表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/116

63.ゲンブ降臨

 空から雹を降らせる青龍に手を焼いた俺たちだったが、俺とアヤメの火球攻撃で地に落とし、倒すことができた。

 そして息絶えた青龍が光に包まれると、新たなセイリュウがそこに現れた。


「お初にお目に掛かる。我が名はセイリュウ。以後は四神の1柱としてあるじの矛とならん」

「……あ、ああ、よろしくな、セイリュウ。なんか、スザクやビャッコとは雰囲気違うな」

「かーっ、相変わらずかてえ野郎だな。もっと気楽にやれよ」


 ぶち猫の姿で近付いてきたビャッコが、馬鹿にしたように話しかける。

 しかしセイリュウは全く気にした様子を見せず、逆にビャッコを鼻で笑った。


「ふふん、貴様が荒っぽすぎるのだ。また主に迷惑を掛けているのではなかろうな?」

「いや、俺はそういうの気にしないから、セイリュウも気楽に接してよ」

「そういうわけにはいかぬ。我らは主あってこその存在」

「あー……そうなんだ……ところで地上に戻ろうと思うんだけど、セイリュウは小さくなれる?」

「もちろんだ」


 そう言うと、再び光に包まれたセイリュウが、一瞬で小さな蛇に変わった。

 全長が1メートルぐらいの、青く輝く美しい蛇だ。

 なんとなく左手を出してみたら、シュルシュルと巻きついてきて、肩の上に頭を出した。


「かたじけない」

「うん。それじゃあ、地上へ戻ろうか」



 セイリュウを伴って地上へ戻ると、また野営の準備に入った。

 やがて日が暮れ、夕食を取りながら明日のことを話す。


「いよいよ明日は、最後の四神に挑戦だな」

「そうですね~。しかし、玄武は四神で最強と言われてますから、注意してくださいね~」

「最強なの? たしか玄武の属性は土だよな。攻撃能力が高いのかな?」

「攻撃力というよりも、防御力がハンパじゃないですね~」

「マジかよ……気が重いなぁ」


 あまり聞きたくない情報だったが、それを知ってもやることは変わらない。

 なんとしても生き残り、四神を従えるのだ。





 翌日も半日ほど掛けて北の遺跡へ移動した。

 遺跡の位置は、日本でいうと野沢温泉の近くだろうか。

 千曲川に相当するであろう川が、遠くに見える。



「さて、今から踏み込むぞ」

「「はいっ」」


 みんなに声を掛けてから扉に手を当てると、ゴゴゴッと扉が下にスライドした。

 松明たいまつを持ったヨシツネから順に入り、階段を降りていく。

 下の空間に着くと、いつものように扉が閉まって明るくなった。

 そして中央部分には黒っぽいもやが発生し、それが徐々に形を取っていく。


 やがてそこに現れたのは巨大な陸亀だった。

 地球の生物でいえば、ガラパゴスゾウガメに近い外観だ。

 しかし小山のような甲羅からゴツゴツとした首と足が生えており、まるで怪獣のようだ。

 甲羅の大きさは高さと幅が5メートル、長さ10メートルといったところか。


 緑系のメタリックな甲羅が鈍い光を放っていて、首や足は茶色系。

 甲羅以外の部分もビッシリと硬そうなウロコに覆われている。

 その口にはズラリと牙が並び、足にも凶悪な爪が生えている。

 こいつは想像以上の難敵だ。


 俺はさっそく腹ばいになり、ティーガーを構える。

 即座に装填された弾丸を、玄武の頭に向けて撃ち放った。

 しかし、無敵を誇った鋼鉄弾はあっさりと弾かれてしまった。

 玄武に当たる直前、何かバリアーのような物が発生したのだ。


「なんだあれ? インチキじゃねーか」

「とんでもないですね……しかし倒せないはずはありません。俺たちが隙を作るので、タツマ様はどんどん攻撃してください」


 俺の愚痴にヨシツネが答えつつ、玄武に向かって走りだした。

 他の前衛陣もそれに続く。


火弾ファイヤーボール!」


 アヤメが放った火球は玄武の首に当たったものの、ほとんどダメージになってない。

 奴はうっとうしそうに頭を振っただけだ。


 そこに真っ先に突っ込んだホシカゲが、双聖剣を振るう。

 右足を狙ったその一撃はしかし、簡単に弾かれて傷ひとつ付かない。

 さらにヨシツネがバスタードソードを叩きつけるも、これまた表面で弾かれた。

 スチールドラゴンも真っ青のチート装甲だ。


 その後もベンケイが戦斧を振るい、トモエが頭突きをお見舞いする。

 どちらかといえば、彼らの攻撃の方が効いているようだが、それでも気休め程度にしか見えない。

 やがて彼らの攻撃を振り払うように、玄武が頭と足を振り回して暴れだした。

 それほど速さはないが重そうな攻撃は、一撃でもくらったら大ダメージだ。


 おかげで前衛陣が慎重になり、乏しい攻撃がさらに鈍ってしまう。

 これではいかんと、ティーガーをバシバシ撃つものの、相変わらずバリアーみたいなのに阻まれた。

 そんな無力感漂う攻撃を続けていたら、やがて玄武が頭を引くモーションを見せた。


「ヤバい。壁を作ってくれ、ニカ」


 すると、俺の目の前に、高さ50センチほどの壁がボコッとせり上がった。

 その壁に隠れた瞬間、周囲に砂のブレスが吹き荒れた。

 壁が無かったら、大ダメージを食らっていただろう。


 この壁は、対玄武戦に備えて考えたものだ。

 ”いざという時に隠れられる障害物とか欲しいな~”と呟いたら、ニカがサクッと作ってくれた。

 ニカちゃん、地味に有能~。


 その後も土壁で防御しつつ、玄武の弱点を探っていった。

 普通に頭や足を狙ってもバリアーで弾かれるので、いろんな部位を狙ってみる。

 しかし、甲羅はバリアー無しでもメチャクチャ硬いし、首や足の付け根を狙ってもバリアーが出てくる。


 それでも俺は諦めず、玄武の横や後ろに回って弱点を探し続けた。

 そして、やはり弱点は無いのかと諦めかけた頃、異変が生じた。


「グオオォォォーッ!」


 尻尾の付け根を狙撃したら、初めてバリアーに弾かれず、玄武の体に弾が通ったのだ。

 ビリビリと空気が震えるほどの苦鳴を上げた玄武が、憎悪の目を俺に向ける。

 その殺意のこもった目に、かつてない危険を感じた俺は、また叫んでいた。


「ニカ、壁2つ!」


 ボコン、ボコンと2枚の土壁が立ち上がったところに、凄まじいブレスが押し寄せた。

 壁のほとんどが吹っ飛ぶほど強烈なブレスに、地面に這いつくばってなんとか耐えた。

 ようやくブレスが治まった途端に立ち上がり、逃げながら叫ぶ。


「ヨシツネ、尻尾の付け根に弱点がある。そこが狙い目だ!」

「分かりました、タツマ様」


 ヨシツネたちが尻尾の方に殺到すると、玄武が動揺した。

 明らかに奴は尻尾への攻撃を嫌がっている。


 おかげで前衛陣が尻尾に近寄れないが、それも狙いどおり。

 俺は前衛とは逆方向に陣取り、ティーガーに2倍弾を装填してチャンスを待った。

 静かに銃を構える俺に、スザクが上から俯瞰する位置情報と、ヨシツネが予測する動作情報が流れ込んでくる。


 やがて使役リンクで連携した前衛に追い込まれた玄武が、俺の前にケツをさらけ出した。

 その瞬間、ミスリル銃身から通常の2倍の質量を持った有翼弾が飛びだす。

 弾は狙いあやまたず尻尾の付け根に命中し、深々と突き刺さった。


「グボアァァァーッ!」


 この一撃により、玄武の防御力が一気に低下したような気がした。

 その証拠に尻尾の付け根以外でもバリアーが発生しない。

 こうなればもう、こっちのものだ。


 前衛陣と連携して攻撃し続けた俺たちの前で、とうとう玄武が膝を折る。

 そして地響きを立てて崩れ落ちたその体は、もう2度と動かなかった。


 しばしの後、広大な地下空間に歓声が響き渡る。


「「やったーっ!」」


 近くで魔法を撃っていたアヤメが抱き着いてきた。

 隅っこで戦いを見守っていたササミも、それに負けじと駆け寄ってくる。

 ヨシツネとベンケイは肩を叩き合いながら喜び、ホシカゲとトモエは勝利の雄叫びを上げていた。


 こうして俺は、全ての四神を手に入れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作始めました。

エウレンディア王国再興記 ~無能と呼ばれた俺が実は最強の召喚士?~

亡国の王子が試練に打ち勝ち、仲間と共に祖国を再興するお話。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ