さい」
ベル「絶対やだ」
二人はリパリス帝国の小さな町フレンツで暮らしていた。
フェルノート王国が崩壊してから七年がすぎ多くの国を騒がせていた魔人族達はまた姿を消した。
何処に消えたのか次に狙われる国は何処かと推測が飛び交うなか平穏な日々が過ぎて行く。
ロードも魔人族が姿を消してから王族や父親について情報を集めていたが今のところ手がかりは何もない。
昔の知り合いや伝を使い今もなお情報を集めてくれているが進展がないので今のところベルには何も話せないでいる。
魔人族が姿を消したとはいえいつまた現れるかも分からないので用心に越したことはない。
魔人族や王族の事で頭を悩ませるロードをもっと悩ませるのは第三王子の夢だ。
何でも、Sランク冒険者になりたいだとか・・・
出来れば他の王族の方が見つかるまで大人しくしていてもらいたいのだが、あまり縛るつけるのもどうかと思い強く言えないでいる。
「姉さん!おはよう」
『おはようございます。朝食の用意は終わってますよ』
朝から元気よく挨拶をするベルに手に持っていたお皿を机にのせて返事をする。
ベルが椅子に座ると食事をする前にその月の神である戦いと勝利の神ルーフスに祈りを捧げてから食べ始める。
「姉さん、まだ俺が冒険者になるの許してくれないの?」
『・・・冒険者は、凄く危険な仕事です。他の仕事の方が良いのでわ?』
「でも、冒険者になりたいんだ!(せっかくのファンタジーの世界!憧れの冒険者に!)」
力強く言うベルにロイは言いにくそうに目を反らしながら言った。
『ですが・・ベルは剣も魔法も使えないではないですか』
「うっ!」
『剣を振れば自分が怪我をして』
「ぐっ」
『魔法にいたっては唯一適正のある光魔術は光の玉と閃光だけで戦闘には使えないですし』
「・・・・」
言葉を濁してもベルの為にならないとロイがはっきりと告げた事はベルの胸を容赦なく抉りベルは声もなく机に付した。
ロイはもう少し優しい言い回しの方がよかったかと思ったがこれでベルも諦めてくれるかもしれないと心を鬼にして食器の片付けを始めた。
「そうかも知れないけど、俺は冒険者になりたいんだ!!!」
『ベル!まちな・・・』
机に付していたベルが勢いよく顔をあげ叫びながら家を飛び出していった。
ロイはベルを呼び止めようとしてとどまった、少し言い過ぎた気もしていたので無理に止めることが出来なかったのだ。
夕方には機嫌も直っているだろうと家事の続きにとりかかった。
その頃家を飛び出したベルは、心では姉であるロイが心配して言ってくれたのはわかっていたが少しイラついていた。
「確かに、姉さんみたく魔術も剣も出来ないけど冒険者になれるっての!姉さんはいちいち五月蝿すぎるんだよ」
誰に言うでもなくぶつぶつと呟きながら石を思いっきり蹴り飛ばすとい後ろから声がかかった。
「どうせまた、ロイさんに無理を言って怒られたんだろ。八つ当たりをするな」
「ええっと、元気を出してください。ベルさん」
声を掛けてきたのは近くに住む二人、リツキとディア・ロウだった。
リツキは赤のショートヘアに茶色の瞳の鬼人族の少女で鬼人族では珍しくヘタレな性格をしているため苛められていたのをベルに助けられてからよくベルの後ろをカルガモの様について回るようになった。
ディア・ロウは金色の髪に青緑の瞳のエルフでクールで知的に見られがちだが実際は何も考えていないお馬鹿さんであり里から出てきたので世間知らずではあるが魔術をベルに教えたりしてるれている。
あと、何故かロイを慕っている。
「二人とも聞いてたのか」
「どちらかと言うと聞こえただ」
八つ当たりを見られて少し恥ずかしそうに言うベルに空気を読まないディアが訂正を入れる。
「あの~、ベルさんはどうしてそこまで冒険者になりたいんですか?」
リツキが不思議そうな顔でベルに聞く、彼女達は何度もベルからロイに冒険者になることを反対されていると何度も聞いたことがあり、それなのに諦めないベルを不思議に思っていた。
「決まっているじゃないか!冒険者はファンタジーオタクの夢であり王道だ!ゲーム画面越しのRPG出はなく自分で旅に出るんだ!数々の宝に、誰も知らない迷宮にドラゴン退治!俺は、そんな事がしたいんだ!!!」
「は、はぁ(ふぁんたじー?RPG?)」
「なに言ってんだ?」
ベルが鼻息荒く声高らかに話す事の意味がよくわかっていない二人は何度も言えない顔でベルを見る。
ベルの言っていることをリツキとディアが理解出来ないのは仕方ない理解出来るのは同じ転生者かトリップしてきたものだけであろう。
「こうなれば、姉さんに認めて貰えるように行動あるのみ!彼処へ行こう!」
「彼処にですか!?ダメですよそんなの!」
「やめた方がいいぞ」
「俺はもう決めたんだ!」
ベルは二人の止める声を無視して走り出した、リツキは何とかベルを止めようとアワアワと左右を見渡したが知り合いはおらずベルを止めることが出来ない、ここはロイさんを呼んで来るようにディアにお願いしようとしたがいつの間にかディアはベルの後ろを走っていた。
「そ、そんなぁ~二人とも!待ってください!」
結局リツキは二人の後を追って走ることになった。




