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62.セイリュウ降臨

 無事にビャッコを解放した翌日、今度は東の遺跡を目指した。

 またスザクのカゴに乗っての移動だが、その過程で面白いことが判明した。


「このカゴ、ビャッコを乗せるには狭いよね」

「それではまた作り直しますかな?」

「それには及ばねえぜ」


 いざカゴに乗り込む段になって、ビャッコの乗るスペースがないことに気がついた。

 それをベンケイに相談したら、ビャッコが口を挟み、彼の体が光に包まれたのだ。

 そして次の瞬間、彼は白地に黒ぶちの猫に変化していた。


「これなら問題ねえだろ?」


 可愛らしい猫の口から聞こえるのは、たしかにビャッコの声だ。


「……あ、ああ、問題ないな。スザクも体の大きさ変えてるんだから、できて当然か。やっぱ、四神ってのは特別なんだな」

「いやはや、まったくですな」


 ビャッコを伴ってカゴに乗り込むと、スザクに吊られて舞い上がった。

 そこから一路、東を目指す。




 3時間ほど飛んだところで、下界に大きな湖が見えてきた。


「あ、見てください、ご主人様。大きな湖ですよ~」

「本当だ。メチャクチャでかいな」


 数百メートル上空から見ても向こう岸がかすむほど、その湖は広大だった。

 長野県の中央には諏訪湖という湖があるけど、この湖の広さはその10倍どころではない。

 琵琶湖よりも大きいんじゃないだろうか。


 そしてその周辺には広大な草原が広がっている。

 魔境ってのは人の侵入を阻むような森林と山岳地帯だけかと思っていたが、こんな場所もあるとは驚きだ。

 ここだったら、人が住み着くことも可能だろう。

 もし、凶暴な魔物が闊歩かっぽする険しい山岳地帯を、抜けられたらの話だが。




 そこからさらに3時間ほど飛ぶと、東の遺跡が見えてきた。

 位置的には、日本でいう三国峠の近くだと思う。

 無事にピラミッドの横に着陸すると、みんなで体をほぐす。


「さーて、いよいよ青龍とご対面か。青龍ってのはあれだよな? 蛇みたいに長細くって、角や手足が付いてる幻獣だよな?」

「そうですよ~。彼は水の魔法が得意なので、注意してくださいね~」

「ふーん、俺の武器はどっちがいいかな。ティーガーでいける?」

「ビャッコほど素早くはないので、ティーガーがいいのではないですか~」

「了解。そういえばビャッコはどうするんだ?」

「残念ながら、俺も四神相手じゃ、力を振るえないんだ。ササミと一緒に見守ってるよ」


 ササミはケガ人が出た時の治療要員として、隅っこで控えることになっている。

 空も飛べないビャッコでは、一緒に待機してもらうしかないだろう。


 しかし、ここでようやくビャッコの魔法について思い至った。


「そういえば、ビャッコは風属性の魔法が使えるんだよな。何か青龍に有効な攻撃とかないかな? あれば、アヤメに使わせるんだけど」

「うーん、そうだな……風属性は出だしは速いが、威力はあまり強くないんだよな。青龍には火魔法の方が有効だと思うぜ」

「そうか……雷とかは撃てないんだっけ?」

「それは高等技術だから、すぐには使えねえと思うぞ」

「そういうことね。なら、アヤメは火魔法で攻撃してくれ」

「はい、分かりました」


 準備が整ったので、ピラミッドに侵入する。

 また階段を下りきってから広大な空間に踏み込むと、扉が閉まって明るくなった。

 中央付近には青いもやが発生し、それが徐々に何かの形を取っていく。

 やがて姿を現したのは、まさに青い龍だった。


 全長20メートル以上はありそうな、蛇のような体に小ぶりな足が4本。

 ヒゲと角を生やしたトカゲのような頭部の口には、ズラリと牙が並んでいる。

 その全身はメタリックな青いウロコに隙間なく覆われ、ちょっとやそっとの攻撃は通じそうにない感じだ。

 そんな青龍が俺たちの姿を認め、目を光らせた。


「全員、攻撃開始。ニカは弾くれ」


 その場に腹ばいになってティーガーを構えると、即座に装填された弾を発射する。

 弾はあっさりと青龍の腹部に命中し、赤い血が飛び散った。


「グロロロォォォォーッ!」


 ビリビリと大気が震えるような怒号が湧き起こり、思わず体がすくむ。


 そして次の瞬間、スザクから警告が飛んできた。


(逃げてください、主様!)


 その警告を認識するや否や、銃を抱えて横に転がった。

 直後に水の筋が、俺のいた空間をえぐっていく。


 ここでアヤメがお返しとばかりに火球を放った。


火弾ファイヤーボール!」


 バレーボール大の火球が青龍に向かって飛んでいったが、尻尾ではたき落とされてしまった。

 何かもっと工夫をしないと、通じそうにない。


 一方、青龍の足元にたどり着いた前衛も、攻撃を開始した。

 ヨシツネの剣が、ベンケイの戦斧が、ホシカゲの双聖剣が、そしてトモエの頭突きが青龍に襲いかかる。

 しかし、さすがに青龍のウロコは硬く、多少でも効いているのはヨシツネとトモエの攻撃くらいだ。

 中でもトモエの頭突きはけっこう効くらしく、青龍にしばしば苦鳴を上げさせている。


 俺の方も再び伏せ撃ちの姿勢になり、ニカから弾をもらう。

 装填された弾を片っ端から撃ち込んでいたら、またもや青龍が大きな怒号を上げた。

 思わず怯んだ隙に、青龍が宙に浮かび上がる。


 どんな仕組みになっているのかさっぱりだが、ヘリコプターみたいに垂直上昇しやがった。

 20メートルほど上がったところで静止すると、青龍の周りに霧が発生する。

 そしてそれが何かキラキラした物に変化した時点で、嫌な予感がした。


「何か来るぞ。防御姿勢!」


 そう指示しつつ、横にいたアヤメを押し倒した。


「タツマさん、何をっ」

「俺の陰に隠れてろ……ぐおっ!」


 突然、青龍の周りの空気が爆発したと思ったら、無数の何かが飛んできた。

 俺の背中に硬い何かがぶち当たる。

 地面に落ちた何かを確認すると、それは氷のつぶてだった。

 青龍が水魔法でひょうを作り出し、爆発的に撃ち放ったというところか。

 革鎧越しでもけっこう痛かったので、紙装甲のアヤメを守ったのは正解だろう。


「あ、ありがとうございます」

「ああ、すぐに反撃してくれ」

「はい」


 すぐに魔法の準備に入るアヤメから離れて前衛陣を確認すると、ヨシツネとベンケイは盾で防いでいた。

 ホシカゲはほとんど避けたみたいだし、トモエの装甲は誰より頑丈なので心配ない。


 仲間の無事を確認した俺は、逃げやすいよう立ち姿勢でティーガーを構え、弾を装填した。

 反動を減らすために火薬量を減らしたが、それでも大きな衝撃によろめく。

 しかし、青龍に当たった弾は、大したダメージになっていない。

 その横でアヤメも火球を連発しているが、速度が遅いので避けられてばかりだ。


 このままでは宙に浮く青龍を攻撃できない。

 そんな焦りを感じながら攻撃を続けていて、ふと思いついた。

 ティーガーで火球を撃てないか?


 俺はすかさず膝立ち姿勢で青龍に銃を向け、銃身内に凝縮された火球を生成しようと試みた。

 以前、似たようなことをやろうとして失敗したが、あの頃より俺の練度は上がっているし、スザクの力も解放されている。

 できるはずだと思って必死で念じていたら、とうとう銃身の中に火球が生まれた。


 それを疑似爆薬で撃ち出すと、ピンポン玉のような火球が凄い勢いで宙を駆け抜け、青龍を直撃する。


「グアアァァァァーッ!」


 高温の火球は、かつてないダメージを与えたようで、青龍が大きく動揺する。

 それに力づけられた俺は、ここぞとばかりに火球を連発してやった。

 発射速度は、5秒に1発ってところだ。


 さらにそれをみたアヤメも、負けじと火球を撃ち放つ。

 俺の攻撃で防御がおろそかになったためか、これもけっこう当たるようになった。


 そうやって交互に火球をお見舞いしていたら、とうとう飛行状態を維持できなくなった青龍が墜落した。

 地響きを立てて、青龍が地面に激突すると、それを待ち受けていた前衛陣が襲いかかる。

 それまでのうっぷんを晴らすような猛攻を受けた青龍が、やがて力尽き、動かなくなった。


「や、やったか?」

「ハアッ、ハアッ……はい、タツマ様。仕留め、ました」

「「やったーっ!」」


 とうとう青龍を仕留めた喜びに、仲間たちが沸き返る。

 俺もアヤメと肩を抱き合って喜んでいたら、横からササミが突っ込んできた。

 顔をクシャクシャにして喜ぶ彼女をあやしながら、勝利の味を噛みしめた。


 これでまた1歩、四神の解放に近付いたな。

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エウレンディア王国再興記 ~無能と呼ばれた俺が実は最強の召喚士?~

亡国の王子が試練に打ち勝ち、仲間と共に祖国を再興するお話。

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