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60.真スザク降臨

 鬼神封印の手がかりを求めて遺跡に踏み入った俺たちは、巨大な鳥と戦っていた。


「ヤバいのが来るぞ。逃げろっ!」


 トリ野郎のモーションに嫌なものを感じた俺は、銃を担いで走りだした。

 その途端、敵からぶっとい火線がほとばしり、俺たちがいた場所を焼き払う。


「ドヒーッ、ヤバいですヤバいです。あのトリさん、ちょー卑怯ですぅ」


 微妙に逃げ遅れて火傷をしたササミが、自分を手当てしながらぼやく。

 俺はそれを尻目に、また腹ばいになって銃を構えた。

 ちょうどヨシツネたちの攻撃で敵の注意が逸れたところだ。


「弾くれっ、ニカ」

「うん」


 間髪入れずに供給された弾を即座に撃ち放つと、結果も見ずに逃げだした。

 またトリの苦鳴が聞こえたから、たぶん当たったんだろう。

 そしてまた敵から火線が迸る。


 そんなことを3回ほど繰り返していると、俺たちを守ってくれていたベンケイが遅れ始めた。


「ベンケイとトモエも攻撃に参加してくれ。こっちはなんとかやるよ」

「了解しました。お気をつけて」


 その指示で、彼らが俺から離れてトリ野郎に向かっていく。

 その間に俺はまた適当な場所を見つけ、射撃態勢に入った。


「ニカ、今度は弾の長さを2倍にしてくれるか?」

「2ばい? ちょっと、まって」


 いつもは一瞬で装填される弾が、なかなか来ない。

 その間も視線の先では、仲間たちが苦戦している。

 それでもベンケイとトモエが攻撃に加わったので、ちょっとはやりやすくなったんじゃなかろうか。


 さらにアヤメも土の槍をバンバン放っているので、多少はダメージが入っている。

 しかしその分、トリ野郎が怒り狂って攻撃が過激になってきた。

 やがて、巨鳥がふわりと舞い上がり、特大火線のモーションに入る。


「ヤバい。ニカ、まだか?」

「……できた」


 それを聞くや否や、俺は疑似火薬を3倍増しで生成、即座にぶっぱなした。

 かつてない衝撃が俺の右肩を襲い、体が後ろへずり下がる。


 いってぇ、肩の骨折れてねーか?


 しかしその甲斐あって、特大の鋼の矢が見事にトリを貫いた。

 今までは表面しか傷つけられなかったのに、今度は確実に内臓まで行った感じだ。

 それを証明するように、トリ野郎が悲鳴を上げながら落ちてきた。


 着地し損ねて地べたに転がったトリ野郎に、仲間が追い討ちを掛ける。

 今までは攻撃しようがなかった頭部を、ヨシツネの剣とベンケイの戦斧がえぐる。

 さらにホシカゲの双聖剣が目を切り裂き、トモエの頭突きが頭部に炸裂すると、巨鳥の動きが一瞬止まった。

 その瞬間、上空で戦闘を観察していたスザクから指示が飛ぶ。


「今です、主様。頭を狙ってくださ~い」

「これで、どうだっ!」


 すでに装填済みだった2倍弾を、今度は目玉に向けて撃ち放つ。

 またまた襲ってきた強烈な痛みをこらえて前に目をやると、右目を貫かれた巨鳥が断末魔の声を上げていた。


「クエーーーーー……」


 哀れを誘う声が消えると同時に頭が地面に落ち、とうとう動かなくなった。

 しかし、また巨鳥が動きだすのではないかとの恐れから、俺たちは動けない。

 仲間の息づかいだけが響く部屋の中で、しばし巨鳥を見守った。


「……やった、のか?」

「ハッ、ハッ、ハッ……はい、タツマ様。終わった、ようです」

「そう、か。やったな」


 疲れ果てた体を休めようとした途端、すぐ近くで嬌声が沸き起こった。


「キャーッ、ご主人様、凄いですぅ。もうササミ、一生ついてきますぅ」

「うわ、やめろササミ。いてーだろうが」


 抱き着かれた際に右肩を触られ、情けない声を上げてしまった。


 そんなドタバタの後に右肩を治療してもらい、ようやく倒した巨鳥の前に立つ。


「しっかし、このトリは一体なんだったんだ?」

「試練ですよ~、主様。そして私の本体でもありま~す」


 そう言いながら、スザクが巨鳥の上に舞い降りた。

 すると彼女を中心にまばゆい光が発生し、何やら変化が生じる。

 やがてその光が治まった後に、巨鳥が立ち上がっていた。


「生き返った、のか? スザクはどこだっ?」


 またもや戦闘かと身構える俺たちに、頭上から聞きなれた声が響く。


「大丈夫ですよ~、主様。もう戦いませんから」

「その声はスザク、なのか?」

「そうですよ~。これが私の本来の姿なので~す。これを取り戻すために、1度倒さないといけなかったのですけどね~」

「本来の姿って……なんなんだよ?」


 するとまたスザクの体が光りに包まれ、インコの姿に戻った。

 パタパタと飛んできた彼女が、左肩に停まる。


「やはりこの場所が一番落ち着きますね~」

「人の肩を家みたいに言いやがって……それで、お前の正体は?」

「私は主様のしもべであると同時に神の使徒でもありま~す。しかしてその実体は、神の意志を体現する四神しじんなのですよ~」

「四神って、あれか。中国の伝説にある朱雀、玄武、白虎、青龍とかいう」

「さすがは主様、よくご存じですね~。私は四神の1柱たる炎の霊鳥 朱雀なのですよ~」


 誇らし気に語るスザクを、仲間たちがあっけに取られた顔で見ている。

 やがてベンケイが声を上げた。


「な、なんと、スザク殿が四神だったとは。たしか、遥か昔にこのヒノモトの大地を治めていた神々の眷属でしたかな」

「ふーん、この世界にも四神の伝説はあるんだ?」

「はい、まだ神々がこの地に住まわれていた頃の話ですな。その力は神に匹敵するとも言われまする」

「えっ、それなら、チート能力でスザク無双が始まったりする?」


 俺が期待の目を向けると、彼女がそれを笑い飛ばす。


「キャハハハハハッ、駄目ですよ~、主様。過ぎた力は身を滅ぼしますよ~」

「えーっ、そうなの? そろそろ楽をさせてくれてもいいと思うんだけど……」

「まだまだ休む暇なんてありませんよ~。この間逃げた鬼神は、確実に騒動を引き起こしますからね~。主様はもっと力を付けて備えておかないと、生き残れませんよ~」

「ううっ、やっぱりそうなのか……ハァ、もっと気楽に生きられないもんかなぁ」


 あまり聞きたくなかった情報に、思わずため息が漏れる。


「まあ、私も本来の力を取り戻したので、お力になれると思いますよ~。とりあえず主様は、残りの四神を解放してくださいね~」

「やっぱり他の四神もいるんだ。解放するにはどうすればいいんだ?」

「この魔境の北に玄武、東に青龍、西に白虎を封じた遺跡がそれぞれありま~す。それを今回のように解放すれば、みんな従いますよ~」

「なるほど……でもこの魔境ってメチャクチャでかいんだよな。移動するだけで大仕事じゃない?」

「それは大丈夫ですよ~。私が皆さんを運びますから~」

「ああ、そうか。あれだけ大きければ、俺たちを運ぶこともできるかな」

「もちろんですよ~。移動しやすいように乗り物を作った方がいいとは思いますけどね~」

「それはベンケイに頼もう。それじゃあ、外に出ようか。それとも、何か他にお宝とかあったりする?」

「私の本体がお宝ですよ~」

「はいはい、それじゃ戻ろうか」



 その後、階段を登って地上へ帰還した。


 それから周囲の木とツルを切り出して、移動用のカゴを準備する。

 まず2メートル四方の台座を組み上げ、それをツルで網状に囲う構造だ。

 トモエも乗るから、けっこう頑丈に作った。


 そんなことをしていたら日が暮れたので、その場で野営になる。

 食事を済ませてから、焚き火を囲みながらお喋りをした。


「なあ、スザク。お前はここに自分を封じた遺跡があることを知ってたんだろ。なのに、なぜそれを言わなかったんだ?」

「どうせ弱いままでは、ここへ来ることもできませんでしたからね~。それに主様が引き寄せられるようにここへ向かっていたので、特に言う必要が無かったのですよ~」

「ふーん、他にも何か隠してるんじゃない?」

「別に隠すつもりはありませんよ~。まずは主様がこの世界で何をやりたいか、それを考えてくださ~い。私はそれをお助けするだけですからね~」

「俺のやりたいこと、か……」


 スザクに言われ、思わず頭上の星空を眺めた。

 俺は一体、何をしたいのかな。

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エウレンディア王国再興記 ~無能と呼ばれた俺が実は最強の召喚士?~

亡国の王子が試練に打ち勝ち、仲間と共に祖国を再興するお話。

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