魔人族との戦い
ベルグス「せっかく登場したのに寝てるだけって、なんでこんな・・・」
ロード「まぁまぁ、次はいいとこあるかもしれから気を落とさずに」
ベルグス「次こそ、活躍してやるーーー!!!」
二人の間に緊迫した空気が流れる。
どちらも相手の動きを見て隙を探す。
いまだ対人訓練の経験がなく父であるルイスやたまに稽古をつけてくれるルイスの部下達としか戦ったことがないロードには、この戦いが圧倒的に不利に感じられていた。
『(隙がない・・・・今まで魔人族とは戦ったことがないからどんな攻撃をしてくるのかもわからないし、迂闊に攻撃することもできないな。)』
ロードは内心焦りながらも、どうにか勝機を見いだそうと頭を巡らせる。
すると、しびれを切らしたのかディバルが突っ込んできた。
『(‼こんな隙を見せるとは!)はぁ!』
ロードはディバルをギリギリまで引き付けてからかわして背後をとりその背中に刀を突き立てた・・・
『なっ!』
しかし、怪我をおったのはロードの方であった。
ロードは肩から血を流し、背後をとったはずのディバルが自分の後ろから肩に剣を突き刺しているのを見て驚いた。
直ぐに剣を引き抜き二撃目を繰り出そうとするディバルの姿に慌てて剣を弾きなんとか距離をとる。
「なんだよ、そのへっぴり腰は本当に俺様と戦う気があんのかよ!」
その言葉と共に踏み込んできた、ディバルの剣を刀で防いで距離を取るが防いだ筈なのにロードにはいくつもの傷ができていた。
その様子をディバルは、愉しくて仕方がないと言わんばかりに、嫌らしい笑みを浮かべた。
「オラオラ!最初の威勢のよさはどこ行ったんだよ!」
『くそ!(どういうことだ?さっきから、かわしているのに何故傷が?それにこの傷、攻撃をかわした後からできる。まさか、もうディバルの魔術にかかっているのか)』
「ハハハハハハハ!!!いいぜその顔、最も苦しめよ」
『ぐぁっっっ!(目が!!)』
ディバルの攻撃をかわしながら、打開策を考えていたロードだったが、寸のところで避けたはずの剣が瞼を裂き左目に血が流れ込む。
痛みに悶えるロードを見下ろしディバルは狂ったように笑い出す。
「そうだ!その声だ!苦痛によりあがる悲鳴は最高だな!アハハハハハハハ!!」
『目に血が入って上手く見えない・・・(こんな時に!)』
ロードは左目を手で押さえながらも、刀を構えた。
ディバルは、まるで猫が鼠をいたぶるかのように片目が見えなくなっているロードをなぶり始めた。
片目となってしまったロードは必死に刀を降りディバルから距離をとり体制をたて直そうとするがディバルがそんなことを許すはずもなくロードの体には傷が増えてゆく。
足がもつれ体制を崩したロードの腹にディバルが渾身の蹴りをくらわせる。
『ガハッ!(今ので、肋骨がやられたか。万事休すだな。だが、さっきまでの攻撃のお陰でようやくどんな魔術を使ったのかが読めた。あいつの使った魔術はきっと・・・)』
「流石にあきたな、死ね」
床に倒れ付したロードを冷たく見下ろして剣を振りかざすがそれより、早くロードが起き上がりディバルの剣を弾き飛ばし腕を切りつけた。
「なっ!こいつ俺様の魔術を!?」
『ああ、あんたの魔術は闇魔術のミラージュだな。この魔術は幻影と幻覚により相手の認識をずらす魔術。しかし、一度でも解けてしまえばこちらのもの!行くぞ、〈雷撃よ我が、力となりて敵を打て!サンダーブレイク〉!!!』
自分の魔術が見破られたことで、動揺したディバルにロードが魔術詠唱により雷の力を宿らせた刀でディバルを切り裂く。
悲鳴のひとつもあげずに消滅してしまったディバルを一見したあと、直ぐ様ベルグス王子の元に駆け寄る。
ロードはさっきの戦いのなかでも起きなかったのでディバルが計画的に魔術により眠らせ1人になったところで殺す予定だったのだと思ったが、なかなか起きない王子に不安を抱き父に見てもらうためベルグス王子を連れ部屋を出ることにした。
ハンカチをとりだし目を覆うように結び一先ずの止血を終えてからディバルによって殺されてしまった騎士達の前に立ち騎士の礼をした。
『ベルグス様は、僕が守り抜きます。ですから、安らかにお眠り下さい』
そう告げると、王子を抱き抱え部屋を出ていった。
先程の戦いの一部始終を窓の外から見ていた者がいたことにも気づかず。
その人物は懐かしいような寂しいような苦々しい表情を浮かべて小さな声で呟くように言った。
「・・・・・あいつが・・・・・・・」